◆菅官房長官、不測の事態への備え強調
NHK等の報道によれば、菅官房長官は本日、不測の事態に備え弾道ミサイル破壊措置命令の発令を検討していることを表明、続いて今夜、小野寺防衛大臣降りミサイル破壊措置命令が発令されました。
今回のミサイル破壊措置命令は、北朝鮮の弾道ミサイル部隊が日本海側のミサイル発射施設に向けての移動を開始していることが衛星画像の解析により指摘されており、日本のほぼ全域を射程へ収める中距離弾道ミサイルがこの発射施設へ運び込まれているとの分析に依拠するものです。
一方で、小野寺防衛大臣はミサイル防衛部隊の展開については“国民に不安を与えないように命令の詳細を公表するのは避けたい”と記者会見にてのべていますが、これは不安を与えないようにするという一方で、同時にどの地域に重点配備を行っているかの情報を北朝鮮側に与えない、という配慮がなされていることも大きいでしょう。
弾道ミサイル実験であった場合に日本国内への破片落下の可能性が生じた場合、もしくは日本本土が直接ミサイル攻撃に曝された場合にそれぞれミサイルが日本国内に落下し被害を及ぼす前に高空にて迎撃し破壊、想定される被害を未然に防ぐことがこの破壊措置命令の任務です。
しかし、今回は非常に大きな難易度が伴います。こういいますのも自衛隊へのミサイル破壊措置命令は過去に三回発令されていますが、何れもミサイル実験にあたる飛翔体の発射が行われるとの日時と経路の発表が北朝鮮側により行われ、これに基づいて破片落下にそなえる、というものでした。
即ち、大まかな経路に沿って飛翔することが確認され、時間帯なども公表されていたわけなのですから、一定の時間帯において飛翔経路の真下を中心に開会に当たっていればよかったのですが、今回は不意に発射される可能性があり、経路も目標も発表されず、分かりません。
言い換えるならば、日本全土が危険区域となるため、前回のように人口は少なくとも万遍なく迎撃部隊を張り付ける、という方法は取れませんし、どの期間まで迎撃態勢を継続するのかも未知数となるわけですので、どの地域にミサイルを配置するのか、ローテーションを如何に維持するのか、厳しい問題となるでしょう。
これが、どの地域に優先迎撃能力を付与しているのか、小野寺防衛大臣がミサイル破壊命令に伴う部隊行動の詳細を今回発表しなかった背景にあると考えられるわけです。即ち、予算上全ての地域を万遍なくミサイル防衛部隊で配置することは物理的に不可能であるわけで、その中で手薄な地域を敢えて暴露することは避けなければならない、ということ。
イージス艦と全国レーダーサイトによる監視と共に、PAC-3部隊の首都圏とともに京阪神と中京地区、拠点となる基地を中心にミサイル迎撃準備が行われることとなるでしょうが、前述の通り厳しい状況も多々あり、しかし重要な任務でもありますので、なんとか頑張ってほしいところです。
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