北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

邦人救出任務への自衛隊法改正案 陸上での車両による輸送が可能に

2013-04-28 22:58:46 | 国際・政治

◆現行法では戦闘地域の空港や港湾へ自力集合

 邦人救出へ自衛隊法改正案、19日の閣議決定において作成されました。現行法では紛争地に取り残された場合、戦闘地を抜けてでも空港か港湾まで到達しなければ日本へ帰れません、しかしこれからは自衛隊が迎えに来てくれる。

Rimg_4322 邦人救出、現在の自衛隊法における邦人救出任務では、輸送に用いることが出来るのは航空機か艦船、もっとも2002年までは自衛隊機のみしか使用できなかったのですが、艦船か航空機しか救出に用いることが出来なかったのが、今回の自衛隊法改正案で、車両、車両が使えるようになります。

Gimg_86371 車両が使える、この意義はどういうところにあるのかと言いますと、艦船は港湾施設、航空機は飛行場、つまり現行法では港湾か飛行場へ集合しなければなかったのです。しかし、港湾や飛行場までの地域は戦闘地域となっている場合、戦闘地域を抜けて無事に到着できる保証はありません。

Img_5854 現行法では、港湾と飛行場は陸上であっても、陸上自衛隊の誘導隊が安全管理に当たります。具体的には小銃や軽機関銃を携行し、保護下の人員や航空機や艦船などの自衛隊装備品に対して脅威が及ぶ状況に際しては、必要な措置を採ることが出来ました。しかし、飛行場か港湾までは自力で移動しなければならなかった。

Img_2376 法改正後は、集合地点として指定された施設まで、領事館や大使館、邦人企業施設に一部ホテル等が指定されることとなるのでしょうが、空港や港湾施設から集合施設まで必要であれば自衛隊が車両、もちろん装甲車もふくめてですが迎えに来てくれる、ということ。

Img_6612 それならば、空港や港湾が戦闘地域へ囲まれる以前に、空港や港湾のターミナルへ避難すればいいではないか、ともわれるかもしれませんが、そもそも、どの空港へ輸送機が展開するのか、どの港湾へ自衛艦が入港するのかは、平時から決まっているわけではありませんから、状況が悪化する以前に避難できない場合もある、これに対応するのが邦人救出任務です。

Img_1432 特に領事館と大使館は、平時には条約に守られていますが、こうした公館から空港や港湾へ距離がある場合がある。また、公館が無い地域にも日系企業は進出しています。こうした集合地域へは、護衛艦からヘリコプターで展開する以外は車両にて救出するしかなかったわけです。

Nimg_4726 今回の法改正は、今年1月16日に発生したアルジェリアガスプラント人質事件というテロを契機として、邦人を第三国に輸送する際、現行法がガスプラント人質の生存者さえも、政府専用機の待機する飛行場まで自力移動することを求められている、現状の歪んだ法体系への一つの回答として出されたもの。

Nimg_2369 特に我が国は福島第一原発事故を契機として原子力発電という選択肢を暫定的に放棄しているため、天然資源を確保しなければ、もともと十分な天然資源と耕作地をもたない我が国はたち行かなくなるため、この為に世界の多くの地域での資源確保というリスクを冒す必要があったわけです。こうした状況下においても自己責任を強いるのは、余りに無責任です。

Img_3907 こうした意味から、戦闘状態の地域も含め紛争地位を自力で抜けて空港か港まで集合、という現行の体制が改められることとなるのですが、一方で自衛隊としては、特に陸上自衛隊は、邦人輸送、場合によっては長距離となる戦闘地域を抜けての救出輸送体制を訓練し、装備を揃えてゆかなければならなくなる、このことを忘れてはなりません。

Img_8285a 即ち、救出される側としては戦闘に巻き込まれるリスクが低くなるのですが、救出する側としては、つまり自衛隊は新しい任務が増える、という事に他ならないのですから。この点を踏まえ、新しい任務に必要な部隊訓練と装備の在り方を、今後はさらに研究してゆく必要があるでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする