北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

与那国自衛隊駐屯計画撤回の可能性、防衛省は石垣島へ新駐屯地と沿岸監視隊配置検討

2013-04-04 23:23:27 | 防衛・安全保障

◆与那国町用地交渉難航、礼文分屯地方式が理想

 台湾に隣接する与那国島、産経新聞の報道によれば、自衛隊の誘致を行った与那国町が自衛隊へ迷惑料10億円の一時金を求めたことで、防衛省は与那国島ではなく同じ南西諸島の石垣島へ配置する方向で検討を進めているとのことです。

Nimg_0842 与那国町は、自衛隊用地26ヘクタールの借地料を自衛隊が想定する倍以上の金額を提示、加えて迷惑料として10億円を要求してきました。10億円は一時金で、表現を協力金と切り替え防衛省へ求めましたが、元々与那国町が自衛隊の駐留を求めてきたものですので防衛省としては応じることに難色を示し、今回の石垣島駐屯地案となりました。

Nimg_0520 石垣駐屯地案、防衛省が考えるのは、沿岸監視隊と基地通信隊から成る100名規模の要員を駐屯させ、情報収集を行う事でしょう。沿岸監視隊は北海道の稚内分屯地に第301沿岸監視隊が50名、同じく北海道の標津分屯地に第302沿岸監視隊が50名規模で置かれ、このほか今津駐屯地に中部方面移動監視隊が置かれています。

Img_7403h 北海道の沿岸監視隊は50名規模の部隊となっているのに対し、新編される南西諸島の沿岸監視隊の駐屯地駐屯規模がが100名規模の部隊となるのは、那覇駐屯地の分屯地ではなく通信機能を有する駐屯地として基地通信隊を置くためであるか、もしくは警備小隊を隊本部に置くためではないかと考えられます。

Nimg_2369 さて、与那国島の駐屯地建設ですが、土地を強制収容してはどうか、という意味不明な提案もあるようですが、そもそも軍事機構の任務は主権を軸とした国家体制の維持ですので、憲法が定めた人権に抵触する強制収容は行うべきではありませんし、確実に違憲訴訟となります。また、住民と連携してこその自衛隊ですが、強制収容して住民と和睦が図れると考えるのは相当な楽天家でしょう。

Mimg_1693 さて、石垣島ですが、ここに沿岸監視隊を配置したならば、与那国島に沿岸監視部隊を置く場合に、石垣駐屯地の分屯地として与那国分屯地を設営する、こうした方式が理想だと考えます。与那国島と石垣島は距離にして100km、途中には地形障害が無く通信の確保はこの距離であれば十分可能です。

Oimg_2746 実はこの方式、北海道最北の礼文分屯地と稚内分屯地の関係を踏襲する案です。稚内分屯地に第301沿岸監視隊が置かれていますが、この分遣隊が礼文分屯地なのです。礼文分屯地は田舎の公民館規模の建物で駐留は30名ほど、正門と警衛が無く建物が一つで自己完結している珍しいもの。

Yimg_5984 礼文分屯地は非常に小さな施設ですが、もともと過疎に悩む礼文島の要請もあって、少数の部隊ながら駐屯することで一定の経済波及効果があります。礼文町の人口は2900名ですので、1%以上が自衛官で加えてそれ以上の家族がいるのでしょう。与那国島も1haほどの土地を借用し、30名ほどの沿岸監視隊分遣隊と通信分遣隊に業務班を配置すれば、与那国町の人口は1600名ですので、それなりの過疎対策にはなるか、と。

Img_4450 実際のところ、与那国島は台湾に隣接していますが、台湾からの着上陸は考えにくく、尖閣諸島への着上陸が懸念される中国側も台湾と目のはなの先にある与那国島へ着上陸する可能性は低く、少なくとも26ヘクタールもの用地を確保し、駐屯地を設営する必要はあるのかとなると疑問が無いでもありません。

Himg_4858 自衛隊は世界でも有数の空中機動力を有しており、一機50億円の大型輸送ヘリコプターを陸空自衛隊で70機保有、予算難で後継機確保がとん挫していますが攻撃ヘリコプターに分類される戦闘ヘリコプターと対戦車ヘリコプターも70機以上保有しています。このため、緊急時には大兵力を空中機動で展開することも可能、という点は思考体系の片隅においてもよいでしょう。

Nimg_1766 ただ、沖縄県島嶼部は、沖縄本島とともに、先島諸島の宮古島と石垣島を中心とした島嶼部から成るため、この何れかには用地確保、増援を受ける受け皿となる部隊が必要となりますし、危機が有事に発展する前に予防するための情報収集を行う必要は、元々ありました。

Img_8997 特に宮古島は航空自衛隊のレーダサイトが置かれているため、この宮古島分屯基地を基点として陸上自衛隊の施設を併設する、例えば稚内分屯基地の第18警戒隊レーダサイトと第301沿岸監視隊に大湊地方隊稚内基地分遣隊の駐屯のような方式が望ましい、と考えていたのですが、既に警備小隊と受け皿を持つ宮古島よりも、完全に放置されている石垣島へ部隊を置くことを重視したのかもしれません。

Pimg_9648_1 既設の施設であれば緊張が発した際に増援を送り防備を強化できる、これは実際に前例があります。ご記憶の方も多いでしょうが、北朝鮮弾道ミサイル実験が昨年実施された際に自衛隊は沖縄救援隊を編成し、地対空ミサイル部隊や特殊武器防護部隊とその支援要員を派遣した実例があります。

Mimg_0983 石垣島ですが、沿岸監視隊とともに可能であれば石垣警備隊を置き、本部管理中隊に舟艇班を置き、20km西の西表島に80km東の宮古島と連携がとれれば、と思うのですが、ちょっとこの距離は複合艇では動けません、やはり那覇の第15旅団の空中機動力を強化し、もう一個普通科連隊を本島に置くべきでしょうか。

Eimg_4530 ともあれ、石垣島に先に駐屯地を、という構想は、先島諸島の中心にあり、位置的に理想的なものであると考えます。そして、この駐屯地の分屯地そして、もちろん過疎対策というものも結果的に含めても、与那国島に自衛隊駐屯が必要な場合には、稚内分屯地と礼文分屯地の関係のような方式、これが理想ではないでしょうか。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする