◆英軍戦死者229名に高まる撤退論
アフガニスタン情勢の悪化に伴い、アメリカのオバマ政権は、現在の六万名に及ぶ米軍部隊に加え、四万名の増派を検討しているとのこと。
海外メディアの報道をBS-1などで観ていると、アフガニスタンの状況は、自衛隊の中央即応集団や第7師団のような精鋭部隊を派遣しても、かなり厳しいような治安状態が現出している。こうした中で、民生支援やインフラ整備のために民間人を送る、というのは、非現実的を通り過ぎているように見える次第。
アフガニスタンヘルマンド州においてイギリス軍兵士5名が射殺され、8名が重軽傷を負った。この事案は、アフガニスタン復興支援の一環として実施していた警察官養成学校において生起した。イギリス軍の犠牲者はアフガニスタンでの軍事作戦を開始して以来今回の5名を以て229名に達している。
イギリス国内の世論では、犠牲の多さから早期撤退を求める声が高まると予想されている。今回の事案が与えたインパクトの大きさは、イギリス軍駐屯地から400㍍の場所で発生したということで、これまでの英軍犠牲者が仕掛爆弾所謂IEDや銃撃戦で生じて点と比較して異なるという。
訓練を終了させたのちに、英軍兵士が検問所のところに戻ったうえで、ボディーアーマーを脱ぎ、小銃を置いた瞬間に武装勢力が乱入し、突撃銃を乱射、バイクでそのまま逃走した、という。これまでの襲撃の方法と比較し、治安作戦が失敗した、という傾向がみられる、と海外メディアは報じている。
また、国連職員については、アフガニスタンから撤退することが発表されや。国連は、先月28日に国連施設がカブールで襲撃されたことを契機として、アフガニスタンで活動するスタッフ600名を撤退させる方針とのことで、治安情勢が沈静化するまで一時国外に移すという決定を先ほど発表している。
こういうことは考えたくないのだが、民主党は、野党時代、与党自民党に対して自衛隊のアフガニスタン派遣を呼び掛けてきた。山岳戦は、2004年ごろから激化しており、米軍はイラク駐留部隊から部隊をアフガニスタンへ引き抜いていたほど。当時、民主党の要望に応じてアフガニスタンに自衛隊を派遣し、問題が生じれば政権を揺るがす事態になったはずで、こうした政争の具にアフガニスタンカードは用いられたのでは、と穿った見方もしてしまう。
現段階では、アフガン支援に関して、首相、副総理、外相、蔵相、防衛相異なった発言があり、どうしても野党時代のような散発的な発言の域を出ていないという状況。この中で、英軍の撤退論や国連の撤退する地域に民間人を送る、というのは、やはり非現実的だろう。インド洋海上阻止行動給油支援継続が最も現実的、次いで空輸支援へヘリボーン部隊と輸送機を派遣。次に治安任務支援に戦闘部隊を派遣するのが現実的、というところだろうか。
HARUNA
(本ブログに掲載された本文および写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は現に禁じる)