◆JADGEの開発予算削減へ
政府が設置した行政刷新会議が行う事業仕分作業では、17日、防衛省が進める航空自衛隊の新自動警戒管制システム(JADGE)関連費用について20~30%削減を要求した。
JADGEは、現在運用されているBADGE(半自動防空システム)の後継として航空自衛隊の次世代における警戒管制を行う装備で、2009年7月1日から運用を開始している。これは全国のレーダーサイトから張り巡らされた警戒監視網や、空中早期警戒管制機などの情報と、基地を起点とする要撃機や地対空ミサイルを協同させるシステムである。
これまでのシステムは、中央一括処理方式を採用していたため、府中基地の航空総隊を頂点としたシステムが構築されていたが、近年の戦争形態として指揮命令機能そのもの、つまり中枢を攻撃し、防空能力を瞬時に麻痺させる戦力運用がなされているものがあり、この分散は一つの課題となっていた。
JADGEは、一撃での指揮系統麻痺、これを避けるべく、通信及び電子関連の技術革新に合わせたネットワーク分散型システムを採用しているのが一つの特徴であり、加えて、後述する陸海空自衛隊との協同を想定したシステムとして完成しており、この管理、管制システム、改善、改修に関する開発が継続されている。
目標の識別、その進出方向および速度から未来到達地点を自動に予測し、戦闘機やミサイル部隊に自動的に伝達し、誘導や警戒警報、航空機の運用までを瞬時に対応するべく自動化したもので、人間は攻撃を行うか否かの最終的な判断を行う、というもの。この関連費用として防衛省は853億円を要求していた。
JADGEは、海幕情報システム(MOF)や陸上自衛隊の師団通信システムとの協同運用も視野に入れており、防衛コンピュータ共同システム(COE)として整備されている。この陸海空の協同は、弾道ミサイル脅威等に対して、航空自衛隊以外にも、海上自衛隊のイージス艦との協同、弾道ミサイル防衛に当たる部隊を支援する陸上自衛隊との共用も視野に入れているものだ。
加えて、JADGEと並行して自衛隊デジタル通信システムの開発が進められている。これは、データリンク能力を高めるとともに戦闘機相互の連携を強化することが目的である。この種のデータリンク装置としては、リンク16などが既に開発されているが、これよりも軽量なものとなる。
既存のリンク16データ交換システムでは、F-15など現在運用中の機体に追加搭載を行うことができない端末の大きさであることから、戦闘機への対応端末の開発もすすめられている。データリンクにより、効率的な防空戦闘、つまりより少ない装備により防空任務を達成することができるということが強みだ。
同時に、これまでは戦闘機では情報を受動的に得るだけであったのが、戦闘機などが入手した脅威情報もデータリンクにより瞬時に自動的に、共有することができるため、航空自衛隊すべての戦闘機同士のデータリンクが実現し、地対空ミサイルなどとの協同運用も高度に実施することが可能となる。
事業仕分人によれば、JADGEに関する開発には、競争入札において一者応札が多い点が指摘され、この割合を下げる努力が必要、とされた。入札システムを改善することにより大幅に費用を低減することができ、システム監査を導入すれば三分の一程度に抑えることができる、と判断されている。
こうしたうえで、仕様書の記述内容に関するチェックシステム導入が公平透明性の確保を行う上で必要であり、加えてCIO(最高情報責任者)を置いての財務管理など、計画全体を統括する人員を配置するべき、という指摘がなされ、関連予算が二割から三割削減することを求められる仕分結果となった。
今回のJADGEシステムの場合、関連費用は早期に完成させ、近代化改修に移行したほうが開発期間を短縮させ、結果的に費用を圧縮することができる点が見落とされており、加えて一者入札の問題点を指摘しているが、MOFシステムなど陸海空の運用に連動できるシステムとなれば、開示できる情報にも限界が生じてくる。この点を無視していることなどが気になる次第。
併せて、海外メーカーが入札に参加や情報開示要求を出していないことも端的にこれを示しているようにも思える次第。技術開発、特にソフトウェア関連のものであり、その中でも運用に特色がある装備品問ううことで、不透明さ、もっと安くできないのか、と民生品開発と比較したくもなるのだが、その特殊性はもう少し配慮されてしかるべきだろう。
HARUNA
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