北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

次期戦闘機にF-35 40機の取得を想定し防衛省が調整へ

2009-11-23 22:12:34 | 防衛・安全保障

◆2010年代半ばに導入を予定・・・しているが

 今朝の朝刊で報じられていることもあり、ご存知の方も多いとは思うが、防衛省関係者が次期戦闘機としてF-35の導入を表明した。

Img_2250_2  2010年度予算にF-35に関する調査費を計上することとしている。防衛省関係者による話では、F-35は“超音速巡航能力”を有し、“レーダーに映りにくいステルス性を有する”とされ、“一機90億円”とされている。されている、というのが重要。この中で、レーダーに映りにくいステルス性が次世代航空戦に不可欠であり、F-35が選定された背景とされる。

Img_2258  航空自衛隊は、現在のF-4戦闘機が旧式化と老朽化が極めて危険な度合いに達しており、2005年度から2009年度までの中期防衛力整備計画により、F-4後継機として次期戦闘機F-Xを7機、調達する計画であったものの、本命とされたF-22戦闘機が、高度な機密性などの面から米国から取得せきる見通しが立たず、F-22の導入は断念せざるを得ない状況があった。

Img_3166  次期戦闘機として、米空軍が運用する高い対地攻撃能力を有する戦闘爆撃機、ボーイングF-15E。米海軍が空母艦載機として運用し、高い攻撃能力とステルス性を限定的ながら配慮しているF/A-18E戦闘攻撃機。欧州共同開発により高い空対空空対地空対艦能力とともにレーダーに映りにくい設計として完成し配備が進められている多用途戦闘機ユーロファイターターフーン、そしてステルス攻撃機として国際共同開発が進められているF-35が候補機となっている。

Img_8528  しかし、F-35は、国際共同開発により進められているものの、どの程度のステルス性を有しているかは、調達を決定するまでの間開示されないこととなっており、形状からしてステルス性を有していることは判明しているものの、どの程度のステルス性かは未知数である。また、超音速巡航能力を有している、とされるが超音速巡航の定義は不明確であり、その基幹となる搭載エンジンは一基で双発機に匹敵するF-135が、トラブルが続いていることから代替エンジンの開発が開始される予定となっている。そして、開発中であるので、単価は90億円といわれているが、これは見積もり価格と言わざるを得ない状況で、上昇する覚悟は必要だ。

Img_8568  2010年代半ばの導入、とあるのだが、これも果たして、どうなのか。開発に参加している国が第一に優先的に納入を受けることができるのだが、出資額によっては優先顧客として比較的早い納入を受けることが可能だ。しかし、それでも2010年代後半、もしくは2020年代となる。もちろん、2013年から配備が開始される米空軍用の機体を航空自衛隊が横取りでもできるのなら別なのだが。

Img_8876  F-35は機体としてエンジンが開発中の機体、価格は見積もり価格であり詳細は不明。ステルス性は有しているということ以外、そのレベルは不明。超音速巡航が可能とされるが、アフターバーナーを使用する必要があり、どの程度の準高性能かは未知数。そして、引き渡しがいつごろ開始されるかが未知数の機体を、採用しよう、といわけだ。開発費が高騰していることから、日本が参加すればどんどん資金を抽出できそうな状況、現在の開発参加国には朗報だが、現時点、少し日本にはリスクが大きいようにも。

Img_9343  40機が導入される、というが、ライセンス生産が認められる可能性は、経済効率や開発参加国すべてとのライセンス契約締結は難しく、F-35を採用すれば自動的に日本における戦闘機生産基盤は消失し、現在運用されている航空自衛隊の戦闘機に関しても、その運用基盤を供する企業が防衛産業から撤退することに繋がる。もちろん、40機を一気に2~3年で調達し、間髪をいれずF-15後継機を国内に生産基盤が残っているうちにライセンス生産するならば話は別だが、これは予算的に厳しいだろう。

Img_2473  日本国内の運用基盤が失われることとは何を意味するか。つまり、部品を海外から輸入するか特注しなければ、飛べる機体も飛べなくなり、ほかの航空機を調達する必要が生じる。第一、日本がここまで古いF-4を今日も運用できるのは国内に運用基盤があるからである。F-35導入は、防衛産業全般に、このような影響を及ぼす危険を有しているわけだ。

Img_2401  F-35は、誤解を恐れずに述べれば、完成すればカタログスペックの上では非常に高性能な多用途戦闘機として設計されている。問題は、現時点で完成がいつできるか、いくら掛かるか、どれだけの性能か、未知数な点にある。F-4の後継機はライセンス生産が可能で、既に設計が完成している機体により対応し、他方で、F-15Jの後継として、F-35をライセンス生産する道筋を、改めて2020年代を想定し構想するべきともおもうのだが、今回の“英断”には以上のように疑問を感じる次第。

HARUNA

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