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岩国日米友好祭09 MCAS IWAKUNI FRIENDSHIP DAY 2009

2009-05-09 20:00:23 | 在日米軍

岩国航空基地フレンドシップデイ2009

 5月5日恒例行事となったアメリカ合衆国海兵隊岩国航空基地日米フレンドシップデイ、来場者は27万5000名に達したとのこと。本日は、その活気と熱気に包まれた基地の模様をお伝えしたい。

Img_3162  岩国フレンドシップデイ2009、今年一番頑張ったのはAV-8ハリアーだ。垂直離着陸が可能な攻撃機としてイギリスのホーカーシドレー社(現BAE社)が開発した実験機P1127が原型、その垂直離着陸性能が最前線の飛行場からの運用に有利、とアメリカ海兵隊へ採用されたのが1968年である。今回は、ハリアーⅡ、ハリアーⅡプラスが参加。

Img_9023  日米友好祭、最初の飛行展示は、MC-130特集戦輸送機の飛行から始まった、機首に搭載されているのはAPQ-170地形追随レーダー、これにより夜間でも険しい地形をものともせず低空飛行で進入することが可能だ。ミサイル警報装置とともに、指向性赤外線妨害装置などを搭載、地対空ミサイルへの自衛能力も高い。更に2005年から空中給油能力を付与させるべくFRL902E空中給油ポットシステムを搭載している。

Img_2733  MC-130特殊戦機から飛び出した特殊部隊の隊員、飛びだした直後、落下傘と共に日章旗と星条旗が開かれた。日米友好祭ならではのオープニング。降下完了すると、地上から、すぐに国旗は高く掲げられ、回収された。なるほど、国旗とはどういうものか、ということを考えさせられるきびきびとした行動。

Img_9118  F/A-18Dホーネットが二機編隊で離陸する。F/A-18Cが単座型、Dが複座型。海兵隊第242海兵全天候攻撃飛行隊に所属する航空機。ボーイングF/A-18と称されるが、もともとはノースロップ社の設計で、初期不良が多発したが、その後、問題は克服し、運動性、多用途性は高く、導入当初は欠陥機ではないか、と評されたことを皮肉って最も成功した失敗作、と評される傑作戦闘攻撃機。

Img_2848  KC-130J空中給油機の短距離離陸。C-130J輸送機を元に空中給油機に改修した機体。航空自衛隊が運用しているC-130H輸送機よりも新しいJ型を空中給油機とした機体で、J型は、エンジンを新型に改め、グラスコックピッドを採用、操縦系統もデジタル化し、エンジンブレードも新型のものとしている。

Img_2928  第211海兵攻撃飛行隊ハリアーⅡの模擬対地攻撃展示。くるくると回転しつつ肉薄。ハリアーⅡは1981年に英米共同で開発された機体だ。複合素材の大胆な採用により軽量化に成功し、角度変化率爆撃システム(ARBS)を搭載、加えて機首に前方赤外線監視装置(FLIR)を搭載、夜間作戦能力も強化されている。最大速度は、マッハ0.98、凄い迫力だ。

Img_2887  ベイパーを超え、ショックコーンが湧き出た瞬間。F/A-18C/Dは、A/B型に加え、新世代空対空ミサイルであるAMRAAMの運用能力を付与され、ミンションコンピュータも新型に改めた型。複座型は練習型、という印象があるが、海兵隊では後部から操縦機能を外し、夜間攻撃能力を強化させたナイトアタック型を導入している。

Img_9166  空中給油展示。編隊飛行というのは、見栄えがいい。KC-130空中給油輸送機と、F/A-18D戦闘攻撃機、AV-8B攻撃機による編隊飛行。対地攻撃から制空戦闘までこなす戦闘攻撃機と、垂直離着陸ができ、強襲揚陸艦から前線基地まで、拠点を選ばない攻撃機、海兵隊らしい航空機体系といえる。

Img_9284  F/A-18C/Dの基本性能をここに記しておきたい。全長17.07㍍、全幅11.43㍍、自重10.81㌧、戦闘行動半径は537kmでフェリー航続距離は3333km、実用上昇限度15240㍍。GE-F404-400エンジンの双発機で、武装搭載量は7.031㌧。海兵隊は、ナイトアタック型としてC型を329機、D型を125機運用している。

Img_9306  第225海兵全天候攻撃飛行隊のF/A-18Dナイトアタック型。カラーリングは、指揮官指定機。225飛行隊は、通称ヴァイキング。第121飛行隊の交代としてミラマー航空基地から岩国航空基地へ前方展開してきた機体、岩国には様々な飛行隊がローテーションで展開する。飛行隊にはF/A-18戦闘攻撃機12機が配属されている。

Img_9389  救難飛行艇US-2による展示飛行。US-2は、US-1Aの後継機として開発された機体で、写真の三号機は、量産初号機という位置づけ。かなり短距離でもフワリと離陸するところには毎回驚かされる。救難飛行艇としての性能は特筆すべきもので、荒天下の波高3㍍という海面にも発着可能な飛行艇である。

Img_9424  US-1A改という名称で開発が開始されたUS-2は、エンジン出力の向上、キャビン部分に与圧化、操縦系統のフライバイワイア化、赤外線暗視装置などを搭載したものだ。速力は216ノットから315ノットへ、エンジン出力は13600馬力から18360馬力へ向上しており、実質的にUS-1Aとは別物の機体と言っていいほどの高性能機である。写真は、写真ではわかりにくい低速飛行展示。

Img_9337 九州、新田原基地の第5航空団より、第301飛行隊のF-4EJ改の航過飛行の展示、もともと艦載機ということで、頑丈なフックを搭載しているファントム。ケロヨンマークと称されるカエルを模ったマークを尾翼に描いたファントムの飛来に歓声が上がるが、航過飛行だけで、機動飛行などの飛行展示は実施されなかった。

Img_3241 飛行展示がひと段落したので、地上展示機を撮影に行くこととした。時計を見ると1130時。1300時から、ハリアーの飛行展示が行われるとのことで、それまでに戻らなければならない。地上展示機が並ぶエプロン地区と、滑走路に近いエプロン地区には、若干距離があるのだ、早足にて移動を開始する。

Img_9524  岩国航空基地は、広い。広大な基地には、エプロン地区が大きく二つに分かれており、滑走路まで、かなり距離がある。更に滑走路の反対側には海上自衛隊岩国航空基地がおかれ、加えて、現在、米軍再編に伴う第5空母航空団の厚木基地からの移転に向けて、基地の新滑走路建築と拡張工事が実施中だ。

Img_9477  海兵隊のハンヴィー。陸上自衛隊の高機動車に当たる車両だが、全周にわたって防弾鋼板が装着されており、上部には12.7㍉重機関銃が搭載されている。車内は、思ったよりも狭く、視界も狭い。その分、防弾ガラスの採用や装甲板の装着など、防護力を重視しているような印象。

Img_9508  5㌧トラックにも自衛用の40㍉自動擲弾銃が搭載されている。銃座はかなり素早く回転するようで、ぐるぐる回ってた。楽しそうだった。後方支援しゃりょうほど、防御力は脆弱であり、逆に遊撃隊などの標的となりやすい。このため、後方支援部隊であっても、相応の自衛能力が必要となる。後方支援=安全、ではないということを海兵隊が端的に示している。

Img_3276  US-1救難飛行艇と米空軍のF-16戦闘機。US-1は、救難ヘリコプターが到達できない遠距離の海上で発生した航空機事故や救難事案に際して出動。後継のUS-2とともに大型飛行艇は現在運用されている世界でも数種類しかないが、安定性では世界最高性能と言っても過言ではない離着水能力を有する。

Img_9071  F-16に搭載されていたのは、新型光学照準装置AAQ-33スナイパーXR。ロッキード・マーティン社製の高感度カメラとマーキング用レーザーシステムを複合化した照準装置で、光学情報をもとに正確に地上目標を捕捉可能。航空自衛隊がF-2で試験を行っているJ/AAQ-2前方赤外線監視装置と同様のものだが、探知距離はAAQ-33の方が数倍上とされる。

Img_9700  第242海兵全天候攻撃飛行隊のF/A-18.その胴体の下にはAN/AAQ-23が搭載されている。LANTIRNの一種で、ノースロップグラマン社製(現在はBAEが製造、供給している)で、赤外線画像と地形追随レーダーにより得られた情報によって、夜間低空侵攻の際に必要な航法を支援するとともに、対地目標への照準も行う。

Img_9699  F/A-18に装着されているAN/AAQ-23、しかし、F-16に装備されていたAAQ-33は、このAAQ-23の数倍の探知能力があるとのことで、CCD技術や画像解析など、こうした夜間用装備を支える技術のの日進月歩の進化を感じさせられるとともに、最新技術の装備品を頻繁に更新できる米軍の凄さにも驚かされる。

Img_9728  F/A-18など地上展示されている機体の前では、見学者は気軽に航空機を背景、クルーたちと一緒に記念写真を撮ることができる。ちなみに、海軍と海兵隊では、操縦士を空軍のようにパイロットとは呼ばず、アビエイターと称する。これは、パイロットの意味に水先案内人、という意味がある為だ。

Img_9667  海兵隊のF/A-18C/Dとともに、NAVYの文字がみえる、空母艦載機だ。この機体は、第五空母航空団第27戦闘攻撃飛行隊のF/A-18Eスーパーホーネット。F/A-18の機体規模を大きく拡大し、搭載量を増強するとともに、エアインテイク部分の形状を改め、レーダーに対するステルス性を付与させた機体だ。

Img_9720  第224海兵全天候攻撃飛行隊のF/A-18D戦闘攻撃機。かなり派手な塗装だが、見た目は中々手ごわそうな印象。機首下部に見える膨らみは、戦術偵察システム(ATARS)搭載機であることを示している。隣のF/A-18も第224海兵全天候攻撃飛行隊の所属機。機体の前では、各種グッズの即売会だ。

Img_9784  ハリアーのコックピットは一般公開されており、大盛況だ。長蛇の列、と書くと簡単だが、物凄い行列だった。このほか、米軍基地名物のピザ販売にも物凄い行列が出来上がっており、岩国航空基地の広大なエプロンの中央で、ハリアーとピザの行列が交差しているほどの盛況だった。

Img_9658  MCH-101掃海輸送ヘリコプター。護衛艦にも搭載可能なヘリコプターとして導入したヘリコプター。以前に配備していたMH-53ヘリコプターと比べると推力などはかなり低下しているが、多用途性を重視したヘリコプターで、上空から海上に掃海具を降ろし、ヘリコプターにて牽引、処分する。万が一機雷が爆発しても、掃海艇と違い、ヘリは上空にいるので、被害を受けないという利点がある。

Img_9607  F^-4EJ改、航空自衛隊の機体。米軍ではすでに過去の機体、初号機が初飛行を果たしてから既に半世紀以上を経た機体だが、航空自衛隊では、近代化改修を施し、運用を続けている。しかし、そろそろ後継機の選定は急がなければならない。奥に見えるのは航空自衛隊の主力要撃機F-15J、こちらも近代化改修の計画が進められている。

Img_9632  第225海兵全天候攻撃飛行隊、F/A-18の翼端には、AIM-9サイドワインダーシリーズの最新型である空対空ミサイルAIM-9Xサイドワインダー2000が装着されている。このAIM-9Xは、極めて機動性が高く、高機動で回避する敵対航空機にも追随し、命中する。射程も40km程度と、これまでの短射程空対空ミサイルよりも長射程化しているのが特徴だ。

Img_9654  横田基地から展開した第374空輸航空団のC-130H輸送機、そして手前に駐機しているのがF-4。C-130は米国製の傑作輸送機、しかし、その手頃で使いやすい機体について、なかなか後継機の開発が進まない、という現状があったりする。昨年、5機が並んでいた海兵隊のCH-53輸送ヘリコプターは、今回、展示されていなかった。

Img_9969 AV-8BハリアーⅡの飛行展示が始まった。物凄い轟音を蹴立てて垂直離陸する。ハリアーⅡは海兵隊に281機が配備されており、海兵隊という火力に限界がある切り込み部隊にとり強襲揚陸艦や一部のドック型揚陸艦の飛行甲板から発着でき、近接航空支援や経空脅威排除にあたる心強い攻撃機だ。

Img_9938   このハリアーⅡは、レーダーを搭載したハリアーⅡプラスである。機首部分にF/A-18Aと同じAPG-65レーダーを搭載、AMRAAMを搭載、視認距離外空対空戦闘の展開も可能だ。海兵隊には、34機のハリアーⅡプラスとともに、72機の既存ハリアーⅡをハリアーⅡプラスに改修して運用している。

Img_9923  ハリアーⅡプラスは全長14.55㍍、全幅9.25㍍で、自重は6.47㌧、機体の重量に占める複合素材の重量は全体の26%に上り、当時としては稀有な複合素材製主翼を採用している。搭載するロールスロイスF402-RR-408エンジンは、四か所の推力ノズルの角度を変化させることで垂直離陸が可能である。

Img_9927  しかし、垂直離陸を行う場合、離陸重量は8.7㌧となっており、滑走路を用いて短距離離陸を行った場合の離陸重量は14.06㌧であるから、垂直離着陸運用が可能であるものの、通常は滑走路を用いて離陸する。戦闘行動半径は1100km、フェリー航続距離は3035kmである。武装は最大6㌧を搭載可能だ。

Img_0025  築城基地の第8航空団より、第304飛行隊のF-15Jが航過飛行と、機動飛行を展示。第8航空団は、九州の防空を担当し、F-15Jを運用する第304飛行隊のほかに、F-2支援戦闘機を運用する第6飛行隊が配置されている。F-15Jの垂直尾翼には、天狗を模った第304飛行隊のマークが描かれている。

Img_9996  F-15Jは、今回、岩国日米友好祭にて飛行した戦闘機の中ではもっとも大型の機体で、最大離陸重量で30.8㌧もの機体を、入手し得る最強のエンジンにて機敏に機動させる機体だ。戦闘行動半径1967km、フェリー航続距離4631km、格闘戦には滅法強く、機体が大きいため強力なレーダーを搭載しており、視認距離外空対空戦闘にも強い、世界最強の制空戦闘機として誕生した。

Img_0063  三沢基地の太平洋空軍F-16によるデモフライト。太平洋空軍のF-16は、各国にてF-16の飛行展示を行い、F-16を売り込む目的がある。WWはワイルドウィーゼルの略。三沢基地に迷い込んだ野生のイタチを飼っている・・・、のではなく、対防空網制圧任務、対地攻撃任務にあたる部隊を意味する。

Img_0172  F-16の売り込みが目的という飛行展示だけあって、これほどF-16は小回りが利く航空機なのか!?というほど、派手なデモフライトだった。F-16というと、安価な軽戦闘機というイメージを持たれている方も多いかもしれないが、米空軍など重点的に近代化改修を実施している空軍のF-16の性能は侮れない。

Img_0255  F-16は、フライバイワイアを採用し、導入当時は、その操縦性の高さで注目を集めた。その後、機体のエンジンやレーダーなどを強化し、外装式センサーなどを充実させ、新型兵装により能力を向上させるとともに、コンフォーマル式燃料タンクを搭載し、レーダーを最新型に改修するなど、まだまだ将来発展性を秘めた戦闘機だ。

Img_0382  航空祭、エアショー、航空機のビッグイベントは多々あるが、その最後を飾るのは、ブルーインパルス飛行展示だ、ウォークインから始まり、そのまま滑走路をタキシングしたのち離陸だ。ブルーインパルス飛行展示の開始。編隊離陸の後、フォーメーションを維持したまま岩国航空基地上空に進入する。

Img_2993  ブルーインパルスといえば、スモーク。機敏な動きを見せるT-4練習機の航跡は、しっかりと青空に刻みつけられる。望遠レンズで撮ってもいいのだけれども、せっかく、岩国基地まで出かけてきたのだから、岩国基地らしい写真が撮りたい、そういう理由から今回は、あえて広角レンズで撮影に挑戦。

Img_3069  海兵隊のKC-130空中給油機、その翼の背景には、ブルーインパルスが上空に巨大なハートを描きだそうとしていた。派手なフライトは見慣れている米軍関係者も、スモークを曳いたアクロバット飛行は珍しいらしく、ブルーインパルスから様々な大技が捻り出されるその都度、歓声が湧き上がっていた。

Img_3037  KC-135空中給油機とブルーインパルス。発着を撮るには最前列を目指すしかないが、航空祭そのものの活気を撮るには、一歩引いて撮ってみる方が、面白い構図の写真を撮ることができる。それにしても、この日は荒天が予想されていたのに、実際は好天。天も日米友好を尊重し、荒天と好天の変換ミスをしたのだろうか。

Img_3223  という舌の根も乾かぬうちに、ブルーインパルスが着陸し、航空祭の飛行プログラムがすべて終了すると、さっそく暗雲立ち込める山口県岩国市。実はこの時点で、広島駅や広島県内の山陽本線は豪雨に襲われており、叩きつけるような、バケツをひっくり返したような状況だったとのこと。刻一刻と豪雨前線はここ岩国航空基地に近づいていた。

Img_3311  OH-6D観測ヘリコプター。迷彩カバーが被せられているが、これは演習場などで偽装に用いるとともに、雨からヘリコプターを護るという用途にも用いられる。珍しい情景だ。聞いてみると、今日は荒天が予想されるとのことで、明野駐屯地には戻らないとのこと。なるほど、やはり降るのか、岩国にも。

Img_3286  岩国航空基地第91航空隊に配備されているUP-3D電子戦訓練支援機。妨害電波発生装置を用いて護衛艦などへの電子戦状況を構築する。このほか、岩国航空基地には、電子データ収集機EP-3や画像データ収集機OP-3Cなど機密性の高い任務にあたる第81航空隊が展開している。

Img_3298  豪雨前線接近中、遠くには稲光も見え始め、落雷の音が遠くから轟く。それでも撮りたい航空機、焦る気持ちもあるのだけれども、最後まで堪能したいぞ!という人たちがカメラにて最後の撮影を行っていた。御想像のとおり、この後、岩国航空基地を出たあたりで、豪雨に見舞われ、雨具を着用。バス停まで歩いて移動し、岩国駅に移動した。

HARUNA

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コメント (4)
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