北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

U.S.MARINE CORPS AIR STATION IWAKUNI FRIENDSHIP DAY 2008

2008-05-06 22:10:30 | 在日米軍

■アメリカ海兵隊岩国航空基地フレンドシップデイ08

 岩国日米友好祭の記事を本日は掲載したい。山口県岩国市に所在する岩国航空基地は、厚木航空基地から空母航空団の移転が予定されている、日本で最も注目される米軍施設のひとつである。

Img_2730  岩国航空基地祭、2008年の主役はF/A-18Cである。海兵隊のF/A-18Cは近接航空支援や要撃戦を展開する航空機で、独自の航空戦力を有する海兵隊の極めて高い独立性を確保させた航空機。当日は、全国的な雨天の中、降雨が避けられたという奇跡的な天候回復となったが、昨年27万人を数えた入場者は、天候とブルーインパルス不参加などもあり、7万人程度であったとのこと。小生初展開の岩国へは、岩国駅が入場制限されるなど聞き身構えたが、まったりムード。

Img_9868  岩国航空基地祭、日米フレンドシップデイでは、広大な基地を利用して各種航空機の地上展示が行われた。岩国航空基地は海上自衛隊基地でもあり、第31航空群を置く海上自衛隊機では、岩国航空基地に配備されているMCH-101,US-1A,U-36,MH-53,UP-3C、航空自衛隊からもF-4EJ改やF-2、T-7、C-1、陸上自衛隊からもAH-1S,UH-1J,OH-6Dが参加した。

Img_9953  最大勢力は、主催の米軍機でCH-53DやF/A-18Cなどの岩国配備機、横田や烏山、普天間、アンダーセン、嘉手納からC-130H,MC-130,A-10,KC-135,C-12,F-15などが参加した。岩国基地の第1海兵航空団隷下にある第12海兵航空群には、海兵戦闘攻撃航空隊のF/A-18C二個飛行隊24機、海兵攻撃航空隊のAV-8B攻撃機20機、海兵電子戦航空隊のEA-6B(第2海兵電子戦航空隊岩国分遣隊隷下の機体)が置かれている。

Img_1769  岩国航空基地へは2001年にCH-53D輸送ヘリコプター8機が配備されており、航空基地祭では地上展示に参加した。第12海兵航空群は、作戦指揮系統では第7艦隊隷下にあるのだが(行政上は太平洋海兵隊隷下)、訓練の関係か、AV-8B、いわゆるハリアーⅡとEA-6は参加しなかった。

Img_9988  地上展示地区と、エプロン地区にわけられた会場。地上展示にはなんど電子戦訓練支援機のUP-3Dが加わっていた。岩国航空基地第91航空隊に3機が配備されている機体なのだが、日本に3機という非常に稀有な機体なのに、写真でもわかるように皆さん何故かスルー。解説書もないのでそれほど機密の機体かと思いきや出し忘れ。

Img_1813  飛行展示は民間機の機動飛行より始まった。

 軽飛行機ということでの小回りを活かした展示飛行は、特に小生周囲ではお年寄りに大うけだった。軽量で小回りというと95式戦的なのだとか。飛行展示の合間にオートバイ軍団が登場したりと、民間の進出が顕著なフレンドシップデイ。

Img_1847  軽快な軽飛行機の展示が終了すると、真打、といわんばかりにF-4EJ改が登場。リモートとして九州から飛来した。写真は低速飛行の展示であるが、その直後、機動飛行に移る。F-4はヴェトナム戦争で活躍した機体だが、航空自衛隊では近代化改修を重ね現役に置いている。こういった潮流はドイツ軍など事例が多いのだが、米軍関係者には珍しいほど古い機体。

Img_1921  続いてF-2支援戦闘機が飛来。当日の見学者が岩国へ展開するに当たって終始不安材料となった悪天候は、大気の水分というかたちで見学者にヴェイパーの発生を誇示させるという恩恵をもたらした。ヴェイパーは機動飛行により大気が刺激され、生じる雲で、軍用機の躍動を伝える一枚を撮影者に提供してくれる。

Img_2031  岩国航空基地のUS-2が飛行展示。外洋での航空機事故に対する救難や海難事故に対応する機体だ。救難飛行艇ということで短距離離着陸能力が高いことで知られる本機も、滑走路の端から撮影していた小生の、それこそ滑走距離が僅かしか前に進んでいない目の前でふわりと浮揚したときには、その離陸性能に驚かされた。

Img_2069  続いて太平洋航空軍によるF-16の飛行展示。デモフライトにより同盟国にF-16を売り込むという副次的効果を期待した展示であるが、F-2を運用する日本の場合は純粋な飛行展示の機動飛行といえる。単機による機動飛行を撮影するには、やっぱり170~500㍉の超望遠があると便利かな、と感じた次第(撮影に用いたのは70~300㍉)。

Img_2263  任務に向かうUP-3D電子戦訓練支援機。妨害電波発生装置やチャフ散布装置を搭載し、電子戦環境を訓練に提供する機体。岩国基地には電子データ情報収集機EP-3や画像データ収集機OP-3Cなど、機密度の高い航空機が配備、運用されている。先ほど、地上展示に並べられていたUP-3Dとは別の機体で、注目を浴びつつ、ゆっくりと離陸していった。

Img_2355  F/A-18Cの離陸。F/Aという表記からもわかるように、航空戦闘と対地攻撃を両立した航空機である。F/A-18の一世代前にあたるA-7コルセアⅡ攻撃機は対地攻撃能力に加えて短距離AAMを搭載し限定的な航空戦闘に従事でき、F-4戦闘機は空対空ミサイルに加えて爆弾を搭載すれば限定的な対地攻撃に用いる事が出来た。

Img_2700  しかし、このF/A-18以前の機体は、中距離以上の空対空ミサイルを運用するレーダーを積んだF-4戦闘機には全天候で運用可能な精密爆撃航法装置を搭載することができず、A-7や海兵隊が以前運用していたA-4攻撃機には攻撃機としての装備に加えて戦闘機用のレーダーを搭載すると重量が増加し、近接航空支援に必要な低空低速での機動飛行能力を喪失してしまう。

Img_2697  対地攻撃を攻撃機が行う際には、地上へのレーダー照射の際に木々た地皺、建造物が生み出す乱反射から目標を見つけ出す機能が必要となるが、航空戦では可能な限り遠距離で目標を発見照射し捕捉する機能を有するレーダーが必要であり、この両者を兼ね備えたのがF/A-18から導入が開始されたAPG-65レーダーである。

Img_2735  こうして航空戦闘と対地攻撃能力を兼ね備えたマルチロールファイターとして誕生したのがこのF/A-18Cであり、当初は兵器搭載量がA-7よりも少ない、などいろいろといわれたが、多用途性能を有するという点は運用などを柔軟化させる利点も大きく、改良型のF/A-18Eが開発、いまや海軍航空の主役となり、任務についている。

Img_2435  F/A-18は1978年に初飛行を果たし、A~D型までの基本型だけでもアメリカ海軍と海兵隊に1230機が配備された。C型からは先進中距離空対空ミサイル(AMRAAM)やマーベリック対地/対艦ミサイルの運用能力を付与され、最大速度はマッハ1.8、兵器搭載量は7トン。

Img_2475  飛行展示を終えて続々と着陸に向かうF/A-18C。最後の一機はフックにより短距離着陸を展示した。

 個人的には垂直離着陸能力を有するAV-8Bによる展示飛行を期待したのだが、地上展示を含めて、岩国では見ることが出来なかったのは前述の通り。AV-8Bはその特性を活かし、他の航空機では出来ないような展示を行うことが出来る。

Img_2564  着陸し、タキシング中のF/A-18C。

 航空自衛隊にもF-2のような高性能指向ではなく、多少性能は劣っても数で各種任務を遂行できるようなF/A-18CやF-16Cのような機体を支援戦闘機として多数配備し、要撃機であるF-15Jを補完するような用途に、と思うのだが・・・。なお、中国地方や山陰地方では本機の低空飛行訓練が山間部などで恒常的に行われているとのこと。

Img_2592  民間機と自動車のレース。基地で行われたオートバイ愛好家が参加するローリングサンダーには、1000台以上のオートバイが参加、自動車愛好家が車両を競うフレンドシイップオート展示会では、各種自動車が並べられていた。ちなみに、この民間機はディープブルーズと呼ばれるチームの一員とのこと。

Img_2624  ハンググライダーで展示飛行を行うのはダン・ブキャナン氏、彼はオートバイレーサーとして山岳コースを専門としていたが事故により両足が麻痺、歩行も出来なくなったがそのごハンググライダーの展示としてエアショーに進出、世界中の航空祭で空への招待を観覧者に展示している。

Img_2711  負けてはいないのがF/A-18Cの飛行展示。米軍の関連行事は、荒っぽさや大胆さ、良い加減(端的に出てくるのは料理)が目立つが、教条主義に陥らないところが、その強さの背景なのかな、と思ったり。

 今回、低空飛行のフライパスでB-52が参加する予定であったが、広島市などの反対により実現しなかった。思うに、原爆が投下された広島と米軍の軍用機は永久に和解できないのだろうか。

Img_2831  ディープブルーによる飛行展示。ブルーインパルスが参加しない分、彼らの展示が際立っていた。使用する機体はロシアのスホーイ製で、Su-27に代表される戦闘機メーカーは、こういった航空機も開発していたのか、という印象。複数機による飛行展示は、編隊を入れ込む観点から70~300㍉のレンズは理想的な装備だ。

Img_2936  フレンドシップデイの最後を飾ったのはF-16による機動飛行である。入場者が昨年と比べ大幅に少なかったことから岩国駅での混雑も常識の範囲内で、バスの混雑も0700時台では、ほぼそのまま乗ることが出来た。天気も最後には晴れ間がのぞき、米軍のエアショーを満喫することが出来た一日だった。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (9)
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