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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

福田総理大臣 クラスター爆弾規制(オスロプロセス)について前向き

2008-05-25 22:44:30 | 国際・政治

■クラスター爆弾禁止レジーム

 5月23日、公明党の浜四津代表代行が不発弾などの発生が多く人道上問題があるとされるクラスター爆弾について規制を要請し、福田総理は前向きな考えを示したと報道された。

Img_1862  クラスター爆弾は、多数の子弾を爆弾内部に収蔵し、目標周辺で散布、主に機甲部隊の上部や露出した人員などに有効な打撃を与える目的で装備されている。航空自衛隊もクラスター爆弾としてCBU-87を運用しており、有事の際の海岸堡無力化や大規模直接侵攻などに際しての近接航空支援、また明確に意思表示されていないが、ある種の策源地攻撃などに対しても制圧面積が従来の爆弾よりも大きいことから運用が期待される。

Img_1884  クラスター爆弾はその構造上、不発弾の発生が多いことから非人道兵器であるとされ(ハーグ陸戦条約に基づく視点からは、即死しない兵器は非人道的、ジュネーヴ文民保護条約の観点からは不発弾による文民への不随被害が抵触する可能性がある、非常にどうでもいいが、軍事目標に対してのみ行使される核兵器、例えば砂漠中の軍隊とか、潜水艦に対する核爆雷なんかは、即死する分人道的っていう議論も国際法の世界では過去にあった)、オスロプロセスとして規制への試みが続けられている。

Img_3684_1   ここで思い出されるのは、対人地雷全廃条約、いわゆるオタワプロセスである。この合意形成過程において、日本政府代表は、日本は専守防衛であり武器輸出三原則に基づき人員を殺傷する兵器の輸出を禁止している、他国国土への地雷敷設及び対人地雷の輸出を行う可能性は無く、他方、限られた人員により広大な海岸線を防衛する観点から対人地雷は不可欠な装備であるとして、反対した。これは各国間にも充分な説得力がある一方で、先進各国の足並みを揃える為にも日本の加盟は重要であり、議論は難航した。

Img_6858_1 結局のところ、日本は代替装備の調達などを条件として国内的合意を見たが、実態は、対人地雷の代替となる管制式地雷(指向性散弾地雷)の装備化は予算の問題から防衛庁(当時)が必要とする数量よりも遥か少ない規模に留まり、今日に至る。クラスター爆弾に関しても、BAT(移動目標に対して誘導可能)やJDAM(定点に対するGPS誘導)、若しくはマーベリックミサイルのような精密誘導爆弾により代替は不可能では無いが、対人地雷全廃の際の“事例”がある。

Img_9295  また、MLRSも主力ロケットであるM26は子弾散布式であるため規制対象となる。野戦特科火力の新防衛大綱画定に伴う削減への能力維持を期して導入された03式多目的155㍉弾は従来のM-107榴弾の長径45×短径30㍍の面制圧能力に対して100×100㍍(米軍が運用する同種のM482A1の参考値)の制圧が可能であるのだが、これも規制の対象となり得る。この場合、例えば航空打撃力の増強、もしくは従来火砲数の増強、新型のロケット弾開発などが必要となり得るが、どれも莫大な費用投下、若しくは非現実的な国土防衛の部分的放棄という選択肢を迫られる。

Img_0564  日本の防衛大綱は、冷戦終結後、様々な模索とともに周辺国の軍事力増強とは対照的に装備定数の削減を行ってきた。付け加えて、武器輸出三原則の拡大解釈により、基本的に人員を直接殺傷し得るものについては輸出を禁じてきた。また、憲法9条に基づく集団的自衛権行使の否認を盾に諸外国との軍事的交流の道を制限し、内向的な防衛力整備を行った訳であるが、こうした政策展開の国際的な事業評価や国益への反映について、数値的な報告を、自分は見た事が無い(存在するならばご教授いただければ幸い)。

Img_7425  いわば、対人地雷全廃に関するオタワプロセス、そして今回のクラスター爆弾規制に関するオスロプロセスでは、これを国内問題化し、代替装備も問題から国際協調と軍事安全保障の相関性まで、安全保障政策の在り方を見直す機会ともなり得るのだが、これを怠れば、それ以前に平和主義という看板を幾つか掲げることで、必要な議論を忌避してきた付を、将来的に強いられる結果になるのかもしれない。

HARUNA

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