北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ウクライナ情勢-アメリカのウクライナへのクラスター弾薬供与,CBU-87クラスター爆弾かM-26ロケット弾か

2023-07-12 07:00:19 | 先端軍事テクノロジー
■臨時情報-ウクライナ情勢
 アメリカ政府はウクライナへクラスター弾を供与すると発表しました。実はてっきりMLRS用のクラスター弾薬は提供されていると思っていたのですが今度初めてのもよう。

 クラスター弾薬について。航空機から投下するCBU-87クラスター爆弾などが航空自衛隊でもかつて装備されていましたが、もう一つ、陸上自衛隊が精密誘導型のM-31ロケット弾を導入する以前に運用していたM-26ロケット弾がクラスター弾薬に当たり、また、正式化後即座に廃棄されましたが、03式155mm多目的弾もクラスター弾薬にあたる。

 一発で大量の子弾を散布し広範囲を一気に制圧するクラスター弾薬は、元々冷戦時代にソ連軍戦車軍団による欧州侵攻を通常兵器により食い止めるために導入されたものです。その後、コソボ空爆や湾岸戦争などで不発弾の問題が生じ、特に非戦闘員が拾う、記者が持ち帰り空港で爆発し死傷者が出るなど、非人道的と指摘され、オスロ条約で規制された。

 航空機から投下するものについては、JSOW滑空爆弾のようなものはクラスター弾薬には開発されておらず、基本的に攻撃目標の上空まで戦闘機で運び投下せねばなりません。レーザー誘導装置も搭載は可能なのかもしれませんが、基本的に広範囲を狙い精密さは要求されません。ただ、相手の陣地に地対空ミサイルがあれば、簡単には投下できません。
■M-26ロケット弾
 MLRS用のクラスター弾薬は正直1990年代まで自衛隊はこの弾薬でロシア軍上陸に備えていました。

 アメリカが提供するクラスター弾薬にM-26ロケット弾が含まれているならば、ウクライナ軍の反攻作戦に大きな威力を発揮するのかもしれません、射程は32㎞とGMLRSのM-31ロケット弾ほど大きくはなく、またGPS誘導にも対応していませんが、そもそもGMLRSはクラスター弾ではない故に命中精度を上げざるを得なかったためという背景が。

 鋼鉄の雨、この単語は沖縄戦の“鉄の暴風”を思い起こさせるものですが、鋼鉄の雨、とM-26ロケットを表現したのは湾岸戦争のイラク兵でした。サダムラインというソ連型戦術を取り入れたイラク軍の防衛線を突破する際に運用したのがMLRSから発射されたM-26ロケット弾です。保管期間は25年ですので古いものを供与すればちょうどよい。

 陣地に籠るロシア軍に対してクラスター弾の有用性を疑問視する声があるようですが、地下陣地ではなく塹壕線であれば上記の通りサダムライン突破に成果を上げています。不発弾が残ることは問題ですが、不発弾がウクライナ市民を巻き込む前にロシア軍がウクライナ市民を殺傷している状況こそ問題で、しかもロシア軍もクラスター弾を使うのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】ドイツ軍改革,レオパルド2A8戦車導入開始とPAH-2ティーガー廃止H-145Mでの代替

2023-07-10 20:09:33 | 先端軍事テクノロジー
■■■防衛フォーラム■■■
 ドイツ連邦軍についての話題です。結局341両で生産を取りやめた90式と違い2000両以上を量産し大量に輸出したレオパルド2だからこそ各種改良と改良型開発費を輸出により補えるという利点がある。

 ドイツ連邦軍は最新型のレオパルド2A8戦車18両の取得予算について連邦議会の承認を受けました。これは5月24日の連邦議会予算委員会での承認によるもので、ウクライナへの軍事援助として提供される18両のレオパルド2A6戦車の代替となる戦車で、現在最新のレオパルド2A7HUをさらに改良した最新型のレオパルド2の初調達となります。

 パンターKF-51戦車などドイツ国内にはラインメタル社が発表したレオパルド2戦車シリーズの後継と成りうる戦車がありますが、連邦軍は全く新しい戦車を導入することで部隊間の能力不均衡を生むのではなく、レオパルド2戦車の改良を積み重ねる選択肢を選びました。このレオパルド2A8はドイツ戦車として初めてアクティヴ防護システムを持つ。

 レオパルド2A8戦車は特筆すべき改良としてイスラエル製トロフィーアクティヴ防護システムを搭載、ミリ波レーダーと擲弾発射器を連動させRPG-29対戦車ロケットやメティスMなどの対戦車ミサイルを命中前に撃墜するほか、車両待機時に電力を提供する補助動力装置を現行の17kw発電能力から20kw発電能力に強化するなど、改良されました。
■PAH-2ティーガー廃止へ
 観測ヘリコプターならば兎も角ロシア軍のホーカムが妨害に出てきた際にどう戦うつもりなのか。

 ドイツ連邦軍はPAH-2ティーガー攻撃ヘリコプターをH-145M対戦車ヘリコプターへ置き換える計画を発表しました。これはドイツが2020年までにフランスやスペインとともに進めるティーガー攻撃ヘリコプター改良計画から脱退を発表し、ティーガーを退役させる方針が内示されていましたが、専用戦闘ヘリコプター廃止に踏み切ったかたち。

 ティーガー攻撃ヘリコプターは、ドイツ陸軍が調達計画の縮小を発表した際にキャンセル分の支払いについてエアバスヘリコプターズ社との間で係争問題に発展し、結局損失補填分として新規調達の60%にあたる違約金を支払うことで合意しました、この費用を既存のヘリコプター運用費から捻出したことで予算不足に陥り、稼働率が致命的に低下する。

 H-145Mは日本ではドクターヘリなどに用いられている軽ヘリコプターで、ドイツ国防省は多用途用として82機を30億5000万ユーロで調達する方針を示しています、連邦軍はこのうち24機を対戦車ミサイル搭載型のEC-645-T2と位置づけ、スパイク対戦車ミサイルなどを搭載する計画です。防弾性や生存性は低いものの用途を限定し対抗するもよう。
■PAH-2ティーガー改良
 退役が方向性を示した後にも改良できるところは能力向上するという点は自衛隊のアパッチロングボウとは異なるところです。

 ドイツ陸軍はPAH-2ティーガー戦闘ヘリコプター用PARS-3-LRミサイルの改良試験を実施中です。PARS-3-LRミサイルはドイツとフランスおよびイギリスが国際共同開発プログラムを組み、その後イギリスが撤退しフランスとドイツが完成させています。フランスとドイツは別々の製造ラインを整備し、フランスはその後ミラン改良型を正式採用した。

 PARS-3-LRミサイルの特色は地上目標及び航空目標に対し打ちっ放し式として射撃後のレーザー照準やレーダー誘導が不要である点で、PAH-2ユーロコプターティーガーからの運用では8秒間に4目標に対して発射することが可能、射撃後ヘリコプターは回避行動をとることが可能であり、敵防空砲兵や高射機関砲などからの生存性を確保しています。

 PAH-2ティーガー戦闘ヘリコプターについて、ドイツ国防省は今後2038年までに段階的に廃止し、後継としてH-145軽ヘリコプターへの置き換えを発表していますが、このPARS-3-LRミサイルについては発表前から開発が開始されているため、計画が進められていると見るべきですが、軽ヘリコプターには能力が足りないようにも見受けられます。
■アロー3ミサイル防衛システム
 ドイツ軍がイージス艦を導入していればイージスミサイル防衛システムによるミサイル防衛と話ははやかったようにも思うのです。

 ドイツ政府はイスラエル国防省との間でアロー3ミサイル防衛システムのドイツへの売却を巡る交渉が継続中です。アロー3は世界で最も進んだミサイル防衛システムであり、この背景にはアメリカの進めるミサイル防衛システムがABM制限条約の影響を受けるのに対して、イスラエルは核兵器国ではないために制限がないという背景があります。

 アロー3迎撃ミサイルの射程は2400㎞、射撃指揮装置として運用するスーパーグリーンパインレーダーは3000km以遠の目標を探知する能力を持ち、大陸間弾道弾を含む弾道ミサイル攻撃に対抗するとともに低軌道上の人工衛星に対しても命中させる能力を持ちます。ただ、イスラエルは単独でのアロー3ミサイル防衛システムを対外供与できません。

 イスラエルはアローミサイル防衛システムの開発に際し、アメリカ政府からの防衛協力を受け80%の資金支援を受けています。またドイツはNATO加盟国を中心に欧州15か国が参加する欧州防空システムを開発中であり、アロー3ミサイル防衛システムがここに組み込まれる場合、ロシアとアメリカの問題に発展する可能性があるため、慎重なのです。

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ウクライナ情勢-反攻作戦投入AMX-10RC装甲偵察車の課題と先月撃破されたレオパルド2主力戦車の回収

2023-07-05 07:01:27 | 先端軍事テクノロジー
■臨時情報-ウクライナ情勢
 AMX-10RCというのは操行系統は違いますが要するに87式偵察警戒車に105mm低圧砲を積んだようなものです。

 れています。AMX-10RCは105mm低圧砲を搭載した装輪装甲車で1973年に開発、装甲は薄いアルミ製ですが水陸両用性能を有し、フランス軍では軽戦車連隊に70両以上を集中配備し、威力偵察などに活用していますが、実際問題装甲は薄い。

 第一線運用を行っているのはウクライナ海軍歩兵第37海兵旅団、フランス軍からのAMX-10RCの供与数は多くないものの監視任務に活用しており、装甲防御の低さと装軌式装甲車AMX-10Pの駆動系を応用した事による整備性の難しさが課題として挙げられ、これはフランス軍でも指摘されています。他方、監視器材の性能は高い水準とされています。

 AMX-10RCは近代化改修を繰り返し、特に追加装甲の装着により水陸両用能力を断念する程に防御力を強化しているのですが、やはり対戦車火器の命中に対して脆弱性は否めなかった、ウクライナ軍では破壊された際に弾薬に誘爆し乗員全員が戦死するという厳しい結果も生じています。もっともフランス軍では偵察用で前線突破任務にはあてていません。
■ウクライナ軍レオパルド2
 衝撃の撃破映像公開から間もなく一ヶ月ですが次の撃破情報が出ない以上はウクライナ軍は上手く運用しているのでしょう。

 ウクライナ軍レオパルド2が撃破された6月11日の戦闘ですが、ロシア軍は結局レオパルド2を鹵獲できなかったことが破壊された車両の回収により明らかになりました。防御力の高いレオパルド2A6と思われる車両が地雷原に阻まれ前進できない状態で戦闘ヘリコプターや徘徊式弾薬の攻撃を受け複数が破壊されたのは衝撃的ではありましたが。

 ブラッドレイ装甲戦闘車も同じ日の戦闘で撃破され、ロシア軍兵士による記念写真などが撮影される様子がロシア軍後方により発表されていましたが、懸念されたのは西側の新鋭戦車であるレオパルド2が鹵獲されたのか、ということでした。しかしブラッドレイ装甲戦闘車ともども回収できたという事は最前線で戦車回収車が行動できた事になります。

 他方で、ロシア軍は対戦車地雷を効果的に使用しており、冷戦時代に想定されたソ連軍対戦車地雷密度と比較し今回は数カ月間のロシア軍防御体制構築の猶予を与えた為にその地雷原処理の難しさが課題となっています。通常こうした状況では戦闘ヘリコプターにより後方を叩くのですが、現在ウクライナ軍にはこうした航空戦力の余裕がありません。

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【防衛情報】フィリピン軍-A-29スーパーツカノ軽攻撃機増強計画と韓国製HDC-3100型コルベット起工式

2023-07-04 20:14:12 | 先端軍事テクノロジー
■■■防衛フォーラム■■■
 フィリピンの周辺情勢緊迫化を受けてのひところでは考えられない水準での防衛力強化について今月もお伝えしましょう。

 フィリピン政府はアメリカとのEDCA国防協力強化協定発効を受け、新たに四か所のフィリピン軍施設をアメリカ軍へ提供する決定を行いました、この協定はEDCA交渉の段階でアメリカ軍がフィリピン国内で拠点とできる施設の増設を条件としていたことを受けて調整されたもので、フィリピンとアメリカの相互防衛協力を前進させるものです。

 カガヤン州サンタアナのカミロオシアス海軍基地、同じカガヤン州のサンタアナのカミロオシアス海軍基地、やはり同じカガヤン州のカミロオシアス海軍基地、そしてカガヤン州サンタアナのカミロオシアス海軍基地、カガヤン州サンタアナのカミロオシアス海軍基地、新しく提供される施設はカガヤン州にある既存のフィリピン軍施設となっています。

 アメリカ軍は1992年まで空母二隻が母港となっていたスービックベイ海軍基地や東アジア最大と呼ばれたクラーク空軍基地などを維持していましたが、ピナツボ火山噴火に伴うクラーク基地閉鎖を受け代替施設を検討したところ、当時のフィリピン政府が拒否し、これに伴い在比米軍の大半が撤収し、在日米軍基地へ整理統合された歴史がありました。

 フィリピン国防省はブラジルのエンブラエル社との間でA-29スーパーツカノ軽攻撃機に関する契約を締結しました。フィリピン空軍は既に2020年10月にA-29スーパーツカノ軽攻撃機の受領を開始しており、最初に引き渡された6機を以て第15航空団第16飛行隊を編成していますが、フィリピン空軍は性能を高く評価し、増強を計画しています。

 OV-10ブロンコ多用途航空機、フィリピン空軍は従来、COIN機として対地攻撃を行うほか、前線飛行場への物資輸送や特殊部隊空挺進入などに用いられるOV-10ブロンコ多用途航空機を装備してきましたが、その老朽化が進んだことで後継機としてA-29スーパーツカノ軽攻撃機が選定、プロペラ式高等練習機を軽攻撃機へ改修した航空機となっています。

 A-29スーパーツカノ軽攻撃機、フィリピン空軍の計画は2024年までに24機体制とし、12機編成の2個飛行隊を編成する計画です、今回の契約では第二段階となる追加の6機を調達することとなります。小型の機体ですが汎用性の高さからゲリラや武装麻薬カルテルなどに悩まされる諸国には評価が高く、海外向けにアメリカでも生産されている航空機だ。

 フィリピン海軍が導入計画を進める将来コルベット2隻の起工式が2023年5月と11月に韓国で行われる方針です、これは韓国の現代重工業が発表した建造計画に基づくもの。フィリピン海軍は韓国から既にホセリサール級フリゲイト2隻を導入していますが、導入されるのは設計を一新して、このホセリサール級フリゲイトを補完する水上戦闘艦です。

 HDC-3100型、韓国の現代重工が提示したのは同社が輸出用に提示している水上戦闘艦です。これは満載排水量3100tであり全長116mと全幅14.8m、艦砲とVLS垂直発射装置16セル、そして対潜ヘリコプターの運用能力を有し、飛行甲板も大型化させます、対潜用のソナー及び兵装を有すると共に速力は25ノット、4500浬の航続距離を有する設計です。

 ホセリサール級フリゲイトと比べた場合、当初計画ではコルベットを導入する計画でしたが結果として現代重工から提示された案は大型化しており、建造費の面からも了承されフリゲイトよりもコルベットの方が大きいという不可思議な状況となっています。建造は2021年12月27日に正式契約されており、2隻の建造費は280億ペソとなっています。

 フィリピン海軍が韓国で建造する次期哨戒艦6隻へコングスベルクマリンタイム社が推進システムを提案しました。この哨戒艦は韓国の現代重工において建造されているもので、フィリピン海軍では水上戦闘艦の建造を進めるとともに、周辺情勢の緊張に対し圧倒的に不足する水上戦闘感染力を補うべく、大型哨戒艦の建造を並行して進めているもの。

 コングスベルクマリンタイム社は可変ピッチプロペラシステムを有する推進装置とともに制御システム一式を現代重工へ納入するとのこと。哨戒艇は全長94mあり満載排水量は2450t、最高速力22ノットを発揮し15ノットの巡航速力では5500浬の航続距離を有するとのこと。建造は順調に進められており一番艦は2024年8月に竣工予定です。

 哨戒艦ではありますが海軍が運用するため、対艦ミサイルなど、一定程度の水上打撃力の付与も可能です。フィリピン海軍は近年まで海軍力の重要性への認識が薄く、しかし領域内の環礁などを占領された事を受け海軍力を整備開始しており、制海権を確保するような施策ではなく、相手に損耗を強いる事で接近を拒否する防衛型の海軍を志向しています。

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ベル360インヴィクタスという選択肢【3】アメリカでさえ有人機を用いる分野に無人機後進国日本が挑む無謀

2023-07-01 20:09:36 | 先端軍事テクノロジー
■広大な太平洋地域
 観測ヘリコプターと戦闘ヘリコプターを全廃して無人機に置換えるという提案は、どのあたりにそこまで無人機の運用に自信を持っているかという素朴な疑問麩に繋がります。

 ベル360インヴィクタスヘリコプターのような航空機が陸上自衛隊へ採用されるならば、戦闘ヘリコプターと観測ヘリコプターが廃止されても、情報収集から対戦車攻撃まで展開可能で、離島からの運用も離島への運用も、水陸機動団のV-22オスプレイ護衛さえも可能となり、なにより反撃能力で敵本土を叩く前に着上陸部隊に打撃を与えられるのだが。

 観測ヘリコプターは無人航空機により置き換えるという、これが日本の構想です。もっとも、観測ヘリコプターの任務は敵の気配や戦闘能力を推し量ることであり、無人航空機だけで対応できるのかは大いに疑問です、そして何より、センサーだけではわからないからこそ、アメリカ陸軍もFARA陸軍将来攻撃偵察機を開発している点を忘れるべきではない。

 自衛隊の無人機運用の歴史は確かに長い、けれどもその大半は無人標的機の任務である。政府は既存の戦闘ヘリコプター、対戦車ヘリコプター、観測ヘリコプターをすべて退役、無人航空機に置き換えるというが、そもそも自衛隊に無人機の作戦運用に実績はない、第101無人偵察機飛行隊は、北海道南西沖地震、阪神大震災、東日本大震災でも飛んでいない。

 大災害において内閣総理大臣は度々現場を上空から視察する、これは自分の目で見なければ全容を把握できないためという理由なのだけれども、結局のところセンサーで得られる情報は画像情報であり、人間の視覚とともに五感で得られる情報には及ばない、こうした前提であるからこそ、安易な無人機万能論に基づく政策転換には不安を覚えるのです。

 AH-64Dアパッチロングボウ戦闘ヘリコプター、防衛省は2030年までに用途廃止を計画している、ただ問題はボーイング社が2025年にアパッチロングボウのアップデート改修を終了するため、2025年から2030年まで自衛隊が運用を継続する場合はアパッチガーディアンへ改修する必要があります。この点について明確な指針が示されていないのです。

 アパッチガーディアン、日本がこの方針を明確としない背景には、AH-1Sコブラ対戦車ヘリコプターの時代から継続されてきた陸上自衛隊の空中打撃能力について、従来想定された北海道ではなく中国を対象とした南西諸島などでの戦闘を想定する場合、この行動半径や打撃力が戦闘ヘリコプターという装備体系では追いつかないという認識があるのか。

 FARA陸軍将来攻撃偵察機という装備体系が実際に、無人機の運用では世界の戦闘を行くアメリカ軍において進んでいるために日本の施策に懸念するのですが、しかし、仮に陸上自衛隊の対戦車ヘリコプターや戦闘ヘリコプターを置き換えうるものとなるならば、どうなのだろうか。既存装備体系ではなく新しい装備体系にまるごと転換するという意味で。

 インド太平洋軍が中心として将来の対中国戦闘を念頭に環太平洋地域での運用を想定する、この為に長大な行動半径と高い進出速度を有するFARA陸軍将来攻撃偵察機は、先ずメーカーが提示した航空機を選定し、その上で選定された機体を原型として開発するという悠長なものではある。しかし、陸軍は優先度を高め、予算配分を強化し加速するという。

 アメリカはこれまでに幾つかのメーカーが可動翼機や複合ヘリコプターを開発しており、おそらくこの分野では世界で最も技術実績を蓄積しています。これに、表現は悪いのですが相乗りすることができれば、自衛隊としては、なにしろ想定地域がアメリカ軍と重なる訳ですので、リスクが低く、完成度の高い航空機を装備できることともなる利点がある。

 UH-2多用途ヘリコプター。もう一つFARA陸軍将来攻撃偵察機の自衛隊導入への現実性を高めるのは、自衛隊が広範に配備させる多用途ヘリコプターとして、UH-2多用途ヘリコプターという、非常に取得費用を抑えた機種を選定したことです。これは島嶼部飛行能力が設計に要求されているが、飛行性能の面から島嶼部運用に最適な機種ではありません。

 FLRAA将来型長距離強襲機とFARA陸軍将来攻撃偵察機、アメリカを見ますと軍用ヘリコプターは間もなく巡航速度と行動半径という点で劇的な世代交代の時期を迎えようとしています。そして、賛否両論在りますが自衛隊はV-22オスプレイ可動翼機17機の導入により、一足早く数は限られるものの、世代交代の端緒に到達した、ともいえるのですね。

 V-22オスプレイ可動翼機を導入したのです、FARA陸軍将来攻撃偵察機は速度面で厳しいですが従来の戦闘ヘリコプターよりも随伴能力は高くなっている、すると、併せて普段使い的な任務をUH-2多用途ヘリコプターに委ね、強襲任務をFLRAA将来型長距離強襲機のような機体へ転換、費用は嵩みますが選択肢として考えられる様なっているのです。 

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ベル360インヴィクタスという選択肢【2】FLRAA将来型長距離強襲機とFARA陸軍将来攻撃偵察機

2023-06-29 20:12:02 | 先端軍事テクノロジー
■複合ヘリコプター
 有人ヘリコプターの利点は安全性や費用面ではなく即座の致死性を相手に叩きつけられるという部分が大きいように考えるのだ。

 複合ヘリコプターは攻撃ヘリコプターの後継と成りうるか。陸上自衛隊ではAH-64D戦闘ヘリコプターの後継機を選定せず形式消滅させる方針を示しています。しかし、後継に無人機を充てる構想が示されていますが、果たして無人機だけで実際に指揮官や偵察員が目視で状況把握せずとも対応できるほど、AR拡張現実など研究されているのでしょうか。

 無人機は旧陸軍の時代から研究が続いており実績も高いために陸上自衛隊は今後有人航空機ではなく実績ある無人機へ運用をシフトする、こう言い切ることができればよいのですが、自衛隊が無人機の分野で先進的であったのは標的機のみ、無人偵察機については航空法の関係を含めかなり後手に回っています。故に期待しすぎても運用能力がありません。

 OH-6D観測ヘリコプター、この後継機に無人ヘリコプターを導入するとしましても、残念ながら無人ヘリコプターには匍匐飛行能力を持つ機種は存在せず、単に安穏と低空飛行していてはロシア軍ヘリコプターがウクライナ上空で多数が携帯地対空ミサイルの血祭りにあげられている状況を踏襲するのみであり、匍匐飛行ができなければ生き残れない。

 FLRAA将来型長距離強襲機とFARA陸軍将来攻撃偵察機、アメリカ陸軍は二つの航空機の機種選定と量産準備や開発などを急いでいます。アメリカの話か、と思われるかもしれませんがこれらに機種の装備体系を最も重視しているのは数ある統合軍の中でもインド太平洋軍で、近く懸念される中国軍の太平洋地域での軍事行動に備えての措置ということ。

 FARA陸軍将来攻撃偵察機はOH-58カイオワ観測ヘリコプターの後継を期している装備ですが、RAH-66コマンチ偵察ヘリコプターが開発費高騰を受け開発中止となって以降、安価を目指したヘリコプターに過度な装備の搭載を行うことで価格高騰という、ARH-70偵察ヘリコプターの中止などが繰り返され、結局後継機なしにOH-58は退役しました。

 AH-64Eアパッチガーディアン戦闘ヘリコプターとRQ-7シャドー無人偵察機、アメリカではOH-58観測ヘリコプターの任務をこの二機種が担っていますが、性能面で隔靴掻痒が否めないようで、更に想定されるインド太平洋地域の戦いでは、欧州や中東地域の戦場よりも洋上飛行を含め戦域が非常に広く、これらの装備の行動半径では全く対応できません。

 日本の視点に戻しますと、OH-6D観測ヘリコプターが全機用途廃止されました、この退役の仮定と後継機の不在、しかし現場の声を聴きますというほど後継機なき用途廃止に安心できる状況ではないという状況を加えれば、アメリカのOH-58観測ヘリコプターと日本のOH-6D観測ヘリコプターの関係は重なる点があり、さらに日本は後継が本当に無い。

 OH-6D観測ヘリコプター、当初はOH-1観測ヘリコプターを250機量産することで後継機に充てる計画で、特にOH-1観測ヘリコプターは開発当時脅威視されていた空対空戦闘能力を持つ敵戦闘ヘリコプターに対して空対空ミサイルによる積極戦闘を想定するなど、野心的な設計となっていました。その分費用は高騰し、結果調達数が大幅に減らされる。

 OH-1観測ヘリコプター、個人的には川崎重工が納入していた製造費用はMQ-8ファイアスカウト無人ヘリコプターよりも若干安く、またデータリンク能力も防衛装備庁が技術研究本部時代に実施しており、岐阜基地において技術研究本部がOH-1初号機を用い飛行実験を繰り返す様子を見ていましたので、性能で陳腐化した装備とは考えてはいません。

 OH-1観測ヘリコプターは武装搭載能力の低さが問題視されていますが、APKWS先進精密攻撃兵器という、所謂70mmロケット弾のレーザー誘導型の開発、奇しくもこれはOH-1以上に搭載能力のないMQ-8などの無人航空機用に開発されたものですが、こうしたものの開発により、偵察のほかに一定の対装甲戦闘能力を付与させることは可能といえる。

 南西諸島防衛、自衛隊が南西諸島防衛を想定する場合においてもOH-1の増槽搭載時航続距離は720km、これはイタリアのA-129マングスタ戦闘ヘリコプターとそれほどそん色はなく、自衛隊を台湾やフィリピンにおけるアメリカ軍作戦支援へ投入する計画がないのであれば、南西諸島でもほぼ十分な性能といえるものです。ただ、性能不十分という。

 FLRAA将来型長距離強襲機とFARA陸軍将来攻撃偵察機、一つの疑問符は自衛隊がこれらの装備を調達する可能性はあるのか、という事です。FARA陸軍将来攻撃偵察機については戦闘ヘリコプターとしての能力を有する機種が提示され、例えばコンパウンドアパッチというボーイング社の提案はアパッチガーディアン戦闘ヘリコプターが原型機なのです。

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【防衛情報】L-52装輪自走砲とアーチャー自走榴弾砲,ボフダナ装輪自走榴弾砲にATMOS自走榴弾砲

2023-06-26 20:14:11 | 先端軍事テクノロジー
■■■防衛フォーラム■■■
 陸上自衛隊へ導入が本格化する19式装輪自走榴弾砲、そこで今回は世界における装輪自走榴弾砲の最新動向を纏めてみました。

 イスラエルのエルビットシステムズ社はドイツのラインメタル社とともにL-52装輪自走砲の実弾射撃試験を実施しました。このL-52装輪自走砲は10輪駆動の極めて大型の輸送車両を転用しており、自動装てん装置など火砲基部はコンテナ型の戦闘室を配置、トラックに榴弾砲を乗せただけの自走榴弾砲よりも一歩進んだ先進的な設計を採用します。

 L-52装輪自走砲、この名の通りこの試作自走榴弾砲が搭載しているのは52口径155mm榴弾砲です、これをA1型と位置づけていますが、しかしエルビットシステムズ社とラインメタル社では砲身を延伸させたA2型のL-60装輪自走榴弾砲を計画しており、搭載される60口径155mm榴弾砲では射程83㎞という極めて長い打撃力を想定しているとのこと。

 L-52装輪自走砲は、しかし試作段階というよりも実証段階のシステムであり、この為に射撃に際しては巨大な駐鍬四基で車体部分を安定化させるなど、通常の自走榴弾砲よりも射撃準備に時間を要します、射程が大きいことから敵砲兵による対砲兵戦を想定していないのか、将来的に射撃準備に改善の余地があるのかについては明らかにされていません。
■イギリスがアーチャー導入
 自動装填装置を備えた巨大な装輪自走榴弾砲であるアーチャーはこれこそ国産ではなく自衛隊が導入すべき装備だと考えていたものでした。

 イギリス陸軍はスウェーデンよりアーチャー自走榴弾砲14門を緊急取得することとなりました。イギリスはこれに先立ち32門ものAS-90自走榴弾砲を供与、4月にイギリス国防省がイギリス陸軍のAS-90自走榴弾砲ウクライナ供与を実行した後に顕在化したイギリス陸軍砲兵装備不足を受けての緊急措置であり、暫定的な代替装備との位置づけ。

 アーチャー自走榴弾砲は52口径FH-77榴弾砲をボルボ社製装輪車両に搭載したもので、車体部分は高度に装甲化されているとともに不整地での運用を念頭とした建機車両技術を応用したため路外機能が高く、また道路上の戦略機動性も相応に確保されています。また砲塔は完全自動化されAS-90自走榴弾砲よりも四割少ない人員で運用可能という。

 AS-90自走榴弾砲はかねてより後継装備の取得が検討されていましたが、それ以前にイギリス陸軍の砲兵へ大きなギャップが生じており、導入決定から一年以内に装備できる選択肢としてアーチャーが選定されたとのこと。イギリス陸軍によれば遅くとも2024年4月までにイギリス陸軍での運用を開始できる条件としてアーチャーが選ばれました。
■ボフダナ装輪自走榴弾砲
 カエサル自走榴弾砲により侵攻したロシア軍へ痛撃を加えたウクライナでは以前から開発が開始されていた国産自走砲が登場します。

 ウクライナ陸軍は新型のボフダナ装輪自走榴弾砲の受領をまもなく開始します。ボフダナ自走榴弾砲は正式名称2S22ボフダナ、ウクライナ軍が開発しているトラック式自走榴弾砲です。2022年のロシア軍侵攻以来ウクライナ軍はフランスから供与を受けたカエサル自走榴弾砲を運用し、大きな戦果を挙げたと発表していますが、これと同じトラック式だ。

 ボフダナ自走榴弾砲、その開発はロシア軍侵攻開始前に遡るとのことで、ロシア軍侵攻当時、ハリコフ近郊において評価試験中であったものが有事の危険にさらされることとなり、当初ウクライナ国防省はロシア軍による鹵獲を回避すべく破壊を命じましたが、開発責任者たちは新型自走砲破壊を拒否し脱出を選択、幸いキエフ近郊まで転進成功したという。

 2S22ボフダナ、トラック式自走砲でウクライナ製KrAZ-6322トラックを基に装甲キャビンと20発の弾庫と155mm榴弾砲を搭載、射程は通常榴弾40㎞でRAP弾では50㎞とのこと。ウクライナ軍はフランスから供与されたカエサル自走榴弾砲を見事に使いこなし世界を驚かせましたが、その背景にはこの種の国産砲を研究した事が寄与したのでしょう。
■コロンビア次期自走砲
 ウクライナでの活躍以降評価を上げているフランスのカエサル自走榴弾砲ですがコロンビアでは興味深い事例が。

 コロンビア国防省は次期自走榴弾砲についてカエサル自走榴弾砲を撤回しATMOS自走榴弾砲を再選定しました。コロンビア軍は国内の麻薬カルテルとの戦いにおいて火力拠点などを急襲するべく自走榴弾砲を必要としていました。この選定では当初、フランスのネクスター社製カエサル自走榴弾砲が選定されましたが、最終契約に至らず撤回されている。

 ATMOS自走榴弾砲はイスラエルのエルビットシステムズ社製、コロンビア陸軍は18門を調達する計画です。他方、カエサル自走榴弾砲の撤回について、コロンビア政府は契約金額が1億1400万ドルになるとの通知を受け、当初見積もりを上回ったことが不採用の理由としています。カエサルとATMOSは火砲としては共に52口径155㎜砲を搭載している。

 ATMOS自走榴弾砲はエルビットシステムズ社が以前のソルタム社時代に設計した自走榴弾砲で、ソルタム社製155㎜榴弾砲をチェコのタトラ社製タトラ-T815VVNトラックに搭載しています。自走砲で麻薬カルテルとの戦いは大袈裟に思われるかもしれませんが、このほかに2500名の兵員を有するゲリラ組織FARCコロンビア革命軍も存在しています。

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タイタニック潜水艇遭難-観光用深海潜水艇タイタン消息を絶って一〇〇時間超,アメリカカナダフランス捜索続く

2023-06-23 07:00:51 | 先端軍事テクノロジー
■タイタン号遭難事故
 タイタニック、海底3700mの沈没船へ向けて潜航した観光用深海潜水艇タイタン行方不明から100時間以上が経ちました。この深さでは自衛田のDSRVでも潜航は難しい。

 写真は自衛隊のDSRVですが、タイタニック号へ向かった潜水艇タイタン、設計では母船ポーラプリンスから海底へ潜航しますが音信不通になったと発表、アメリカ沿岸警備隊とカナダ海軍、そしてフランス人探検家が乗船していた為にフランス海軍も艦艇を派遣、フランス艦は昨夜現場海域へ到達しました。昨日日本時間夕刻までに生命維持装置の酸素が設計上使い果たしたとのこと。

 カナダ海軍のP-8A哨戒機とP-3C哨戒機が海中で音を探知したと24時間前に報道がありました、カナダにはP-8Aは装備されていませんのでこれはCNN報道の時点で情報が錯そうしているようですが、こんな小型艇でもP-8Aのソノブイは発見できるのかと妙に感心した一方、その海域を集中捜索しても見つからず自然音であった可能性が指摘されている。

 深海潜水艇タイタン、重量10.43tで全長6.7mと全幅2.5mに全高2.8m、一応小型二次元ソナーと推進装置により水中速力は3ノット、水中活動時間は96時間あり、操縦士1名と人員4名を収容可能で酸素と人員を含む搭載能力は685kg、比較できる日本の潜水艇が少ないのですが、似ているのは人間魚雷回天と比し重量はやや重く全長は半分以下、という。

 しんかい6500、日本の有人深海調査艇として海洋研究開発機構が運用している、しんかい6500を比較対象としますと、乗員1名と人員2名が搭乗し全長9.7mと全高3.2mに全幅2.7m、重量27tとなっています、運用時間は標準8時間ということですが酸素は120時間分、建造費は125億円で参考までに同時期の海上自衛隊潜水艦の建造費が360億円ほど。

 タイタンは安全装置として土嚢バラストを採用しており、一定時間水中に潜航したままの場合では土嚢が溶解し中の土砂を海中へ放出する事により浮上するとのこと。他方、通常の深海調査艇は水圧で変形しないガソリン等を浮力材として採用し、バラストを投棄した場合は自動で浮上するよう設計されていますが、タイタンにはこうした装置はありません。

 4000m潜航可能という有人深海調査艇は、日本には一隻、しんかい6500のみ。いや、世界的に見てもアメリカのアルビン号、中国のシーオール号、オーストラリアのチャレンジャー号、ロシアのコンスル号とミール号、フランスのノーティール号と数えるほどしかありません、それは用途が限られるうえ、建造費が通常設計で数百億円を要する為なのです。ただ、一縷の望みをかけ捜索は続いています。

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ベル360インヴィクタスという選択肢【1】陸上自衛隊にアメリカ陸軍インド太平洋地域用航空機採用を考える

2023-06-22 20:23:53 | 先端軍事テクノロジー
■戦闘偵察ヘリコプター
 戦車大隊と偵察隊が本州では統合され偵察戦闘大隊が創設されているのだから航空機についてもこうした選択肢を考えるべきではないのか。

 ベル360インヴィクタス攻撃偵察ヘリコプター。陸上自衛隊のAH-64Dアパッチロングボウ戦闘ヘリコプターとAH-1Sコブラ対戦車ヘリコプター、それにOH-1観測ヘリコプターは、後継機を調達することなく、戦闘ヘリコプターと対戦車ヘリコプターに観測ヘリコプターという区分ごと廃止されるという。それでは新しい装備体系で置き換える事は可能か。

 偵察ヘリコプターという、従来にない装備体系であれば、戦闘ヘリコプターと対戦車ヘリコプターに観測ヘリコプターという従来の装備体系が陳腐化したという政府が示した定義には含まれませんし、しかも開発されているベル360インヴィクタス攻撃偵察ヘリコプターというものは、技術的リスクが低い割には完成度が非常に高い装備となっています。

 自衛隊は、本州と九州の戦車大隊を廃止する際に、偵察部隊を同時に廃止し偵察部隊の機能と戦車部隊の打撃能力の一部を併せ持つ、偵察戦闘大隊、という新しい部隊体系を構築しています。そしてベル360インヴィクタスを見ますと、観測ヘリコプターの一歩先を行く偵察能力と、戦闘ヘリコプターの能力を併せ持つ、なにか日本型の発想と重なるものが。

 FARA陸軍将来攻撃偵察機、もともとベル360インヴィクタスはアメリカ陸軍が進めるFARA陸軍将来攻撃偵察機計画に基づいて開発されたものです。そして開発中の機体の外見は、タンデム複座式でAH-1コブラを洗練させたような、しかし主翼を胴体に備えた、いわゆる複合ヘリコプター、巡航速度を高く意識した形状を採用しているのが特徴です。

 ヘルファイア対戦車ミサイル系統の対戦車ミサイルを最大16発程度搭載可能、しかし胴体内部にF-35やF-22戦闘機のような兵装庫を有し、ステルス性と、なにより空気抵抗を最小限とする設計を採用、また主翼は兵装搭載に限定するものではなく巡航速度を高める空気力学を期待しており、巡航速度は330km/hを超え最高速度は400km/hに迫るもの。

 RAH-66コマンチ偵察ヘリコプター、1990年代にステルス性を高度に意識したヘリコプターとして開発がすすめられ、幾つかの機種を一手に後継機として共通化し大量生産することで製造単価を抑える計画がありました、期待されていた機種なのですが、それでも一機当たり1億ドルの量産日が必要とされ、2000年代初めに開発計画が中止された航空機だ。

 ベル360インヴィクタスは、部分的にRAH-66コマンチ偵察ヘリコプターの形状を踏襲していまして、これは過去に実施された、テロ組織アルカイダ指導者オサマビンラディン急襲作戦に投入されたという、UH-60多用途ヘリコプター派生型のステルスブラックホークヘリコプターのように、RAH-66の技術が応用されているのではと憶測させるものです。

 ベル525リレントレス。これはベル社が2015年に初飛行させました中型ヘリコプターですが、ベル360インヴィクタスは基本的にベル525リレントレスの機体構造を採用しているという。リレントレスは19名の乗客を空輸するヘリコプターですが、巡航速度287km/hで航続距離1037km、この種の多用途ヘリコプターとしては高い性能を持つ機体という。

 機体形状は全く異なるものではありますが、しかし基本部分を流用できるのであれば、UH-1多用途ヘリコプターからAH-1対戦車ヘリコプターを開発したベル社ですし、アメリカンペネトレイターという、UH-1の機体構造を操縦席からタンデム複座式として武装ヘリコプター化する試作機開発が行われるなど、基礎部分が確立しているならば応用は容易だ。

 複合ヘリコプターといいますか、主翼を持つヘリコプターは実は富士重工スバルがかつて、ベル206多用途ヘリコプターをライセンス生産していた時代に主翼追加型を試作しています、実用化には至らず機体は群馬県科学館に航空シミュレーター機として転用し展示されたようですが、こうした航空機そのものは日本にとっても未知のものではありません。

 ベル360インヴィクタス攻撃偵察ヘリコプターのような、いわばヘリコプター版の偵察戦闘大隊のような航空機が陸上自衛隊へ、既存航空機の任務を受け継ぐ機種として採用されたならば、AH-64Dアパッチロングボウ戦闘ヘリコプターとAH-1Sコブラ対戦車ヘリコプター、それにOH-1観測ヘリコプターの退役を安心して見送ることができるのですが。

 政府は観測ヘリコプターと対戦車ヘリコプターに戦闘ヘリコプターの任務を無人航空機で置き換えるという。しかし現段階で自衛隊の無人機運用実績は乏しく、ミサイル運用能力と匍匐飛行能力のある無人ヘリコプターは存在しません、すると、官僚は間違いを犯さず、の体裁と両立できるような偵察戦闘ヘリコプターは検討されるべきと思うのです。

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【防衛情報】ルクレルクXLR戦車試験と英独EKE戦車用徹甲弾共同開発,イタリアアリエテ戦車緊急後継計画

2023-06-19 20:22:03 | 先端軍事テクノロジー
■■■防衛フォーラム■■■
 今回はこの500日間で評価が一転し急上昇している戦車の話題です。我が国ではとうとう90式戦車の退役が始ってしまいましたが保管しておく選択肢は絶対必要だと思う。

 フランス陸軍はルクレルクXLR主力戦車の試験を実施中です。これはDGAフランス軍備総局がこのほど公開したブルージュでの射撃試験の映像とともに発表されたもので、現在フランス陸軍にて運用されているルクレルク戦車を基に200両を3億3000万ユーロの費用を投じ近代化改修するもので、改修計画そのものは2015年に発表されています。

 ルクレルクXLR主力戦車は既存のルクレルクと比較し、防御力と近接戦闘能力の強化に重点が置かれ、FNハースタル社製7.62mmRWS遠隔操作銃塔の追加、そして車体部分と砲塔正面部分への追加装甲、及びエンジングリルへの鳥籠型追加装甲の追加などが行われています。今回公開の主砲射撃映像は、追加装備品への衝撃波の影響を試験するものです。

 第三世代戦車として開発されたルクレルク主力戦車は、自動装てん装置の採用と1990年代という第三世代戦車では後発の完成から車両間データリンクシステムの標準装備など先進的な設計で知られていますが、輸出型の車両がイエメン内戦介入作戦において戦車輸送車での移動中近距離から攻撃を受けるなど事例があり、その戦訓を反映したものです。
■EKE戦車用徹甲弾■
 戦車砲弾は多目的榴弾の時代から急速に戦車を正面から狙う徹甲弾へと回帰する印象があります。

 イギリスとドイツは新型のEKE戦車用徹甲弾共同開発に向けた準備会合を開きました。これは4月27日、ロンドンにてイギリス国防省のアンディスタート国軍装備監とドイツのカールステンスタウィツキー中将の会合に際し、共同開発覚書を締結したもので、内容として2023年内に両国の戦車砲弾共同開発へ準備会合と協議を継続的に行うと明記された。

 チャレンジャー3主力戦車、既存のチャレンジャー2主力戦車を近代化改修し評価試験中の改良型戦車には伝統的なイギリス軍仕様の120mmライフル砲に代わりNATOや自衛隊の90式戦車などと共通のラインメタル社製主砲が採用されており、これによりNATOでも広く採用されるドイツのレオパルド2主力戦車との弾薬互換性が生まれた構図です。

 EKE戦車用徹甲弾について。過去15年間、欧州各国の戦車砲弾開発は徹甲弾よりも多目的榴弾の開発に重点が置かれ、これは地域紛争において主力戦車脅威よりもバンカーや障害処理と火力支援が重視されたためで、多目的榴弾でも対戦車攻撃が可能である点が特色です、しかしロシアウクライナ戦争を機に対戦車戦闘の重要性が再認識された構図です。
■アリエテ125両の代替■
 欧州の防衛装備品不足が印象的ですがもっと印象的なものはにhンのような定数割れを無視する事無く政治的な問題として正面から受け止めていること。

 イタリア政府は不足する陸軍の戦車125両と装甲戦闘車を緊急調達するべく検討を続けています。イタリア陸軍の主力戦車はC1アリエテ戦車で装甲戦闘車はVCC-80ダルド装甲戦闘車です、しかし老朽化が進むとともに近年は稼働率の問題を抱えており、ここで浮上したのが2022年に勃発したロシアウクライナ戦争における機械化部隊の重要性です。

 イタリア国防省のルチアーノポルトラーノ大将は3月のイタリア議会国防委員会において、イタリア陸軍に必要な戦車は250両であり、アリエテ主力戦車の内可動し近代化が可能であるものは125両に過ぎないため、これらを補う戦車の緊急調達が必要であると証言しました。こうした中で真剣に検討されているのは外国から戦車をリースするというもの。

 リースを求める声は元国防次官のジョルジオミューレ議員など。アリエテ戦車は、M-47戦車やレオパルド1等の外国製戦車に依存した中で初めて開発した第一線級の主力戦車ですが、開発期間が長引き1980年代の設計です。ドイツフランス共同開発のMGCS戦車などに期待を抱きつつも、レオパルド2のリースを求める声も議会に多いようです。
■ウクライナ供与エイブラムス■
 ウクライナへ供与するM-1エイブラムスについて。

 アメリカ陸軍はウクライナへ供与するM-1エイブラムスの準備を急いでいます。この為の選択肢としてアメリカ陸軍では最新型んM-1A2戦車ではなく旧型のM-1A1戦車を陸軍の保有車両からそのまま提供する方針としました。もともとアメリカ陸軍は大量のエイブラムス戦車をオハイオ州のデポで分解保管し、必要に応じ改良し組み立てています。

 ウクライナ政府は第三世代戦車の供与を急ぐよう要請していますが、デポの部品をM-1A2SEP2V3という最新仕様に組み立てるには1年から2年かかるとみられており、これではウクライナ軍が必要とする時期に間に合わないことは明白でした。この為、国防総省はウクライナ当局と検討を重ね、十分強力というM-1A1戦車を供与することとしました。

 エイブラムス戦車供与決定は2023年1月にバイデン大統領自身が発表しています、M-1A1はシステム面でM-1A2ほど複雑ではなくオクラホマ州フォートシル基地においてウクライナ戦車兵教育が開始されることとなっています。アメリカは31両のエイブラムス戦車を当初計画よりも大幅に早い時期に供与を開始することができると準備を急いでいます。

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