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ウクライナ情勢-アメリカのウクライナへのクラスター弾薬供与,CBU-87クラスター爆弾かM-26ロケット弾か

2023-07-12 07:00:19 | 先端軍事テクノロジー
■臨時情報-ウクライナ情勢
 アメリカ政府はウクライナへクラスター弾を供与すると発表しました。実はてっきりMLRS用のクラスター弾薬は提供されていると思っていたのですが今度初めてのもよう。

 クラスター弾薬について。航空機から投下するCBU-87クラスター爆弾などが航空自衛隊でもかつて装備されていましたが、もう一つ、陸上自衛隊が精密誘導型のM-31ロケット弾を導入する以前に運用していたM-26ロケット弾がクラスター弾薬に当たり、また、正式化後即座に廃棄されましたが、03式155mm多目的弾もクラスター弾薬にあたる。

 一発で大量の子弾を散布し広範囲を一気に制圧するクラスター弾薬は、元々冷戦時代にソ連軍戦車軍団による欧州侵攻を通常兵器により食い止めるために導入されたものです。その後、コソボ空爆や湾岸戦争などで不発弾の問題が生じ、特に非戦闘員が拾う、記者が持ち帰り空港で爆発し死傷者が出るなど、非人道的と指摘され、オスロ条約で規制された。

 航空機から投下するものについては、JSOW滑空爆弾のようなものはクラスター弾薬には開発されておらず、基本的に攻撃目標の上空まで戦闘機で運び投下せねばなりません。レーザー誘導装置も搭載は可能なのかもしれませんが、基本的に広範囲を狙い精密さは要求されません。ただ、相手の陣地に地対空ミサイルがあれば、簡単には投下できません。
■M-26ロケット弾
 MLRS用のクラスター弾薬は正直1990年代まで自衛隊はこの弾薬でロシア軍上陸に備えていました。

 アメリカが提供するクラスター弾薬にM-26ロケット弾が含まれているならば、ウクライナ軍の反攻作戦に大きな威力を発揮するのかもしれません、射程は32㎞とGMLRSのM-31ロケット弾ほど大きくはなく、またGPS誘導にも対応していませんが、そもそもGMLRSはクラスター弾ではない故に命中精度を上げざるを得なかったためという背景が。

 鋼鉄の雨、この単語は沖縄戦の“鉄の暴風”を思い起こさせるものですが、鋼鉄の雨、とM-26ロケットを表現したのは湾岸戦争のイラク兵でした。サダムラインというソ連型戦術を取り入れたイラク軍の防衛線を突破する際に運用したのがMLRSから発射されたM-26ロケット弾です。保管期間は25年ですので古いものを供与すればちょうどよい。

 陣地に籠るロシア軍に対してクラスター弾の有用性を疑問視する声があるようですが、地下陣地ではなく塹壕線であれば上記の通りサダムライン突破に成果を上げています。不発弾が残ることは問題ですが、不発弾がウクライナ市民を巻き込む前にロシア軍がウクライナ市民を殺傷している状況こそ問題で、しかもロシア軍もクラスター弾を使うのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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