ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『あさひが丘の大統領』#19

2020-10-24 12:12:23 | 探偵・青春・アクションドラマ










 
第19話『教師の彼女と女生徒の彼氏?!』

(1980.2.27.OA/脚本=大原 豊/監督=馬越彦弥)

今回は珍しく涼子先生(片平なぎさ)が研修中との理由で欠席。お陰でハンソク先生(宮内 淳)がハメを外してハンソクらしさを少し取り戻してくれました。

まず、高校時代のクラスメイトでマドンナだったミーコ(水原ゆう紀)と偶然再会したハンソクは、ラグビー部の練習をほったらかして連日デートを重ね、このまま行けば確実にチョメチョメしそうな雰囲気になります。

一方、カレシが出来なくて性欲を持て余した長尾(藤谷美和子)たち女子テニス部の仲良しグループは、なんとか男子にハント(当時はまだナンパとは言いませんでした)されようと懸命にアピールするんだけど、誰も食いついてくれません。

で、仕方ないからハンソクにほったらかしにされた水野(井上純一)たちと遊ぶことになるんだけど、諦めきれない長尾だけ1人で町をうろつき、ハント待ちすることに。

そうして出逢ったのが予備校生の塚田(湯沢紀保)。はっきり言って野暮ったい(ダサいって形容詞もまだ無かった)ヤツなんだけど、長尾に一目惚れした塚田は彼女の言うことなら何でも聞いてくれそうです。

そこで長尾はクラスメイトたちにミエを張るため塚田を利用し、カレシを演じさせた挙げ句に用が済んだらポイ捨てしちゃうという、なかなかの小悪魔ぶりを発揮するのでした。

時を同じくして、ハンソク先生とチョメチョメ(チョメチョメって言葉もまだ無かったですよね。山城新伍さんしか使わないけどw)まであと一歩というところで、ミーコが本性を表します。

ハンソクは高校時代、親友の杉山とミーコを取り合い、まっすぐな彼の熱意に負けて身を引いたという経緯がありました。なのに2人は別れてしまった。その理由を問うハンソクに、ミーコはこう答えます。

「どうしてって、つまんない人だってことが分かったからよ」

出た! 出ました、これですよ! 私が初めて世の中の破滅を予感し絶望した、価値観の大転換! 修学旅行のバスガイドさんが「理想のタイプは?」の質問に「明石家さんまさん」と答えた時の、あの衝撃!w

つまり、マジメな男は刺激がなくて退屈なワケです。じゃあオレは一体、なんの為にそれまでマジメに生きて来たんだ?! チョメチョメする為に決まってるでしょうが! チョメチョメチョメチョメ! チョメチョメチョメチョメ!

ミーコは、そんな杉山と自分は釣り合わないと思ったワケです。

「私には、それだけの価値があると思ってるわ。ハンソクは今でも私のこと忘れられないでいるんでしょ? 今の私だったら、落ちるかも知れないわよ?」

当然、鼻の下ともみあげを極限まで伸ばして食いついて来るかと思いきや、ミーコを見返すハンソクの眼は冷ややかでした。

「あいつは……杉山はな、本当にミーコを愛してたんだ。真剣にミーコが好きだったんだ。オレは、あいつの熱意に負けて……それなのに……」

「ハンソク?」

「オレは嫌いなんだよ! 人生をバカにするようなヤツが……一番嫌いなんだっ!!」

結局チョメチョメは未遂に終わり、ストレスをMAXまで溜めながら帰路についたハンソク先生は、河原で異様な光景を眼にします。見るからにダサい青年が、川に浸かりながらダサい歌を唄い踊り、それを水野はじめ我が校の生徒たちが高みの見物して笑ってる!

実は長尾を諦めきれない塚田が「キミの為だったら何でもする!」なんて言うもんで、またもや小悪魔ぶりを発揮した長尾が「じゃあ、あの川で踊ってみて」と命令したのでした。

それで塚田が踊りながら唄った曲が『ソーラン節』に『鉄腕アトムの唄』『高校三年生』と来たもんだから、あまりにダサすぎて笑われてるワケです。現在なら逆にクールな選曲かも知れませんw

何故そんなことをさせたのか、ハンソクに問われた長尾はこう答えます。

「彼がバカだから。グズだから。私にチョッカイ出す資格なんか無いもの」

「馬鹿野郎っ!」

出ました、ハンソク先生の必殺もみあげビンタ! 女子生徒が相手でも容赦なし! しかも自分がチョメチョメし損ねたことの八つ当たり! それでこそハンソク先生です!w

「お前、アイツを何だと思ってるんだ?! 男を何だと思ってるんだ?!」

「ハンソクなんか何よ……ハンソクなんか何よ! バカァ!!」

たぶん長尾だって、塚田をイジメたくてあんな事させたワケじゃない。ハンソクは、つい手を上げてしまったことを後悔します。あれ? そんなのハンソク先生じゃない!w

ところが! 反省した長尾が謝ろうと思って塚田のアパートを訪ねたら、故郷の両親に宛てた遺書を残して行方不明になってたから驚いた!

それを聞いたハンソクは、長尾と一緒に徹夜で町じゅうを走り回り、彼を探します。いい先生です。こんな時、みんなが走り回っても自分だけ「そんな簡単に死ぬもんか」なんて言ってメシを食らってた、以前のハンソクとはやっぱ別人ですw

「私、考えようとしなかった……あの人、こんなに私のこと想ってくれてたなんて……少しも考えようとしなかった」

長尾はそう言って、ハンソクの胸を借りて泣きじゃくります。若い時ってそうですよね。自分が痛い想いをしないと、相手の痛みはなかなか理解できない。

幸い、塚田は死ぬのを思いとどまってくれました。一晩中いろいろ考えて、受験に対して真剣に向き合ってなかった自分に気づいた彼は、故郷に帰って出直す決意をしたのでした。

「でもね、長尾さん。ぼく、キミと知り合えてとても良かったと思うんだ」

電話でそう言った塚田は、これから故郷へと旅立つ電車に乗ろうとしてました。長尾は(またもやハンソクに付き添われて!)駅へと懸命に走りますが、間に合わず。だけど構内の伝言板(今はそういうの無いですよね)に「ありがとう」っていう塚田からのメッセージを見つけて、すっかりいい人になったハンソク先生と二人、ほっこりします。

「先生、私……私……」

「なんにも言うな、長尾。なんにも言うな」

やっぱり『太陽にほえろ!』の裕次郎さんみたいなハンソク先生ですw

そんなハンソクにも、野口先生(秋野太作)を介してミーコから「ごめんなさい」とだけ書かれた手紙が届きました。

ミーコは、野口先生に「素直に会えるようになったら、会いに来ると伝えて下さい」とハンソクへの伝言を残したそうです。つまり、あの時は素直じゃなかった。本当は偶然なんかじゃなく、最初からハンソクに逢いたくてあさひが丘に来たのかも知れません。杉山と別れた理由を「つまんない人だから」と言ったのも本心じゃなかったのかも?

ラストシーンは、黒板にハンソク先生をからかう落書きをした水野や長尾たちが、ハンソクに追われて教室から砂浜へと逃げていく定番のシチュエーション。ハンソクがミーコを叱ったのも砂浜、長尾がハンソクの胸で泣いたのも砂浜。何かと言うとすぐ砂浜に行くw

それはともかくとして、長尾たち女子グループが道行く男子たちを眺めながら、それぞれに点数をつけて値踏みする場面からスタートしたこのエピソード。女性の持つシビアさや残酷さと、男という生きものの哀れさが、なにげにリアルによく描かれてたと思います。

ハンソク先生のキャラが途中でブレてるように感じたのは、彼のイメージアップ・キャンペーン(翌週には宮内淳さんが唄う挿入歌『青春の旗をふれ』も公開!)がそうさせたのは勿論のこと、今回は涼子先生が不在であるがゆえ、いつもよりハメを外せたのと同時に、ふだん彼女がやってくれてる生徒たちへのフォローも一手に引き受けざるを得なかったから、なのかも知れません。

青春ドラマって、つい半笑いでツッコミどころを探しながら見ちゃいがちだけど、こうして分析すると深いし、一筋縄じゃいかないですよね。刑事ドラマみたいにハッキリ解決しないし、理屈じゃ割り切れない不条理さがある。

だからこそ面白いし、レビューし甲斐があります。
 

コメント (5)
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