ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『エコール』

2020-10-20 00:00:09 | 外国映画










 
自分以外の人が好きな映画も観てみようシリーズ第3弾。本国では2004年、日本では2006年に公開された、ルシール・アザリロヴィック監督によるベルギー&フランスの合作映画。ポパイ誌で辛酸なめ子さんが紹介されてました。

原作はフランク・ヴェデキントの小説『ミネハハ』で、映画の原題は『イノセンス』。純粋無垢って意味でまさにピッタリなタイトルだけど、我が日本じゃ押井守監督が同じタイトルのアニメ映画を公開しちゃったもんで『エコール』、フランス語で学校を意味する単語に変更されたそうです。

内容はシンプルと言えば非常にシンプル。深い森の中にある謎の施設に送り込まれた幼い少女たちが、外界との接触がいっさい遮断された環境の中で教育を受け、やがて成長して初潮を迎えると卒業し、また何処かへと送り出される。

その顛末が下級生のイリス(ゾエ・オークレール)、中級生のアリス(リア・ブライダロリ)、上級生のビアンカ(ベランジェール・オーブルージュ)の眼を通して淡々と描かれていきます。

BGMがいっさい入らず、本当に静かに淡々と進んでいくので、鑑賞前によく睡眠を取っておくことが必須ですw 私は寝不足だった上に鼻炎の薬を飲んじゃったもんで、途中で何回DVDを巻き戻したか数えきれませんw

それはともかく、内容はシンプルって書きましたけど、その学園が何処にあるのか、いったい何を目的とした施設なのか、彼女たちが何故そこに送り込まれ、卒業した後どうなるのか、台詞ではいっさい語られませんから、とにかく睡魔と闘いながら映像をくまなく観ていかないと「なんのこっちゃ?」で終わっちゃいます。

どうやら彼女たちは商品として、純粋無垢なまま男性客(とは限らないかも?)に売ることを目的に、大切に育てられてる。ちゃんと観ればそれ位は誰でも解ると思うんだけど、そんな少女たちの姿を通して作者は何を我々に伝えたいのか、何を訴えたいのか、私にはサッパリ解りませんでした。久々に解らんものを観たぞ!って、妙に嬉しくなったりもしましたw

単なるロリコン趣味かと思いきや、監督は女性なんですよね。ロリコンだと逆にここまであっけらかんと幼女のヌードは撮れないだろうと思います。(ブログ事務局の横やりが入らないよう画像は撮ってないけど、そういう趣味の人が見たらウハウハしそうな場面が満載です)

とにかく純粋無垢なものは眩しいほどに美しいですから、それを映像に収める事こそが目的だったのかも知れません。

あと、これは他のレビュアーさんからの受け売りですが、どれだけ時代が進もうが、女性は結局「オンナ」を磨いてないと世間に認めてもらえず、永遠に「性」の問題からは逃れられない。その現実を皮肉った作品とも考えられます。

ラストシーン、学園きっての美少女であるビアンカが無事に卒業し、たぶん物心ついてから初めて、外の世界へと連れ出されます。

で、ビアンカはすでに初潮を迎えた「オンナ」なんだけど、内面はイノセンスなままだから、人で賑わう公園で平然と下着姿になって噴水と戯れたりする。そこで如何にも遊び人風の青年がニヤニヤしながら近づいて来るんだけど、彼女は全く警戒しないで一緒に水遊びを始めちゃう。

その瞬間、噴水がブワーッと沸き上がって映画は幕を下ろします。これは何かを象徴してるんだろうな、ぐらいは私も思ったけど、この時はまだ作品のテーマが理解出来てなかったもんで「おおっ、久々に解らんものを観た!」ってw、完全に煙に巻かれた状態でした。

で、あとから辛酸なめ子さんの記事を読み返したら「あれは射精のメタファーなのかも?」みたいに書かれてて、ああ、そりゃそうだよね!とw すんなり腑に落ちた次第です。

それをハッピーエンドと捉えるかバッドエンドと捉えるかは、観る人の価値観しだいですよね。というか性別、あるいは年齢しだいかも知れません。

学園の場面において、イノセンスな女の子たちを陰から眺めてる、年老いた女性たちの姿が何度か見られました。脱走を謀ると卒業出来なくなっちゃうルールがあり、たぶん彼女たちはその成れの果て。彼女たちから見ればあの噴水シーンは、サナギが美しい蝶に孵化する瞬間で最高のハッピーエンドじゃないでしょうか?

だけど男にはどうしてもイノセンスなものを崇拝しちゃう性質がありますから、あんな俗っぽい野郎にビアンカが「汚されちゃう」かと思うと穏やかじゃいられません。私にとっては究極のバッドエンドですw

汚す側である男がそんな風に思うのは矛盾も甚だしいし、そもそも「汚す」ってなんだ? セックスする女性は汚いとでも言うのか?って、視点を変えれば色んな疑問が沸いて来ます。それこそが作者の意図なのかも知れません。

つまりこれは、一見すごく特殊な世界を描いた映画みたいに見えて、実は「女性の価値とは何ぞや?」を世間に問う、すこぶる普遍的な作品と言えそうです。でなければ、女性がこんな映画を撮ろうとは思わないでしょうから。

ってことは、観終わった瞬間に「なんのこっちゃ?」ってなるのは当然の反応で、問いを投げかけられたワケだから、我々はそこからよく考え、自分で答えを出さなきゃいけない。私に理解力が無かったワケじゃないんです。そういう事にしといて下さいw
 

コメント
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