ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『ミスエデュケーション』

2020-10-13 00:00:07 | 外国映画










 
クロエ・グレース・モレッツ2連発です。こちらは2018年に公開されたアメリカ&イギリスの合作映画で、デジレー・アカヴァン監督作品。サンダンス映画祭のドラマ部門でグランプリを獲得しながら日本ではなぜか未公開(DVDスルー)になってます。

舞台は1993年のアメリカ郊外。プロムの夜に同性の恋人と車内でレズプレイに励んでた女子高生のキャメロン(クロエちゃん)が、その現場を目撃されてしまい、「神の約束」という名の治療施設に送り込まれ、ちゃんと異性とチョメチョメ出来るよう矯正されちゃうというお話。

2020年の今となってはやや現実味に欠けるんだけど、'90年代の価値観はまだこんなもんだったかも知れません。いや、宗教色の強い場所じゃ今でもぜんぜん変わってないかも?

ともかくその「神の約束」で施される矯正カリキュラムが、吾妻ひでおさんのドキュメント漫画『失踪日記2/アル中病棟』で描かれた精神病院におけるアルコール依存症の治療とよく似てるもんで、ちょっと笑っちゃいましたw

つまり同性愛は病気であり間違いであり、罪悪なんだっていう価値観が大前提にされちゃってる。もちろん、タイトルの『ミスエデュケーション』は「間違った教育」って意味ですから、これはそれを批判する、あるいは皮肉るために創られた映画なんでしょう。

当然、同性愛は病気じゃないですから矯正出来るようなもんじゃなく、キャメロンは危うく洗脳されそうになりながらも必死に抵抗し、最後には絆を築いた仲間2人と一緒に脱走しちゃいます。

だけど家に帰ったところで周りの人たちの価値観は変わってない筈で、3人の表情は決して晴れやかじゃない。マイク・ニコルズ監督の『卒業』を彷彿させるラストシーンでした。

問題は何ひとつ解決してないワケで、スカッとはしないし泣けもしない。そのへんに日本公開が見送られた理由があるんでしょう。映画やドラマを「泣けなかったから」とか、ひどいヤツは「どんでん返しが無いから」なんて理由で「つまんない」と決めつけちゃう観客たちが、実は日本の映画興行を支えてたりしますからね。破滅です。

まあ、そんなこと言ってる私自身も、90分弱という尺の短さもあって「えっ、これで終わり?」って拍子抜けしたことを白状しなくちゃいけません。だって、成長したクロエちゃんのエロエロな姿をもっと観たかったですから。

回想シーンや妄想シーンも含めてクロエちゃんのレズプレイが随所で見られるんだけど、まあ当然ながらもっぱらキスが中心のソフトな描写。と言ってもトップクラスの売れっ子女優としてはかなりのもんで、日本のメジャー女優さんたちもせめてこれくらいは頑張って頂きたいもんです。

私がいちばん心を動かされたのは、もうすっかり洗脳されてるように見えた優等生の女の子が、ふいに我慢できなくなってキャメロンとチョメチョメしかけるも、やっぱり怖くなって途中でやめちゃう場面。すごく人間的だと思うし、その施設がやってることの愚かさをヒシヒシ感じさせられる名シーンでした。

あと、施設側の人たちが単純な悪役として描かれず、その奥底に迷いや恐れがちゃんと感じられるのも良かった。ああやって何かを盲信しないと生きていけない彼ら彼女らの方が、実はよっぽど内面は脆いんだろうと思います。

だから、決してハッピーエンドとは言えなくとも、自分の意志を貫いた3人はきっと逆境にめげず、これからも力強く生きていく事でしょう。そう思えるから後味は良かったです。
 

コメント
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