ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『こちら本池上署』2―#11

2019-12-27 00:00:21 | 刑事ドラマ2000年~









 
ようやく「刑事ドラマHISTORY」から一旦解放されたのも束の間、前回記事に高嶋政伸さんが登場されたこの機会に、HISTORYから洩れた本作もフォローしておく事にしました。

2002年夏に第1シーズン全11話が放映され、さらに2003年春に第2シーズン全15話、2004年冬に第3シーズン全11話、2004年秋に第4シーズン全11話、2005年夏に第5シーズン全14話が、TBS系列の月曜夜8時「ナショナル劇場(後のパナソニックドラマシアター、月曜ミステリーシアター)」枠で放映された、TBS&テレパック制作による人情系の警察ドラマ。

たかもちげん作&やぶうちゆうき画による人気コミック『警察署長』を原案とした作品で、今回レビューするのは第2シリーズの第11話、2003年6月23日に放映されたエピソード(脚本=櫻井武晴、演出=大久保智己)です。

主人公は東大法学部卒のキャリアで東京・本池上警察署の署長を務める警視正=椎名啓介(高嶋政伸)なんだけど、なにしろ署長という立場なもんで現場に出向く機会は少なく、刑事課や生活安全課、交通課などの捜査を陰でバックアップし、署員たちの成長を見守る人格者として設定されており、現在の怪獣みたいな高嶋政伸さんと同一人物とはとても思えませんw(1枚目の画像と前回記事5枚目の画像を比べてみて下さいw)

で、今回は刑事二課の若手刑事=相馬(池内万作)が「警視総監賞」目当てに手柄を焦る姿を見た椎名署長が、あえて点数を稼ぎにくい交通課の応援に彼を回します。

相馬が人一倍出世を望むのは、警察がふだん町の人々から疎まれがちで、捜査になかなか協力してもらえない現状を憂い、その原因が「警察の権威がすっかり地に堕ちたから」と考えるから。自分が出世してそれを取り戻したいってワケです。

そんな彼の本音を捜査二課の係長=堂上警部補(水野真紀)から聞かされた椎名署長は、微笑みを浮かべながらこう言います。

「市民から尊敬されるのに、権威が必要なんでしょうか?」

権威に取り憑かれたモンスターみたいな役ばかり演じてる、現在の高嶋さんしか知らない若い人は信じられないでしょうけど、当時は高嶋政伸と言えば「ミスター綺麗事」と呼びたくなるくらい綺麗事しか言わないキャラが鉄板で、しかもそれがよくハマってました。

「今の警察は、権威を守ろうとするあまり、もっと大切なものを見失ってるのかも知れません」

その純白すぎるマインドを、高嶋さんは一体どこで見失ったんでしょう?w

一方、署の検挙率アップに余念がない副署長の青柳警視(橋爪 功)は、「売り売りて 手垢きたなきドイツ語の 辞書のみ残る夏の末かな」という石川啄木の格言(生活に困って本を売り歩いても、勉強したさに辞書は手放したくないという意味)を引用し、相馬の健闘を称えます。

だけど相馬本人は、たとえ検挙しても大した手柄にならない轢き逃げ事件を担当させられ、モチベーションを失いかけてるのでした。

そんな相馬に、轢き逃げ被害者の妹(紺野あさ美)が取って置きの手がかりをこっそり教えてくれます。

その場にベテランの篠田主任(佐藤B作)や本庁のキャリアたちもいたのに、なぜ一番ぺ―ぺ―の俺に?と疑問をぶつける相馬に、彼女はさらりとこう答えます。

「そんなの私たちに関係ないですよ、いちいち刑事さんの肩書きとか考えないし」

「だけど最初に会った時、署長の名前出したらキミたち、すぐに協力してくれて……」

そう、相馬が本気で出世を目指すようになったのは、椎名署長が「署長」であるがゆえに町の人々から尊敬されてる、と思い込んだからなのでした。

「あの署長さんは毎朝ここらへんをジョギングしてて、その度に私にも声かけてくれて、顔馴染みですから」

「顔馴染み?」

「相馬さんだってそうですよ。たくさんの刑事さんが病院に来たけど、お花持って来てくれたのは相馬さんだけだったよ」

実はその花束も、自分は捜査に行くのであって見舞いに行くワケじゃないと言って渋る相馬に、椎名署長が無理やり持たせたものでした。さすがミスター綺麗事!

市民の協力を得るのに必要なのは権威じゃない、信頼なんだ!と気づいた相馬は、それで得た手がかりから見事に轢き逃げ犯を割り出し、逮捕します。そしたら、そいつが捜査二課で追ってた連続車上荒し犯と同一人物だったことが判って大手柄! 実はそれを密かに予想した上で、相馬を交通課の応援に回した椎名署長が綺麗事すぎますw

かくして相馬刑事は念願の「警視総監賞」を貰えることになったんだけど、彼は「それ、自分が貰わなきゃダメですか?」なんて綺麗事を言い出し、捜査に協力してくれた被害者姉妹に賞を譲ることを志願するのでした。

「やっと分かったんです。市民の協力が無ければ、警察は何も出来ないって。だからこそ俺たち警察官は、市民に信頼される必要があったんだって」

確かにその通りなんだけど、彼は椎名署長がやがてミスター綺麗事を卒業し、怪獣化してしまう未来をまだ知りませんw

これは私がふだん敬遠しがちな人情系のドラマだけど、理想の上司像や若手刑事の成長をてらうことなく誠実に描いた内容には『太陽にほえろ!』と通じるものが感じられ、観てて心地好いです。

演技が上手いのか下手なのかよく分かんない当時若手の池内万作さんを、芸達者な先輩たち、特に今回バディを務めた佐藤B作さんが味わい深い演技で見事にカバーされてる構図も『太陽~』を彷彿させ、私はグッと来ました。

セクシーショットは、相馬刑事に想いを寄せるがゆえ、今回は大いに気を揉まされる刑事一課の婦警=新藤敦子に扮した、知念里奈さん。沖縄出身の人気歌手で、この時期から女優業に力を注がれ、舞台を中心に現在も活躍されてます。

ほか、刑事課と生活安全課の課長を兼任する前島警視にベンガル、刑事一課の関川主任に田口浩正、一課の若手刑事=水木に金子 賢、生活安全課の堀内係長にもたいまさこ、少年係の中井婦警に野波麻帆、本部長の小山田警視正に西岡徳馬、そして椎名署長の義母=敏江に星由里子、長女の由美に加護亜依、といったレギュラーキャスト陣。

今回のゲスト=紺野あさ美さんは加護亜依さんと「モーニング娘。」繋がりで、他にも中澤裕子さん、高橋愛さんらハロー!プロジェクトのメンバーがセミレギュラーやゲストでシリーズに参加されてます。
 
コメント (2)
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