ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『ボイス/110緊急指令室』2019

2019-12-20 00:00:13 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2019年の夏シーズン、日本テレビ系列の土曜夜10時「土曜ドラマ」枠で全10話が放映された、日テレ&AX-ON制作によるサスペンスドラマ。

日韓関係が史上最悪にまで冷え込んでたこの時期に、テレ朝の『サイン/法医学者 柚木貴志の事件』もフジの『TWO WEEKS』も、そして本作もなんと韓国ドラマのリメイクなんだそうです。

このご時世、決して安くはないであろう著作権料を韓国に支払い、韓国のマネをした作品が、同シーズンに3本……

そんなにネタに困ってんの?って思うし、プライドは微塵も無いんかい?とも思うけど、すでに(海外でヒットした等の)実績がある企画にしかお金を出さない、器の小さいスポンサーたちが恐らく元凶なんでしょう。

殺人鬼(伊勢谷友介)に追い詰められた女性(菊池桃子)が110番に救いを求めるも、オペレーターの対応ミスにより救出が遅れ、惨殺されてしまう。

そのとき電話で対応した緊急指令室員の一人・橘ひかり(真木よう子)は、二度と同じ過ちを繰り返さない為に科捜研で修行を積み、三年後、精鋭たちを集めて新たな緊急指令室「ECU (Emergency Call Unit)」を立ち上げます。

その一員にして緊急出動班の班長に選ばれたのが、神奈川県警港東署で「ハマの狂犬」と呼ばれた暴力刑事=樋口彰吾(唐沢寿明)。彼は三年前の事件で殺された桃子さんの夫であり、それが原因でやさぐれ刑事に変貌し、ひかりのことも恨んでるんだけど、助けを求める人を二度と見殺しにしたくない気持ちは彼女と同じ。

かくして緊急指令のスペシャリストと狂犬刑事が無線越しにタッグを組み、次から次と現れる(とても日本とは思えないような)凶悪暴行魔たちから弱者を救いつつ、三年前の事件の真相に迫っていきます。

こういう設定は好きだし、一分一秒を争うサスペンスの緊迫感、そして東映アクションクラブ出身の唐沢寿明さんが水を得た魚のように生き生き演じる格闘アクション等、見どころは満載。定番シリーズの『刑事7人 season5』を除けば本シーズン唯一の純然たる刑事モノだし、私にとって間違いなく最注目の作品になる筈、だったのですが……

いきなり初回の冒頭、殺人鬼に追い詰められ、必死に命乞いしながら惨殺される菊池桃子さんを、これでもかと執拗に見せてくる陰湿極まりない脚本と演出に、私は早くも辟易してしまいました。

確かに、主人公となる二人が「ECU」を立ち上げ、その仕事に人生を賭けるキッカケとなる重要な場面ではあるんだけど、あんなにしつこく、そして生々しく描く必要性は全く無い、と私は思うワケです。

恐怖で泣き叫ぶ桃子さんの姿も、そんな彼女を楽しそうに殴りまくる犯人の姿も、あんなに時間をかけて見せる必要は無い!

ここは日本だからとか、ゴールデンタイムのテレビ番組だからとか、そんなことは関係ありません。劇場映画だろうがネット配信だろうが、そんな不快な場面を延々と見せたがる創り手の精神構造こそが異常であり、そんなガイキチが創るドラマなんか観たくもない!って、私は思うワケです。

別にあんなしつこく見せなくたって、しかもご丁寧に骨が砕ける音や血肉が飛び散る音まで鮮明に聴かせなくたって、我々は被害者の恐怖と無念を充分に想像できる。それを救えなかった主人公たちの心情だって、容易に想像できるし共感しますよ、普通の人間なら!(こういう場面こそ、お得意の説明台詞で片付けて欲しかった)

必要のない描写にことさら力を入れ、必要以上の時間を割いて見せるのは、創り手の悪趣味以外の何物でもなく、言わば映像を使った暴力でありハラスメントです。

あんな場面を延々と見せられて喜ぶのはごく一部のマニアか、でなければ同じようなことをいつかしでかす犯罪予備軍だけで、これがそいつの導火線に火を点けたら、あんたらどうやって責任取るつもりやねん!?って話です。

私はいつも「刑事ドラマは悪党をぶん殴ってナンボ」「悪党は迷わずぶっ殺せ!」って言ってますけど、いま問題にしてるのはあくまで描写の仕方であって、やられるのが善人であるか悪人であるかは関係ありません。

第2話で唐沢さんが悪党を殴りまくる場面でも、やっぱり私は「しつこい!」って思いました。パンチ5発ぐらいならカタルシスを感じるけど、それが10発、15発と続いたら逆に気持ち悪くなっちゃう。いくら妻を殺した犯人への憎しみが反映されてるとは言え、そこまでやっちゃうと主人公がただのガイキチにしか見えなくて共感出来なくなっちゃう。

それより何より、このドラマを創ってる人たちを信頼出来なくなるワケです。あんたら、一般的な視聴者の生理がまるで想像出来ない人達なの?って。もし分かっててやってるなら、いったい誰に向けて作品を創ってんの?って。

原典の韓国ドラマがそうだから、その通りにやらなきゃいけないとでも思ってるんでしょうか? もしそうなら、つまり日本人に合わせたアレンジを一切する気が無いのなら、韓国ドラマをそのまま放映しときゃええやろ!って話です。

韓国ドラマは、やっぱり設定や描写の1つ1つがいちいち過剰なんです、日本人である私の眼から見ると。

真木よう子さん演じるひかりの父親が警察官で、三年前に桃子さんが殺された直後、たまたまパトロールで現場を通りかかって犯人を追跡し、やっぱり殺されちゃったことが第2話で明かされるんだけど、それを観て私は「犯人の野郎、ますます許せない!」とも「ひかり、なおさら頑張れ!」とも全く思わないで、ただ「偶然にも程があるやろ!」「ECUを立ち上げたのは桃子さんを見殺しにしたミスを繰り返したくないからなのか、父親の仇を討ちたいからなのか、どっちやねん!?」って、せっかく初回で共感した気持ちがすっかり萎えちゃいました。

桃子さんが殺された瞬間も、父親が殺された瞬間も、ひかりはその声を電話越しに聴いてたワケだけど、どっちも真木よう子さんが全く同じ芝居をしてるもんだから、その芸の無さと、演出の工夫の無さにも呆れちゃいました。(よう子さん、滑舌悪すぎるし)

同じ犯人に同じ現場で、ヒロインの父親まで殺されちゃう必要性って、あります? 彼女を恨んでた唐沢さんが、実は彼女も自分と同じ被害者遺族だったことを知り、それがタッグを組む決め手になるワケだけど、いやいや、ヒロインは被害者が身内であろうが無かろうが関係なく「二度と犠牲者を出さない」使命感だけで動くべきだし、唐沢さんもそんな彼女の心意気に共鳴してタッグを組むべきで、遺族どうしの繋がりなんか加えたら焦点がボケてしまうやろ!って、私は思いました。

その場だけの都合、その場だけのインパクトしか考えない、いかにも頭の悪い脚本で、日本のスタッフはそういう無駄は全てカットすべきだったし、もし万一これが日本スタッフによって加えられたアレンジなんだとしたら、いくら理不尽に韓国人から嫌われても我々日本人はもう文句が言えないですよ。とんだ赤っ恥です。

ちょっと前の連ドラ『トレース/科捜研の男』で見られた陰湿さ、残虐さにも異様なものがあり、やっぱり無駄な描写ばかりが眼につきました。あれは日本の漫画が原作でしたよね? 最近ほんとヤバくないですか、日本のクリエイター? エロにはうるさいクセにこういうのを野放しにする放送コードもおかしいし、もし大衆が平気だったり喜んでたりするんだとしたら、いよいよ本格的に、破滅です。

そんなワケで、せっかくの刑事モノ、せっかくのアクションドラマなのに、純粋に楽しめないのが非常に残念です。結局、無難に謎解きゲームでお茶を濁しとくのが得策なんでしょうか? 破滅です。

港東署強行犯係の刑事に木村祐一、増田貴久、ECUメンバーに安井順平、石橋菜津美、田村健太郎、署長に小市漫太郎、居酒屋店主にYOU、といったレギュラーキャスト陣でした。
 
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