害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

カメカメ波

2013-11-04 23:50:29 | 自然観察
Photo
 
日だまりになった家の壁に、ぽつぽつとマルカメムシとかクサギカメムシがとまっているのをみかけるコトが多くなった。冬ごもりにいそしむムシの姿は、深まる秋の風情といえなくもないが、カメムシの臭気のことを思うと少々憂鬱な光景だ。
 
 
カメムシ臭にはオヤジ臭と共通成分があるといっても、私はカメムシの集団に加わりたくはないし、一つ屋根の下で仲良く越冬したくもない。
 
 
日中盛んに飛来する成虫は、建物にたどり着くと暗い隙間に潜りこもうとする。このため食品工場などでは、カメムシ類が異物混入の原因になることさえある。
 
 
仕事上でも、異物として問題になったヒメナガカメムシの一種(Nysius sp.)と、何度か出くわしたことがある。
 
ヒメナガカメムシ属 Nysius は、市街地の草むらなどでも普通にいて、場所によっては個体数がずいぶん多いけれど、種までの分類となると私にはムリ。
 
 
それでも、今じゃ日本原色カメムシ図鑑第3巻(2012)のおかげで、どういうポイントで見分けたらいいのか分かるようになった。ありがたいことだ。
 
 
 
先日、食品工場(兵庫県豊岡市)の換気扇防塵ネットに付着していた個体は、体長3.5mmで前翅革質部前縁が淡色なので、ヒメナガカメムシ Nysius plebeius だろうと思う。
 
Nysius_sp01


3巻でちょっと気になったのが、plebeius がミッドウェーにも分布するって記述のあたりだけど、Ashlock(1963)の palorの記載とか、その後のNishida & Beardsley(2002)によるミッドウェーの昆虫リストなどをみると、plebeiusの分布については否定的なカンジだ。
Wikipediaによると、Nysius属は世界に約106種いて、その約4分の1にあたる26種がハワイ諸島に生息しているらしい。
特にスゴイと思う種は、ハワイ島の標高4000mを越える溶岩のガレ場にいる2種のNysius(無翅種)、英名はwekiu bug(テッペンカメムシと訳したい)。
休火山のマウナ・ケアには N. wekiuicola がいて、生命の存在を許さないような活火山のマウナ・ ロアでも N. aa(あーあーと読むみたい)が近年発見された。
ハネのないヒメナガカメムシが、草も生えないガレ場でナニを食べてるのかというと、上昇気流とともに運ばれてきて力尽きた昆虫類を主な食物にしているそうだ。日本産の同属の種は、イネ科雑草の種子から吸汁してる姿しか知らないから意外。

マウナ・ケア山頂は、カッコエー天文観測施設が建ち並んでたり、観光地化が著しくて生息環境はヤバイらしい。最近は、追い打ちをかけるように移入種のゴミムシが2種入りこんでるという研究もあり、将来どんな昆虫相になるのやらって心配されている。

日食とかになると、テレビに国立天文台ハワイ観測所が映るけど、背景の岩陰にいるようなチビこいカメムシに思いを馳せる視聴者はいないだろう。
でも、日本が作った科学発展のための建物が、貴重な生物にどんな影響を与えることになったのかってコトは、多少なりとも関心を持つべきかも知れない。

2 コメント

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先日はお返事ありがとうございました。 (ユジン)
2013-11-07 23:05:01
先日はお返事ありがとうございました。

教えて頂いた通りハモリダニでした。
クロアリさん、すご過ぎます??
夏の間植えていたキュウリのお客だったのでしょうか。
なにはともあれ、害虫じゃなくて良かったです。潰して可哀想なことをしました(三男がヨチヨチ歩きなので用心のため)。

カメムシ、大発生ですね。
息子達と「カメムシ祭りだね」と毎日言っています。昆虫館で色々な種類のカメムシを見ましたが、金色の綺麗なのや、ユーモラスな人面カメムシなどは見ていて楽しいですね。
臭いは…やはり遠慮したいですね。

クロアリさんの記事でカメムシの生態がわかって面白かったです。
お詳しくてすごいです!
また楽しみにしています。
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カメムシ研究者ともなると、ニオイですらえもいわ... (クロアリ)
2013-11-08 00:31:06
カメムシ研究者ともなると、ニオイですらえもいわれぬ魅力の一つだそうで・・・。

ワタシなんかまだまだです。

当ブログは読者無視でキモ画像貼りますがご愛顧下さいませ。
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