とらまえたムシを、なんとなく手近な容器に入れて眺めるのは面白い。
観察といえば聞こえはよいが、私の場合は記録をとったりすることはほとんどない。
むしろ採集品を幽閉したまま忘れていることが多い。
何かの拍子に突然思い出して容器内のムシをみると、無数の蠢く粉のようなダニに覆われた死骸になっていることがある。戦慄の惨景に目の焦点をあわせないように苦労しつつ、あわてて観察対象を廃棄してしまうというバチアタリを今までに何度繰り返したことだろう。
ダニについて調べるようになったこの頃は、そういったことを少しばかり後悔しつつ思い出す。
捨てていた粉のようなダニのなかには、コナダニ類がかなり混じっていたと思うからだ。
コナダニ団に含まれる種は、カラダ全体がのっぺりしてて柔らかいのが多いってあたりが好きになれなかったけど、わずかながらでも分類できるようになるにつれ、愛くるしいヤツラだと思えるようになった。
お気に入りの種類の一つは、太っちょなムシクイコナダニの一種 Thyreophagus sp. だ。体幅に対して半分以下の長さしかない第III脚と第IV脚。これで歩き回れるってところが驚異。
この脚の特徴などから Thyreophagus berlesianus Zachvatkin, 1941
だろうと思うのだけれど、オスやヒポプスを観察できていないため、詳細な同定は保留中。スゴイ和名だけれど、別に生きた昆虫をなんかするってことはなさそう。とてもよくカビを食べる。仰向けにひっくり返してやると、いつまでも脚をバタつかせて永久にもとに戻れない感じなのに、翌日にはいつの間にやら起き上がっていたりする特技を持つ。