害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

殺虫剤はいつも悪者

2008-02-15 13:10:45 | 日記・エッセイ・コラム

中国製冷凍食品の殺虫剤混入問題が、新聞で連日取り上げられている。国内で殺虫剤が付着した事例も出てきて、かわいそうなことに大手の害虫管理会社が、悪者にされているようだ。ウチような小さな害虫屋にも、電話がかかってくる。「お宅でも使ってる?メタミドホスとかジクロなんとかとか?」
「メタミドホスはみたこともないですが、ジクロルボスは日本の害虫駆除業界では、かなり普通に使用されてますよ。」と返事をしている。ジクロルボスという薬剤は恐ろしい面もあるが、虫が嫌いなヒトを安心させるためには便利な薬剤なのである。

よく言われることだが、安全な薬剤は存在しない。ただ安全とおもわれる使用方法があるだけである。

なんだか急に関心が高まっているジクロルボスは、年間何トン程度使用されているかなんて調べたことがないが、大量に消費されていることは間違いない。特にプレート剤(樹脂蒸散剤)は普通に使用されていて、身の回りをみても、浄化槽や汚水槽といった排水処理設備には、たいてい管理業者が槽内に吊り下げている。
これは、チョウバエ類という汚水で発生する不快害虫を抑えるためである。プレート剤は蒸散性があり、比較的長期間効果があるので、チョウバエ対策には適している。浄化槽のフタなんかを頻繁に開けてみたいなんて、誰も思わないから手間がかからない方法が好まれるというわけだ。チョウバエ類を家屋内でみかけることは許せん!というヒトが多いおかげで、プレート剤の重要は絶えることがないだろう。私はチョウバエ対策として、最も強く勧めるのは浄化槽や排水管の清掃で、その費用が出せない感じの場合はプレート剤の使用を勧めることにしている。一般家庭では、日に数個体みかけるというレベルであれば、完全に放置しておくことなどもお勧めである(というと大抵の奥様は気を悪くするが)。あまりにも多いということであれば、それは家の配水設備のどこかにドンデモナイ問題が生じている可能性があるので、有効な対策は配管工事屋さんの領域になる。

 さて、問題はこの便利なプレート剤が、有人の室内でも使用されている事があるということだ。最近でも、たくさんの作業員が働いている食品関連施設の生産ライン、倉庫、売り場などでプレート剤が使用されている現場に遭遇することがある。使用されている理由は、浄化槽の時と同じで「手軽に」虫がいない室内にできるということだ。責任者に、労働環境の悪化と商品で問題が起きる可能性があるので、有人の室内からは撤去することを勧めるが、明確に取り締まる法律があるわけでもないので、そのままの場合が多い。「自動害虫駆除機」も結構みかけるが、やはりジクロルボスを使用しているものが大半である。手軽さを追求するのであれば、これらの薬剤に頼るのは仕方ないことである。

商品は安くしないといけない。そして虫もゼロにしておきたい。

大手の害虫駆除会社も、これらの需要に対応して業務をおこなっているだけである。ウチの害虫管理のように、みんなで掃除をしましょうなどという、人的コストがかかる方法を採用していては儲からない。でも、儲かって大きな会社になった後は、ヒトの健康や環境問題に取り組むってのが先進国の企業のトレンド(発展途上国からは嫌われるトコロ)なんだから、何とかしてほしいものである。製造環境の昆虫の発生状況を調べたり、こまめな清掃を実施することがコスト高に結びつくとしても、長い目で見れば総合的なコストは高くならないと思う。なので、管理費用が安い大手害虫駆除会社ばかりでなく、見積もりが中途半端に高いウチの会社にも、防虫管理の仕事が回ってくる世の中になってくれるよう願ってやまない(って我田引水やな)。