シロアリ使った生物試験はしんどい。吸虫管でヤマトシロアリを4時間ほど吸引し続けると、吐く息が朽木臭くなったような気がした。
働きアリにダメージがないように改造した電動タイプ吸虫管を、そのうち作ってみようと咳き込みながら毎回考えるのだが、それを忘れた頃に試験依頼はやってくる。事務所にある電動インセクトキャッチャーは、素晴らしい殺虫兵器ではあるが、生きた昆虫を使用する実験には使えない。
大阪府和泉市で採集したヤマトシロアリを、翌日に仕訳していると細長い甲虫が混じっていた。
終わりのころは過呼吸気味で意識朦朧となりながら、キクイゾウムシなども吸っていた気がするので、そのときに容器に一緒に入れてしまったのだろう。
細長い甲虫はツノブトホソエンマムシ Niponius obtusiceps Lewis, 1885だった。
あまり多くないらしいのだが、そうはいってもこんな小さな虫を目に止める人も極めて少ないだろう。
キクイゾウムシ類を食べるそうである。
上から見ると攻撃的な印象はないが、横から見るとタカのような精悍な顔つきである。グリフォンとかグリフィスとか何かいろいろ連想する。孔道内で生活する昆虫は、複眼が小さかったり、突起構造で保護されていたりする種が一般的だと思うが、ホソエンマムシ類の複眼はデカくて露出している。でも、複眼の表面に透明な覆いがあるように見えるので、防御力は高そうだ。
こんな強面なのと孔道の中で出会ったら、私なら道を譲るな。