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本:『 春になったら苺を摘みに 』

2006-12-05 11:49:58 | entertainment
『 春になったら苺を摘みに 』 梨木香歩:著

「理解はできないが、受け容れる」それがウェスト夫人の生き方だった。
「私」が学生時代を過ごした英国の下宿には、女主人ウェスト夫人と、
さまざまな人種や考え方の住人たちが暮らしていた。
ウェスト夫人の強靭な博愛精神と、時代に左右されない生き方に触れて、
「私」は日常を深く生き抜くということを、さらに自分に問い続ける―
物語の生れる場所からの、著者初めてのエッセイ。~amazonより~



とても良い本だったので、忘れないよう感想とお気に入りの抜粋・メモメモ

ナイジェリア人の話、ベトナム難民、アラブの人たち、サラエボ難民、
どんどん仲間を連れ込んでくる中国人・・・
他の国との宗教・文化・習慣の違いに、頭を抱えながらも、その存在を
受け容れ続けてきたウエスト婦人。

彼女の人柄には、周りの人もすべて包み込むような温かさでいっぱい。
この雰囲気は、“人を受け容れる気配にあふれた温かさ、かといって
必要以上に好奇心をあらわにしたりしない適度の親密さ。この絶妙な
距離感が心地よい。
”文中の言葉を借りるならこんな感じ。

そんな彼女を著者は、“彼女は自分の信じるものは他人にとってもそうなる
はず、と独り合点するところはなく、また人の信じるところについてはそれを
尊重する、という美徳があった。
”という。



同じ道徳を共有していないからといって簡単に彼らを非難できないと思う。
事はそう単純ではない。
価値観や倫理観が違う人間同士の間でどこまで共有が育ち得るか、と
いう課題。


↑これは、コソボ難民の姉弟(幼い頃に親を目の前で失い、その生い立ちの
ために特異な価値観を形成するに至った・・・とある)の話し。
例えば彼らは店員さえ見ていなければ何を盗んでもかまわないと思っている。
が、彼らには彼らなりの付け焼刃でない道徳がある。その一つとして、
彼らは恩義を感じた人間には終生忠義を尽くす。・・・というくだりからの抜粋。



それから・・・

「全ての人間を足してその数で割ったら、みんな分かり合えるように
 なるかなあ」
「分かり合えない、っていうのは案外大事な事かもしれないねえ。」


理解はできないが受け容れる。ということを、観念上のものにしない、
ということ。
 




夜行列車の章以降では、特に梨木さんの人間をみる根底にある温かさが
伝わってくる。
言葉少ない車掌さんとのことや、トロントでの自閉症ジョンとの交流、そして
元イスラエル軍兵士のモシェとのこと。



著者の海外での、、、ウエスト婦人との事を基盤に、、、人種差別にも
目をそらさず、その考え方や発言にはちょっと感動したりもした。



と、とりあえず書いておこうって殆んど抜粋。自分に分かればいいのだ。


この本は、また読み返したいなぁ