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生涯いちエンジニアを目指して、ついに半老人になってしまいました。

その場考学研究所:ボーイング777のエンジンの国際開発のチーフエンジニアの眼をとおして技術のあり方の疑問を解きます

その場考学との徘徊(61) 古代と未来の同居

2020年01月22日 10時57分58秒 | その場考学との徘徊
その場考学との徘徊(61)         

題名;国立科学博物館 場所;東京都台東区 月日;R2.1.21
テーマ;ヒトの文明 作成日;R2.1.22                                                

TITLE:古代と未来の同居

国立科学博物館で開催中の特別展「ミイラ」を見学した。残念ながら、すべて借り物なので写真撮影は一切禁止。しかし、展示方法に工夫が凝らされており、2時間たっぷりと楽しむことができた。つまり、その場考学的な徘徊を経験することができたというわけだ。
 
私にとっての発見は、インカのミイラだった。一般的には古代エジプトのミイラが有名で、大英博物館で10回はお目にかかっている。しかし、いずれも包帯でぐるぐる巻きになっており、あまり興味がわかなったのだが、それでも毎回入館(ここは無料でゆっくり休めるので、ロンドン散策の時には、いつも短時間寄り道)するたびに、なぜかミイラ置き場に行った覚えがある。



今回は、全てのミイラのCTスキャン画像が3次元で表示されており、骨格以外の内容物まで、鮮明に見ることができる仕掛けになっていた。すると、その内容物や姿勢などから、インカのミイラが、エジプトのモノよりも、技術的にも宗教的にも数段優れているように感じられた。
インカのミイラは、長期間にわたり数多く作成されたが、全て侵略者のスペイン人により破壊され、最近まで研究されなかった。しかし、2000年の直前に偶然辺鄙な場所で墓場が見つかり、大量のミイラの発見により急速に研究が進められたそうだ。
スペイン人は、その地の文化を徹底的に破壊してしまったのだが、つい、明治維新の廃仏毀釈を思い出し、民族に限らず、伝統文化に対する狂気の時代があることを、強く感じてしまった。

写真の代わりに売店によって、「パピルスに印刷された古代エジプトの絵」を買った。パピルス紙の感触を知りたかったためだった。そのついでに、博物館の隔月誌「milsil」の最新号も買ってしまった。「地球外生命を探せ」の特集で、題名は目新しくないのだが、やはり、2000年から研究が一気に加速されたとある。



地球のような系外惑星の発見には、①高感度、②高解像度、⑶高コントラストが必要で、それが揃った時期から一斉に発見が進み、25年間で4000個以上が確認されたとある。なかでも、2009年のケプラー衛星は、一気に5000個の候補を発見したとある。
同じ雑誌の中に、「猿の会話からヒトの言語の起源を探る」という記事がある。iPhoneのSiri機能を改造して、猿の会話を理解しようとする試みだそうで、結果が期待できそうに思った。
人類の文明に関する研究は、古代と未来の両方向に加速して進んでいることを、強く感じた半日でした。。

(蛇足)昼食は、初めて館内のレストランで採ることにした。2階の奥の座席で、ガラスの向こうには恐竜の骨格の展示室を上から眺望でき、良かった。メニューは「活火山チキンカツ」でこれもお手頃。




 その場考学半老人 妄言               

メタエンジニアの眼シリーズ(156)レジリエンス工学

2020年01月22日 07時44分47秒 | メタエンジニアの眼
メタエンジニアの眼シリーズ(156)
 TITLE: レジリエンス工学

書籍名;「レジリエンス工学入門」[2017]
① 著者;古田一雄 発行所;日科技連 発行日;2017.7.28
初回作成日;R1.12.10 最終改定日;R2.1.22



このシリーズは文化の文明化プロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。『 』内は引用部分です。

 東日本大震災の後に、東大大学院工学系研究科が「震災後の工学は何をめざすのか」を発行し、その中で、レジリエンス工学の果たすべき使命が示された。本書は、その活動の中身を説明している。
 「震災後の工学は何をめざすのか」については、以前、30年前に発行された同様の書と内容が似ており、進歩が少なく、真の再発防止に繋がるのかと批判したのだが、この書についても多くの疑問が生じてしまった。その疑問点を?―?で示した。

時代背景;
 1960年までの「技術の時代」
 1980年までの「ヒューマンエラーの時代」
 2000年までの「社会・技術の問題」
 2000年以降は「レリジエンスの時代」 
?レリジエンスは太古からあった。古代中国の水行政、武田信玄などなど?

言葉の定義については、このように記されている。
レリジエンス = システムが環境の変化を吸収して機能を正常に維持する能力
レジジエンス工学 = 社会技術システムにレリジエンスを造り込むための方法論
・リスクマネジメントの限界; 従来のマネジメントの範囲を超える状況を考慮する
 ?従来のマネジメントの範囲は業種によって異なる。実務を知らない象牙の塔の空論?
・レリジエンスの三角形;機能不全による損害の時間積分 ⇒この面積を最小化するのが目的
 ?時間軸も損害軸も普遍的な定義ができない?
・レリジエンスの特性;①頑健性 ②冗長性 ③対処能力 ④迅速性
レリジエンスの基本特性;①安全余裕 ②緩衝力 ③許容度 ④柔軟性
 ?特性と基本特性の違いは?
?どの特性も、従来から通常のシステムの要件になっている?

・『レジリエンスは通常状態における安定運転、異常状態における事故防止、事故後における損害の最小化、災害発生後の速やかな復旧など、システムのあらゆる運用を対象とする。』(pp.15)
?工学的に見れば、全く独立して考えるべき状況を、混濁している?
?全分野を統合することの意義?
?複雑なシステムの設計を、実際に経験したことがない人たちが考えている?

・レジリエンスの実現プロセス;予期、監視、反応、学習の繰り返し(pp.20)
?あらゆる・・・、常に・・・は現実的ではない。やはり、象牙の塔を感じる。?

・自然災害とレジリエンス;
?詰まるところは、災害の再発防止対策か?

・重要社会インフラのレジリエンス;都市がどの程度のレジリエンスを有しているかの評価方法の確立
都市の全体モデルを作るところからのスタート⇒シミュレーション⇒評価
?作業量が膨大で、最終目的にかなう方法か?

・エネルギーシステムのレジリエンス向上;
 不確実性下における費用便益の最適化問題(pp.77)  
?既に、確立された分野で、多くの政策に取り入れられている?

読後感として残るのは、ジェットエジン設計時に導入している「FMECA」との比較だった。
①  レジリエンス工学は、分野ごとに細分割されている。FMECAは、どの分野でも共通。
②  想定外が発生しても、最低限のシステムの維持を目的としているので、最悪の事態が起こってしまった時の、壊滅的な破壊を防ぐ具体的な方策を、考えて予め導入することとは異なる。 
③ 「システムにレリジエンスを造り込むための方法論」なので、既存のシステムについて考え始めるが、FMECAはシステムの基本設計段階から考え始める。
④ FMECAは、損害の大きさと発生頻度について、普遍的なクラス分けと規格化が行われているが、レジリエンス工学ではそのようなことが可能か?