生涯いちエンジニアを目指して、ついに半老人になってしまいました。

その場考学研究所:ボーイング777のエンジンの国際開発のチーフエンジニアの眼をとおして技術のあり方の疑問を解きます

チャットGPTと生物の進化

2024年04月29日 06時25分02秒 | その場考学研究所レポート
その場考学研究所レポート  No.380                                                        
                                   
定年退職後の10年間は、どっぷりとメタエンジニアリングに嵌まってしまった。その結果、最近のその場考学では、「その場でメタエンジニアリング思考」が習慣となってしまった。そのいくつかを紹介してゆこうと思う。

題名;チャットGPTと生物の進化(メタエンジニアリングのすすめ 23)

 チャットGPTを代表にAIの進化による人類社会への影響の善悪論が姦しい。この問題をメタエンジニアリング的に考えると、生物の進化に行き着く。
 霊長類ヒト科が、何故地球の圧倒的な支配者になれたのか。それは、通常の生物の数百倍の早さで種としての進化が進んだことによる(その場でメタエンジニアリング その8 なぜ、ヒトだけの脳細胞や脳神経が異常発達したのか)。
 つまり、生物の五感を次々に外部化することに成功した為だった。目は顕微鏡や望遠鏡、声は拡声器、消化器官は調理法、足は靴と様々な乗り物による代替え物による進化だった。
 例えば、猛獣はすばしっこい小動物を捕まえるために、ひたすら早く走る足腰を進化させた。キリンやダチョウは、敵を発見するために首を長くした。それぞれ数億年を要したであろう。一方で、人間は自動車や望遠鏡を数百年で発明して、選りすぐれた能力を獲得した。つまり、生物としての、あらゆる能力の強化(進化)を、通常の百倍どころか、百万倍の速さで取得したことによる。

 しかし、その反面、人の五感が衰え続けている。目も耳も嗅覚も現代人は原始人に及ばないし、原始人のそれらを取り戻すことはできない。一旦、大きくなってしまった恐竜は、絶滅するまで、元の正常な大きさの形に戻ることはできなかった。

 このような観点から考えると、チャットGPTは、ヒトの第6感の代替えになりつつあるといえる。新たな文章や曲を書くのは、第6感が大きく影響をする。つまり、目の前のあることから、突然に文章や曲のインスピレーションが浮かぶのだ。チャットGPTは、明らかにその代用となりつつある。

 進化論的に考えると、AIの進化は、五感に続いて第6感も外部化になりつつあると言えるのである。そのことで、人類は、過去と同じように進化を加速的に進めることができるであろう。現代の競争社会では、そのことが大いに期待されている。しかし、同時にその代償としてヒトの第6感は、徐々に衰退してゆくことが予想される。 

 さてここで、先の5感まではいいとして、第6感まで外部化して、自らの第6感が衰退しても良いだろうかを考える。それは、新たなモノやことを創造する能力の衰退と云うことになるではないか。
 100年後の人類の地球上における立ち位置は、やはり、猿の惑星の中にあるのかも知れない。しかし、その原因は核ではなく、生成AIだった。