生涯いちエンジニアを目指して、ついに半老人になってしまいました。

その場考学研究所:ボーイング777のエンジンの国際開発のチーフエンジニアの眼をとおして技術のあり方の疑問を解きます

メタエンジニアの眼シリーズ(92)「本物の経営」

2018年10月09日 07時49分17秒 | メタエンジニアの眼
メタエンジニアの眼シリーズ(92)
TITLE:本物の経営

書籍名;「本物の経営」 [2004] 
著者;船井幸雄 発行所;ダイヤモンド社
発行日;2004.10.7
初回作成日;H30.8.26 最終改定日;H30.8.31
引用先;「企業の進化」

このシリーズは経営の進化を考える際に参考にした著作の紹介です。『 』内は引用部分です。



 1985年に「船井総合研究所」を設立以来、日本最大級の経営コンサルタント組織を運営。著作数は数えきれない。
 この書では、「宇宙の理」を示すことに主眼が置かれている。
 
『もちろん「地球の理」も「宇宙の理」のもとでの特例ですから、いままでの地球上でも、 もっとも正しいのは「宇宙の理」に従うことでした。それが、生きるにも、経営するにも、 もつとも高効率だったのですが、その逆が多い「地球の理」に従っても生きられましたし 経営できました。そのほうが効率よく思えることも増えてきたのです。そのために人々は 「地球の理」のほうが正しいと錯覚さえしていたのです。そこで本章では、「宇宙の理」に従った経営とはどのようなものなのか、10の項日に分けて説明していきたいと思います。』(pp.52)
 というわけである。「地球の理」⇒「宇宙の理」については、次のような違いを挙げている。どの項目もメタエンジニアリングと同じ方向に思える。
 
・複雑 ⇒単純、
 ・不調和 ⇒調和しないといけない、
 ・競争 ⇒協調以外は成立たない
 ・束縛 ⇒自由、
 ・不公平 ⇒公平でないと成り立たない、
 ・分離 ⇒融合
 ・デジタル化 ⇒アナログが大事、
 ・ムダ・ムラ・ムリ ⇒効率的
 
敢えて、「宇宙の理」などという必要はないのだが、企業の進化の方向としては、正しいと思う。

【地球の理】            【宇宙の理】
①複雑がよい            単純である
② 不調和でもよい          調和しないといけない    
③ 競争・搾取がよい         共生・協調以外は成り立たない
④ 秘密が大事            開けっ放し
⑤    東縛も善             自由がベスト
⑥ 不公平は当たり前          公平でないと成り立たない
⑦ 分離が重要な手法         融合がベスト
⑧ デジタル化が大事なノウハウ     アナログが大事
⑨ ムダ、ムラ、ムリが多い      効率的である
⑩    短所是正もーつの手法       長所伸展以外は非効率

10項目の中から、特にメタエンジニアリング的な最初の3項目を選ぶ。

①  複雑から単純へ


「90年代は、何事も複雑化していきました」で始まるこの章は、アメリカでは、GEをはじめとして「BPR=Business Process Re-Engineering」と「COE=Center of Excellence」が盛んにおこなわれ、単純化の方向にまっしぐらだった時期なので、この表現は意外だった。この事実から、当時の日本では、投資の方向と実務の方向が正反対だったように思える。
『企業はコア・コンピタンス(企業の中核的能力)を明確にすることが 大切になっています。コア・コンピタンスというのは、ある意味で長所伸展でもあります。 企業も人材も、コアとなる部分を、うまく伸ばしていかないと絶対にうまくいきません。 企業というものは、成長してある程度大きくなってくると、コアを忘れてしまいがちで す。常にコアを再確認して、原点を大切にしなければなりません。 無理な多角化は、失敗の原因となります。人間の体も、どこかーカ所悪くなると、それ が別のところにも影響して体全体が悪くなるということがあります。企業も同じです。多角化の無理がたたってつぶれた会社もかなりの数に上ります。』(pp.56)

② 不調和から調和へ
 ここでは、社内の一体化が述べられているが、社会との一体化へ進むべきではないだろうか。
『調和に関しては、社内のことだけでなく、社会的な認知も大きなポイントです。 経営の神様といわれた松下電器の創業者の故・松下幸之助さんは、社員が新しい事業を 思いついて提案にくると、必ず「その仕事は儲かりますか?」と聞いたそうです。社員が 「儲かります」と答えると、次に「その仕事をやる人、あるいは周りの人たちが生き生き しますか?」と聞くのです。 そこで社員が「生き生きします」と答えると、今度は「その仕事は世の中のため、人の ためになりますか?」と聞いたといいます。この三つの質問の答えが全部イエスであったときは、はじめてその事業をやりなさいと言ったそうです。』(pp.57)

③ 競争・搾取から共生・協調へ


ここでは、短期的な判断の危うさを示して、長期的な視野が必要であると述べている。デジタル化については、次のように述べている。

『人間も、まったくアナロジーな存在です。コンピュータの普及とともに、処理能力のスピードが上がることからデジタルの優位性 に目がいくようになっていましたが、最近、アナログの必要さが見直されています。デジタルは一時の手段であって、テクニックでしかないということがわかってきたからです。 アメリカ的経営が日本に入ってきて、経営にしても人事にしても、デジタルに細分化されていきました。業績給という非常にデジタル化したシステムも採用されています。 しかし、先に紹介したように、その結果はモチベーションの低下というかたちで現れま した。アナロジーな存在である人間をデジタルな枠の中に押し込めようとしても無理があるのです。感情を無視して、あれをやれ、これをやれでは士気が下がるのも当然です。』(pp.70)

さらに続けて、
『アナログとデジタルをうまくまく使い分けることが、いまの時代は必要なのかもしれません。 「仕事は結果を見ろ」と言う人もいるし、「プロセスを評価してほしい」と言う人もいます。これは、どちらが正しいということではなくて、両方とも必要なのです。 経営者にとって結果は大事ですが、結果だけを偏重していては企業は成り立ちません。企業は、働く人がいるからこそ動くのです。プロセスを尊重しないと、社員のやる気を削 いでしまいます。』(pp.71)

さらに、電算機の推移については、
『本来、宇宙というのはアナロジーで連続しているものです。分かれては存在していませ ん。デジタルというのは分けるということです。分けたり、パターン化したりというのが デジタルの特性なのです。あるところまではいいのかもしれませんが、行きすぎたらこれ はいけないでしょう。 コンピュータは、真空管を使った第一世代、トランジスタ式の第二世代、IC(集積回 路)式の第三世代、LSI (大規模集積回路)による第三・五世代、超LSIを駆使した 第四世代を経て、現在は人工知能型の第五世代が中心となっています。 第五世代まではデジタル・コンピュータですが、第六世代以降はアナログ・コンピユー タになります。そして、コンピュータの最先端はいま、第八世代まできています。』(pp.73)

まさに、「宇宙の理」にかなった生き方に近づくことが、進化の方向だと思えてくる。