浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

史料の行方

2012-11-13 21:16:33 | 日記
 今日、浜松市東区中野町にある伊豆石で建造された土蔵の整理を行った。私の仕事は、なかにある書類の整理であった。

 マスクと軍手をつけて、ほこりにまみれた紙類のなかから、有用なものをさがしだしていく。この家は資産家であったので、地域の名望家として議員を経験している。

 中ノ町村については下記を見てもらうこととして、今日発見した史料について書く。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E3%83%8E%E7%94%BA%E6%9D%91

 まず村議会に提出された史料である。本来こういうものは永久保存である。しかし通常どこか大きな自治体に編入合併されるときに、「される」町村の史料は消える。つまり処分される。

 中ノ町村は1954年に浜松市に併合されるのだが、現在浜松市の書庫に残されているのは『中ノ町村沿革誌』だけである。あとはほとんど捨てられたのだろう。

 したがって、現時点で史料をさがすとすれば、村長や議員を務めた方が残された家ということになる。だが、家の建て替えなどの際、史料の多くは捨てられる。もっとも残る確立が高いのは、土蔵に保管されている場合である。

 ※ 規模の小さな合併の場合は、旧役場の倉庫などに残されることが多い。

 今回、二回の調査で、土蔵所有者の先祖が議員であった時代の議案書などの史料が発見できた。これは成果である。

 また先祖の方が、地元の企業の株主であったためか、数種類の営業報告書が発見された。中野町銀行、天竜木炭株式会社、遠州電気鉄道株式会社など。これらは地元の経済状態を明らかにするときの貴重な史料となる。

 時の経過は、過去を消していってしまうが、こうした史料は過去を再現することを可能にする。それが歴史のおもしろさである。
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【本】ロナルド・ドーア『日本の転機 米中の狭間でどう生き残るか』(ちくま新書)

2012-11-13 21:03:18 | 日記
 『世界』を買いにいったときに、店頭で見て購入してきた本である。ロナルド・ドーアはイギリス人で、日本語の読み書きもできる研究者である。彼の本や主張(『中日新聞』に時々論説を書いていた)における理性的・批判的な言説は、いつも傾聴に値するもので、私は彼の著書は注意深く読んできた。

 しかし、今回のこの本は、どうも焦点が絞り切れていない感がある。最後の「MAD(相互確証破壊)」に関する日本のとるべき行動の提案は、どうも非現実的であるように思えた。彼の意図はわかるのだが、日本政府がそんなことをするはずがない。

 「脱亜従米」というか、アメリカに隷従することを最善の策と考える人たち(政治家、官僚、財界、マスメディアなど)が多い(日本国民の多く、彼が指摘する如く50%以上)中、日本が核不拡散体制からぬけだして、相互にMADをもちあうということを提案するわけがない。それだけでなく、私はそれは果たして正しいことなのかという疑問を持つ。

 また内容的に「副題」に沿う内容が書かれていないようだ。どうも準備不足のまま本書を書いたようだ。

 現在87歳だと思うが、彼には理性的な言説をさらに発して欲しいと思う。
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