2015年刊行の本である。出版されたときに知って買っておいたものだ。アメリカ・インディアンに関する本を読むなかで、書庫の中から見つけ出したものである。
「この国は建国前からなにも変わっていません。先住民を弾圧したときの精神を受け継いだまま、国家を肥大化させてきたのです」(248)
現代に生きる日本人ならアメリカの姿をみつめないではいられない、というのが、アメリカの政治経済その他の強い影響を受け続けている日本のありさまである。まったく、アメリカの本質は変わらない。独善的、その一言で終わる。
本書には、「白人男性症候群」ということばが紹介されている。その症状は、「自分の知識が常に他人よりも圧倒的にすぐれていると確信するあまり、人の話をきけなくなる」(205)
バージニア大学のデイヴィッド・エドモンズはこう語る。
「白人が多民族社会において、いかに優遇されているのか、白人男性による特権が社会構造の隅々にまで根を張っていることを、みずからにいいきかせながら生活しています。白人の男性が中心の白人男性症候群は、アメリカに根深く存在する不平等や差別の元凶で、多民族社会の共生を妨げています。この病には罹りたくありません。」(205)
彼はおそらく白人だろう。多くの白人男性は、white man syndrome に罹り、彼らがトランプを「推し」ているのだろう。
本書は、アメリカ・インディアンのことだけを記しているのではない。アメリカで先住民が抑圧され、差別されている、彼らと同じ状況に置かれている、東日本大震災に伴って起きた福島原発の爆発、それに伴い故郷を追い出された人びと、被差別部落民、映画「ザ・コーヴ」で非難の対象にされた太地町の人びと。
アメリカ先住民のひとりはこういう。「アフリカで飢えている人たちを救うことよりも、イルカを救うことに必死になるところが白人らしい」(196)と。
太地町では多くの人がアメリカに渡ったり、早くからアメリカとつながっていた。戦時中には日系人の収容所に隔離されたりしたが、そこはインディアンの居留地でもあった。
太地町、一度行ったことがあるが、太地町民は、独立心が強く、他町村との合併を拒否してずっときたという歴史があるという。平成の大合併でも合併しなかった。つぎつぎに合併していった静岡県の中西部の市町村の不甲斐なさからみれば、とっても立派だと思う。
またアメリカ・インディアンの祭典があることを知った。Pow Wowという。それを知っただけでも、よかった。
触発される本である。