浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

年賀はがき

2012-11-01 20:06:10 | 日記
 今年から年賀状をださない、という人がいた。私もできるだけ年賀状を減らしている。

 来年の年賀状は今日発売だ。ところが、金券ショップの前を通ったら、10枚480円、200枚9500円で販売していた。

 なぜ発売されたばかりの年賀はがきが金券ショップで売られているのか。

 調べてみた。

 日本郵便株式会社の社員には、過大なノルマが課されているのだ。正社員には1万枚以上。ということは、ひとりあたり50万円以上ということだ。

 年賀状を出さない人が増えている中、こうしたノルマはきわめて厳しい。

 埼玉県では、何度も何度も日本郵便の社員が来て、年賀はがきの購入を哀願するように頼んでくると言う。

 これは正常ではない。

 ひとり1万枚なんて売れないから、自腹で購入して、それを金券ショップに売るのだ。もちろん損をする。

 ひどい話だ。

 こういうノルマは、犯罪的といえよう。

 郵便局で買うよりも金券ショップで安く買えるという事態は、消費者にとって喜ぶべきことなのか。

 日本郵便の労働者の犠牲の上に、やすい年賀はがきが売られている。

 おい、日本郵便株式会社のお偉いさんたち!!こういうノルマを課すのはやめようじゃないか!!!

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【本】古市憲寿『希望難民ご一行様』(光文社新書)

2012-11-01 10:16:26 | 日記
 2年前に出版されたもの。最近この本の書評を読んで読みたくなり、昨日図書館から借りた。今朝読み終わったのでその感想を書く。

 古市は、ピースボートの世界一周旅行に参加し、そこに乗船していた若者を社会学の分析の対象として据えた。

 ピースボートに、私の知人が二度乗船し、そこで発生したトラブルについて厳しく指摘するブログを読んでいた。ブログから、ピースボートがトラブル処理に関してきちんとした対応をしなかったことを知り、評判がよいピースボートのウラを知った気がした。

 さて古市が参加したときも、船体に穴が開くなどトラブル続きであったようだ。値段は安いから仕方ないかもしれないが、そういう船には乗りたくないと思った。

 本書は、ピースボートに乗った今時の若者を社会学的な研究対象としたものである。分析はあまり厳格ではなく、分析をしつつ、研究対象をあるがままに認めたような内容であった。

 引用されている日本の社会学者についての短い形容句が面白いということはさておいて、読んでいて今時の若者の実態をつかむことができたと思った。その若者たちに対しては、巻末の「解説、というか反論」を書いた本田由紀と同じように反論したい気分ではあるが、内容は堅苦しくなく、読みやすく書かれている。

 「目的性」と「共同性」という概念を基本軸としているが、古市は「共同性」だけでよいとしているが、私は本田と同様に「目的性」なしに生きていくことはきわめて難しいと思う。おそらく古市は経済的にはあまり苦労しなくても生きていけるだけの経済的基盤があるのだろうが、ピースボートに参加したフリーターのような人びとがそこで知り合った若者たちと「共同性」に浸っていることで、年齢を重ねても生き続けていくことが可能かというと、現実を知っているが故に、私は否定的だ。古市はそれでよい、としているが、私はそうはいかないのだ。

 しかし若者がこの本を読んで、そして本田の主張を理解することは、重要だと思うが故に、本書を読むことを薦めたい。
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旧幕臣のこと

2012-11-01 09:52:36 | 日記
 歴史民俗博物館に樋口雄彦氏がいる。氏は、もと沼津明治史料館の学芸員だった。その頃から旧幕臣の研究を続けている。

 戊辰戦争の後、徳川幕府は新政府の命令で静岡にやってきた。徳川宗家の代表たる慶喜の後を継いだ家達も静岡へ来た。当時の江戸の文化が静岡に来たわけだ。静岡には静岡学問所ができ、沼津には沼津兵学校が設立され、静岡県の各地に江戸などから移り住んだ旧幕臣が移住してきた。

 しかしその後廃藩置県で静岡藩がなくなり、家達は東京へ。旧幕臣たちは静岡県内に残った者もいるが、多くは東京に。そして新政府のトップは薩長土肥の田舎侍がついたが、実務的な官僚には、旧幕臣がつき、その能力を活かした。

 最近樋口氏は『第16代徳川家達』(祥伝社新書)、『箱館戦争と榎本武揚』(吉川弘文館)を出版された。この二冊とも寄贈を受けたので、読んでみた。とても面白かった。氏の史資料を博捜しての記述にはいつも感服するが、これぞ歴史研究というものだ。歴史研究を志す者は、樋口氏の本を一度は読むべきだ。実証性とはどういうものかがわかるはずだ。

 前者の本は、徳川家達の伝記と言ってもよいだろう。しかし家達自身の資料に基づいて書いたものではなく、家達の周辺の史資料をもとに組み立てた家達像である。したがって、少し物足りなさが残る。家達の伝記はないから、それでも有益である。いずれ家達自身が書いたものなどをつかっての、家達を主体とした伝記が書かれることにもなるだろう。

 後者の本は、箱館戦争に参加した榎本武揚らを中心とした旧幕臣等がその後どういう生き方をしたかを描いたものだ。別に榎本を中心に書いているわけではないから、『箱館戦争と旧幕臣たち』という書名にしたほうがその内容を捉えることができると思った。

 驚いたのは、箱館戦争が終わり、生き残った者たち(新政府軍の捕虜などになった)が静岡へ来ていたことだ。知らなかった。知らなかったことを知る驚きと喜び。

 その後の旧幕臣たち(決して有名人ではない!)の足跡を、よくもまあ、たどったなあと感嘆する。全国各地に散在する史資料を丹念に拾い上げていく膨大な作業の後にはじめて築かれる一冊の研究書。

 樋口氏の性格が、本書には明確に現れている。

 歴史研究を志す者は、本書を、とくに後者を読むべきである。
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