わたしが高校時代から購読している『世界』の編集長だった熊谷晋一郎氏が、なにゆえに、『世界』と同じような『地平』を発刊したのだろう、という疑問を持っていた。
わたしが若い頃は、『展望』(筑摩書房)や『現代の眼』(現代評論社)、そして講談社も『現代』という綜合雑誌を出していた。『世界』は毎月購読、『展望』などのほかの雑誌は時々購入していた。その頃は週刊誌として『朝日ジャーナル』もあった。それも毎週購読していた。だからそうした綜合雑誌が複数あることは歓迎すべきことである。
だからわたしは、『世界』と『地平』を比較している。『世界』の8月号は届いていないので、8月号の比較は出来ないが、『地平』8月号には、花田達朗の「第三のジャーナリズム」にはこう書かれていた(主旨のみ)。
熊谷は『世界』編集長として4年余りつとめ、その間に販売部数、定期購読部数を伸ばした、にもかかわらず、編集長を更迭され、営業局に異動となった。しかしその異動の理由が明かされず、熊谷はその異動を承服できなかった。たしかその頃、『選択』という雑誌(今年から購読を止めた)に、異動になったのに編集長が居座っているという記事があったことを思い出した。
さて『地平』7月号に原稿を寄せている三宅芳夫が、ネットでこう記している。
『世界』前編集長の熊谷伸一郎さんが、7月2日をもって岩波書店を退社されたそうです(FBにて告知)。
ここ数年は、岩波が右翼の坂本体制になり、熊谷さんは社内でほとんど孤立無援の戦いを強いられてきたと伺っています。しかも、これは熊谷『世界』が、紙媒体としては異例の「部数増」を達成するなかのでの「政治的排除」でした。
今後は1月ほど休養を取り、しかる後、現在の日本の危機に対抗する、ジャーナリズム/言論の場を立ち上げていきたい、ということです。
おそらくは、新しい出版社の「立ち上げ」の段階に入る事になる。
現在、メディアはTV・新聞双方とも「大政翼賛体制」。野党第一党の立憲はよりによって「維新」と連携する体たらく。
もはや、既成の制度の枠を超えた一般市民による「人民戦線 front populaire」的言説を構築していくしかない。
この路線、リアルの世界でも「有効」であることは杉並の赤緑連合の小選挙区の連勝からも明らかです。
しかも、仄聞するところによると、当の岸本聡子区長と選対本部長の内田聖子さんも立ち上げに協力してくれるとのこと。
熊谷さん本人も都知事選の際、宇都宮健児さんの選対本部長を務めた人です。
私も自分のできる範囲内で協力していく所存です。
これは昨年7月に書かれたものだ。そうなのか、と驚いた。現在の岩波書店の社長は、坂本政謙という。この人、「右翼」なのか。となると、『世界』の変身の背後にこの人がいるのだろうか。『世界』に掲載される文に、鋭さがなくなっている(執筆陣が大きくかわっている!)と、うすうす感じていた背景が、これなのか。
だとするならば、わたしは『世界』の購読を止める方向に行くしかない。鋭い問題提起がない文は、はっきりいって読む価値はない。