武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

084. コラージュ淡彩スケッチ -Collage-

2018-12-14 | 独言(ひとりごと)

 何でも溜めこむのが好きな性分で、ポルトガルに住み始めた当初から、呑んだあとのワインラベルも剥がしては取っておいた。それを古い電話帳の間に挟んで…。
 みるみる電話帳は何倍にも膨れ上がった。
 膨れ上がった電話帳を見るたびに、僕の心はげんなりしてしまっていた。
 それは将来の「ゴミ屋敷」が幻影として僕の瞼に浮かび上がるからだ。それなら捨てればいいものを……それが捨てきれない。

 別に何をするでもなく、コレクションをしようと思うほどでもなく。何となく取っておいたのだが、膨れ上がった電話帳を眺めながら…電話帳のページをめくりながら…溜まってしまったワインラベルを横目で見ながら…ふと、考えたのだ。スケッチのコラージュ(貼り付けること)に使えば面白い効果が出るのではないか?…と。

 そう考え実行したのは1996年、14年も前の話である。
 14年前にワインラベルをコラージュした淡彩スケッチを描いてみたのだ。24枚を描いてスクラップブックに挟んでその電話帳の下に隠しておいた。電話帳を重しにしていたのだが、実は14年間その存在をすっかり忘れていた。

 そんなに長い年月とは思わなかったが、サインに年号が書かれているから14年も経っているのに間違いはない。
 よくも紙魚(しみ)に喰われなかったものだと感心するが大丈夫な様だ。

 先日、それを見つけ出したので、その続きをやってみようとこのところ試みている。
 鉛筆スケッチにワインラベルをコラージュする。そしてその上に淡彩をほどこす。スケッチは遠景などは止して建物の壁の部分の多い絵だけを選んでいる。



 ポルトガルの壁の古さを表現するのにワインラベルのコラージュは絶好だ。…と密かに思っている。
 葡萄牙(ポルトガル)だから葡萄酒にこだわっているわけである。と書くと呑むのが余程好きそうに聞こえるかも知れないが残念なことにいたって弱い。
 ワインラベルはモダンなデザインよりもオーソドックスなそれらしいデザインが良い。でもワインラベルにも艶のある紙などもあって、そんなのは水彩絵の具をはじいてしまうので、出来るだけ、ざらっとした艶なしのラベルだけを選んで貼っている。とにかく利用することによってひとまずゴミ屋敷の幻影からは逃れたのかも知れない…。と喜んでいる。

 高級なワインは殆どなく、ごく一般的な日常呑むワインばかりだが、買った店の親爺さんが言った言葉までも覚えていることもあるし、その香り、味も何となく覚えているものである。そしてアレンテージョの村の一角、スケッチした場面が蘇る。

 そのスケッチも結構な枚数が溜まったので、この程「コラージュ淡彩スケッチ」のページを作ってみた。自分のサイト内とはいえ発表の場があるというのは今後の励みにもなる。

 僕にとってそのスケッチは油彩を描く間のちょっとした息抜きだが、新たな境地とも言えなくもないし、14年前の心境にプレイバックした気分とも言えなくもない。
 常に過去を振り返ってみる。或いは原点に立ち返ってみるということは必要なことの様にも思える。
 展覧会に出品する油彩も僕の絵だが、こんなスケッチも僕の絵だ。
VIT

 

(この文は2010年9月号『ポルトガルの画帖』の中の『端布れキャンバスVITの独り言』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルの画帖』も見られなくなるとの事ですので、このブログに転載しました。)

 

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