昨日京急蒲田の大田区産業プラザで開催されたデザイントレンド太田という、カーデザイナーのトークショーに行ってきました。
左から、ザガートの原田さん、青戸さん、児玉さん。世界的なデザイナーのお話は刺激的でした。
児玉さんの80年代の代表的なショーカー、オペルジュニア。NAVIの創刊号に寄稿されていた頃のクルマですね。後のヴィータや今のアダムに通じるコンセプト、外側を滑らかに、中をモジュールで機能的にまとめたコンセプトは今見ても素晴らしいです。
児玉さんの大学を出てオペルに入社して、そのドイツ、アウトバーンを元にしたクルマのプレゼンス、空力に対するデザイナーの回答、という、筋の通ったお話、すてきでした。
青戸さんは大学卒業後にすぐホンダ入社。その日に宗一郎さんのげんこつを目の当たりにして、すぐやめようと思ったお話。チョークで床に絵を書いて、デザイナーに指示を飛ばす宗一郎さんの豪快なエピソードに場内爆笑でした。
さらにオペルにいた頃の夢のような体験、そして韓国のメーカーの事情等、何ともお話がうまい、皆笑いながら楽しんでおりました。
原田さんはアートセンター卒業後すぐイタリアに渡り、イデアをへてザガートへ。イタリアへの憧れから始まり、イタリアならではの物作りを詩的に表現されていました。
林コレクションの林さんからオーダーされたフェラーリ575マラネロベースのワンオフモデル。ここからザガート=原田さんのワンオフ作品が始まったそうです。
林さんと何度も打ち合わせを重ね、品の良いスポーツカーの姿を探っていかれたそうです。これはアルミで叩いた芸術品のようなボディ。ダブルバブルルーフです。
一番感動したエピソードは、土曜の休みに一人の職人がアルミのボディに大きなやすりを当てて、マイペースで形をさわりながら作っていく作業を目撃した話でした。
薄暗い部屋で奥の天窓から冬の光が差し込み、若い職人は一人で腰を使いながらベネチアのゴンドリエーレのようなリズムを刻み、歌を歌いながら大きくやすりを動かしていく。そのリズムの中で、削られたアルミの粉がボディに沿って砂時計のようにこぼれ落ちていくさま、まったく、イタリアならでは詩的な光景だったそうです。
たった20人や30人の会社であるザガートで、数々の小さな組織が結びつきあって一台にクルマを作り出せるのは、この北イタリアにしかない素晴らしい伝統であると。
ヴィラデステでのお披露目。
お三方のお話、どれも興味深く、物作りに勇気がわいてくる素晴らしい3時間でした。
会場では素晴らしいクルマたちの展示もあり、実り多きイベントでした。