持続可能な国づくりを考える会

経済・福祉・環境の相互促進関係を!

連載:持続可能な国づくりの条件 15

2014年09月15日 | 総合

 スウェーデンは本当に幸運な国で、それは国民性がそうだったためですけれど、19世紀、ロシア革命などでレーニンやスターリンが暴力革命とか一党独裁とか私有財産の没収とか言っている時に、もっと人間を人間として生かす社会主義・社会民主主義でいきましょうという流れが主流になっています。

 

 

 カール・ヤルマール・ブランティングという社会民主党の初代党首、そして何度も首相をやった人ですが、この人の時代からもう、ソ連型の社会主義ではなくて、言論や思想や財産の自由を保って、複数政党による議会制民主主義をしっかりと維持しながら、しかし選挙で国民の支持を得て社会民主党が第一党になることによって、社会民主主義的な福祉政策を実行するということをやり始めています。 

 それから、第二次大戦中、戦争中であるにもかかわらず、スウェーデンは中立を保って戦争をしなかったのですね。スウェーデンはナポレオン戦争が終わった後から200年ぐらいずっと戦争をしていない稀な国です。すごい国ですね。

 そして、戦争をしなかったので、戦争をした国が消耗したのに対して、それを補うための商売が非常にうまくいったのが、戦後のスウェーデンの経済繁栄の大きな要因になっていますが、その基礎を築いたのがハンソンという首相です。

 ブランティングも言い始めていて、ハンソンが本格的に宣言したのですが、国というものは、階級が対立したり、あるいは特定の階級が牛耳ったりする国ではなく――これは何を言っているかというと、自由主義国家とソ連型社会主義国家を指していますが――そうではなくて、国民全体の家になるべきだ、「国家は国民の家でなければならない」という理想を掲げている。

 国民全体が助け合うことこそ国が存在する理由なのだということを、理念として語っただけではなくて、制度としてそれをしっかりと築き上げていった人です。

 第二次大戦が終わった直後1946年に、ハンソンが亡くなったので、戦後ただちにターゲ・エランデルという人が後を継ぎます。

 これは日本の自民党政権以上の長期政権の大部分を担った首相です。

 外から見ると20数年首相をやりっぱなしなので、独裁者じゃないのかと思うかもしれませんが、国民の信頼を得続けたための長期政権であって、まさに国民のための福祉国家、そして緑の福祉国家を築き上げていったリーダーですね。

 この人の伝記を読んでみましたが、もう本当に私心のない人だったようですね。

 エランデルは、首相を辞めてパルメという人に譲った後で、二人で相談して、「これからは環境が問題だから、国連に働きかけよう」ということで、1972年に国連人間環境会議がストックホルムで行われます。

 第1回の国連環境会議のリーダーは、エランデルとパルメというスウェーデンの元首相と現首相だったんですね。

 つまり、環境問題に対する目覚めも、リーダーからして非常に早いという国です。

 こういうリーダーと、こういう人をリーダーに押し上げていく国民というのは、鶏―卵の話で、どちらが先かということですが、こういうリーダーもいるし、こういう人をトップリーダーに押し上げていくという国民性があったために、スウェーデンにはこれができたということですね。

 繰り返すと、スウェーデンは、かつてはヨーロッパの北の果ての貧しい農業国家だったのですが、近代の工業国家をみごとに創り上げ、そして福祉国家、さらに緑の福祉国家を実現しつつあるわけです。 

 

 

 

 写真の奥に見える教会がまさにスウェーデン精神を形成したプロテスタント精神のシンボルです。

 

 

 また次の写真のように、こうやって皆でお祭りを楽しみますという国民性が今でも強く残っている。

 

 

 次のこの写真はストックホルムの光景ですけれど、このストックホルムの中心の近くに、都市でありながらみごとに環境的に持続可能な実験都市ハンマルビー・ショーシュタットを作っています。

  そこに視察に行ってきましたが、「いや、実にうまく作っているな」とびっくりしてしまいました。その詳細はかつてもお話ししましたし、また機会があったらお話しします。

 

 ストックホルムの市街地のすぐそばに、島一つの王立の自然公園がしっかり残っています。日本の都心の、例えば新宿御苑などという規模ではありません。

 王様から払い下げがあって、開発して住宅にしようという話もあったそうですが、市民が大反対して、結局自然公園のまま残すことになったそうです。

 東京都でそれをやったらどうですかね。「新宿御苑を潰してマンションにしよう」とか言ったら、もちろん一部の市民は反対するでしょうが、結論として「いいね、そうしよう」と日本はなりそうですよね。

 私は今(2013年時点)、有明という海沿いの開発をしたところにある大学に教えに行っていますが、もう完全に都市環境で、元あった自然環境を全部ぶっ潰して、人工的な近代都市にしています。そのあたり、もう全然発想が違うなと思います。

 



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
8年ぶり左派連合政権復帰 (森中定治)
2014-09-15 12:10:35
先ほど(15.9.2014)のニュースですが,スウェーデン社会民主党を中心とし,福祉を重視する社会の戻すと主張する左派連合が8年ぶりに勝利したとのことです.
しかし,極右のスウェーデン民主党が第三党になったと言うことです.なかなか難しいです.
なかなか難しそうですね (おかの)
2014-09-16 09:24:49
>森中さん

 お知らせ有り難うございました。

 さすがのスウェーデンも、なかなか難しい問題を抱えていますね。

 これから「緑の福祉国家」の実現はどうなるのでしょう。そのまま順調に進むのか、停滞するのか。

 注目していきましょう。

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