持続可能な国づくりを考える会

経済・福祉・環境の相互促進関係を!

連載:持続可能な国づくりの条件 14

2014年09月14日 | 総合

 スウェーデンにおける4象限の条件

 すべての面で非常にランキングが高く、特に持続可能性は1位というのがスウェーデンですが、これは持続可能な社会実現のための4象限にわたる条件が、かなり、というよりみごとに満たされているためだと思われます。

 右上から行きます。スウェーデンは、もちろん世界の先進的な環境技術をみごとに持っています。

 しかしそれだけでなく、左上、それを使って社会全体が中長期、経済もうまくいくし福祉もうまくいくし環境もうまくいくという構想をすることのできるリーダーがいる。

 それから、左下、そのリーダーが言ったら「そうそう」と理解できる市民がいる。これは大きいです。

 それから、その市民の中にもともとバイキング時代以来自然を愛する国民性がある。

   「自然を愛する国民性」という場合、文化論的に言うと二種類あるんです。

 自然に甘えるという意味で自然を愛する国民性と、自然を守ろうとするという意味で自然を愛する国民性です。

 日本は自然に甘えて……もっとも典型的に言えば、赤ちゃんがどんなに汚いウンチをしようがおしっこしようが、何をしようがお母さんは全部きれいにしてくれるでしょう。

 そういうふうにお母さんに甘えるかのごとく自然に甘えてきたのが日本の自然の愛し方です。

 だから、自然を愛していると思いながら、公害大国になったりしたわけです。

 ところが、北欧は、そんなふうに甘えていたらガタガタになってしまうような厳しい自然です。

 だから、人間がしっかりと自然を保全するように、いつも守らなければならない。

  北欧の人々は、そのことをしっかり自覚していると思われます。

 視察に行った時に、フィンランドの森の中で聞いてなるほどと思ったことは、子供が生まれたら木を植えるというんです。

 で、20年か25年ぐらい経って結婚する頃になったら、やっと丸太小屋を立てられるくらいの木になる。そこで、切って家を建てる。

 もちろん子供が生まれたらまた植える……というふうに、ちゃんと森林を利用しながら維持していくということを計画的にやっている。

 世代から世代へと森が枯渇しないように、植えて切って植えて切って、とちゃんと世話をしながら続けていく、というふうな自然の愛し方です。

 ストックホルムで、ガイドさんに「スウェーデンの週刊誌が国民に『あなたがいちばん関心を持っていること』というアンケート調査をすると、答えはいつも同じ項目が同じ順番なんですが、何がどういう順序になると思いますか?」と聞かれて、私たちは「なんだろうねぇ?」とわからなかったんですが、答えは、第1位スポーツ、第2位自然、第3位休暇なんだそうです。

 国民がいちばん関心があるのはスポーツと、それから自然の中で生活することと、そのためには休暇が必要なので休暇、と。ものすごく健全な国民性だなと思います。

 今私の教えている学生たちに、「君たち、今何がいちばん大事?」と言ったら、すぐに「ケータイ」とかね(笑)、そういう話になりそうですし、大人の男性の多数がワーカホリックですから、そうとう違うと思います。

 それから、強調しておきたいのは、もともとプロテスタント国家だったということです。

 プロテスタント・キリスト教がもう完璧に国教でした。

  国民すべてがある時期までは……今、例えばイスラム教徒の移民も受け入れたりしているので、全員ではなくなりましたし、教会に行っていないという市民も多くなっていますが、ある時期までは国民全員がプロテスタント・キリスト教の信者という国でした。

 近代化・合理化のプロセスで神話的なキリスト教は批判されたにもかかわらず、ここで培われたキリスト教の愛の精神は「愛」という言葉がヒューマニズムの「連帯」という言葉に置き換えられるというかたちでしっかり残っていて、社会民主主義的なヒューマニズム精神が非常に強く国民の中に行き渡っている。

 つまり、「人間は協力するのが当たり前だ。協力してこそ人間なのだ」という精神です。

 それに対して今の日本では「努力した人が報われる」という台詞が首相から出てきますが、あれは後に括弧で本音を挿入すると、「(努力しなかったとみなされた人は報われない)」ということです。

 つまり、もっとむき出しに言えば「勝った者は勝ち、負けたやつは負け。負けたやつが滅びていくのはしょうがない。勝った者がなぜ面倒見なきゃいけないのか」という自由主義的競争原理の話です。

 スウェーデンでは、それとちょうど真っ逆さまの協力原理の精神が国民精神としてしっかりと根付いている。ここがもうある意味では決定的に重要だ、ということを後でもうちょっとお話ししたいと思います。

 それから、そういうリーダーがいて(左上)、そういう国民と国民文化があって(左下)、もちろん先進的な環境技術もあるから(右上)、政府が25年計画でエコロジカルに持続可能な社会=緑の福祉国家を建設する(右下)と言うと、国民も企業もみんな協力してきて、十数年経つと、「あともう10年ぐらい経てば、スウェーデンは国家単位ではエコロジカルに持続可能な国になっている自信があります」と堂々と言えるようなことを今やっているわけです。

 けれども残念なことに、スウェーデンでさえまだ完全に持続可能にはなっていないと、自分たちも評価しているし、世界全体はエコロジカルに持続可能な世界秩序には全然なっておらず、国単位で目指しているいくつかの国がようやくそこに近づきつつあるだけです。世界にはだいたい190カ国ぐらいあるんでしたか。

 そういう世界の状況なので、日本も、10何位とか20何位ではなくて、できるだけ早くスウェーデンに追いつき追い越すような持続可能な国づくりをやって、世界に先駆けて世界のリーダーになってほしい。

 世界の経済のリーダーになるのはもういいから、持続可能な世界づくりのリーダーになってほしいと切に思うのですが、残念ながらそれには4象限のうちの3象限の要素が足りないと思います。

 まあ、足りなかったら足せばいいわけですが。



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