「持続可能な国づくりの会・理念とビジョン」
ダイジェスト版
全 文
岡野です。運営委員長の個人的見解を続けて書いていきます。
私たちの会は、基本的に、日本も含め世界のほとんど国がこれまでの経済・産業のシステムのままでは「持続不可能」であるという認識を持っています。
それは、もっとも代表的には2001年に公表された国際自然保護連合(IUCN)の未来予測「国家の持続可能性ランキング」という報告などに基づいています。
その報告では、驚くべきことに世界180カ国の中で「持続可能性あり」と評価された国は皆無でした。
IUCNはもとは国連の機関であり、後に独立機関となったもので、その報告の科学的信頼性は高いと思われますが、私たちはもちろんただ1つの機関の研究―報告を鵜呑みにしているわけではなく、他のできるだけ多くの研究―報告を参照する努力は続けています。
そして、今私たちの知りえた情報の範囲では、日本も含め「エコロジカルに持続可能な国」はないと考えてまちがいない、と思われます。
しかし、「持続可能性ランキング」では持続可能にもっとも近づいている国としてスウェーデンが1位にあげられており、スウェーデンはすでに1996年国家の方針として「緑の福祉国家=エコロジカルに持続可能な福祉国家の実現」を掲げ、着々と実行―実現しつつある、ということも学んできました(もっとも重要な資料は、私たちの会のメンバーである小澤徳太郎「スウェーデンに学ぶ『持続可能な社会』」(朝日新聞社)です)。
そして、2006年以来、もっとも中心的にはスウェーデンに学びつつ(最近では、会の協力者に加わってくださった立教大学の福島清彦氏からEU全体が「持続可能な社会」に向かって歩を進めていることも学んでいます)、日本を持続可能な社会にするための指針として「理念とビジョン」をまとめてきました。
そうした私たちの視点からすると、日本全体もその一部である東日本も、これまでどおりでは中長期について持続不可能だと考えざるをえません。
そういう意味で、被災地の方々の「元の生活に戻りたい」というお気持ちは痛いほどわかりながらも、今後の問題解決のための社会システムとしては「元に戻る」のではなく「まったく新しく創る」ほかないのではないでしょうか、と申し上げざるをえません(3月31日の記事、「東北は「復興」というより全面的に「新興」してほしい」参照)。
そういう私たちの視点からの、東北の新興についての提案は、知識産業――とりわけ再生可能なエネルギー・システムを中心とした環境技術――に焦点を絞った「グリーン・ニューディール」先進地域と大型公共事業としての「持続可能な農林水産業」の実験地域にできるといいのではないか、ということです。
もちろん、それによって大量の雇用が創出されるはずです。
そうすることで、地震―津波によるゼロというよりマイナスからのスタートによってむしろ持続可能な日本の最先進地域になるというプラスへの大逆転を遂げることができるだろう、とシミュレーションしています。
そのための財源は、すでに提案した「国民皆災害共済保険年金」(これは、これからも大型地震が予想される状況にあって、すべての国民にとって「明日は我が身」の保険です)に、十分な説明責任が果たされた上ならば「社会連帯税」や「復興(新興)国債」を加えることで十分まかなえるのではないか、と推測します。
新しい産業の新興→地域経済の復興→日本全体の景気の回復→税収の回復→やがてまちがいなく財政の健全化、というきわめて望ましい好循環が想定できるのではないでしょうか(この好循環のパターンの現実的有効性は、スウェーデンで不況の度に取られた政策の成功によって実証されているといってもいいのではないか、と思われます)。
そのために、政府は短期での財政赤字の増大を恐れることなく、きわめて希望のある先行投資として思い切った財政出動をしてほしいと思います。
もし現政府にそれができないのなら、それができる新しい政府が必要だ、と私は思っているのですが、みなさんはどう思われるでしょうか。
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岡野です。運営委員長の個人的見解を続けて書いていきます。
私たちの会は、基本的に、日本も含め世界のほとんど国がこれまでの経済・産業のシステムのままでは「持続不可能」であるという認識を持っています。
それは、もっとも代表的には2001年に公表された国際自然保護連合(IUCN)の未来予測「国家の持続可能性ランキング」という報告などに基づいています。
その報告では、驚くべきことに世界180カ国の中で「持続可能性あり」と評価された国は皆無でした。
IUCNはもとは国連の機関であり、後に独立機関となったもので、その報告の科学的信頼性は高いと思われますが、私たちはもちろんただ1つの機関の研究―報告を鵜呑みにしているわけではなく、他のできるだけ多くの研究―報告を参照する努力は続けています。
そして、今私たちの知りえた情報の範囲では、日本も含め「エコロジカルに持続可能な国」はないと考えてまちがいない、と思われます。
しかし、「持続可能性ランキング」では持続可能にもっとも近づいている国としてスウェーデンが1位にあげられており、スウェーデンはすでに1996年国家の方針として「緑の福祉国家=エコロジカルに持続可能な福祉国家の実現」を掲げ、着々と実行―実現しつつある、ということも学んできました(もっとも重要な資料は、私たちの会のメンバーである小澤徳太郎「スウェーデンに学ぶ『持続可能な社会』」(朝日新聞社)です)。
そして、2006年以来、もっとも中心的にはスウェーデンに学びつつ(最近では、会の協力者に加わってくださった立教大学の福島清彦氏からEU全体が「持続可能な社会」に向かって歩を進めていることも学んでいます)、日本を持続可能な社会にするための指針として「理念とビジョン」をまとめてきました。
そうした私たちの視点からすると、日本全体もその一部である東日本も、これまでどおりでは中長期について持続不可能だと考えざるをえません。
そういう意味で、被災地の方々の「元の生活に戻りたい」というお気持ちは痛いほどわかりながらも、今後の問題解決のための社会システムとしては「元に戻る」のではなく「まったく新しく創る」ほかないのではないでしょうか、と申し上げざるをえません(3月31日の記事、「東北は「復興」というより全面的に「新興」してほしい」参照)。
そういう私たちの視点からの、東北の新興についての提案は、知識産業――とりわけ再生可能なエネルギー・システムを中心とした環境技術――に焦点を絞った「グリーン・ニューディール」先進地域と大型公共事業としての「持続可能な農林水産業」の実験地域にできるといいのではないか、ということです。
もちろん、それによって大量の雇用が創出されるはずです。
そうすることで、地震―津波によるゼロというよりマイナスからのスタートによってむしろ持続可能な日本の最先進地域になるというプラスへの大逆転を遂げることができるだろう、とシミュレーションしています。
そのための財源は、すでに提案した「国民皆災害共済保険年金」(これは、これからも大型地震が予想される状況にあって、すべての国民にとって「明日は我が身」の保険です)に、十分な説明責任が果たされた上ならば「社会連帯税」や「復興(新興)国債」を加えることで十分まかなえるのではないか、と推測します。
新しい産業の新興→地域経済の復興→日本全体の景気の回復→税収の回復→やがてまちがいなく財政の健全化、というきわめて望ましい好循環が想定できるのではないでしょうか(この好循環のパターンの現実的有効性は、スウェーデンで不況の度に取られた政策の成功によって実証されているといってもいいのではないか、と思われます)。
そのために、政府は短期での財政赤字の増大を恐れることなく、きわめて希望のある先行投資として思い切った財政出動をしてほしいと思います。
もし現政府にそれができないのなら、それができる新しい政府が必要だ、と私は思っているのですが、みなさんはどう思われるでしょうか。
最近色々な人と話をする機会がたまたまあったのですが、
東京にいる人間は、「明日は我が身」と思っている人が
以外に少ないようにも感じます。
この先時間が経ってしまうとますます危機感が薄れていくと思いますので、
早い段階で時期を逃さずに方向転換してくれることを切実に願います。
恥ずかしいことですが、政治のことも良く分かっていませんので、
漠然とした感想しか書けなくてすみません。
まだまだ勉強不足ですが、これからは傍観者ではいられない、と思っていますので、
素人なりの意見や感想を書かせて頂きたいと思います。
日本は元々大局に基づいた理念やビジョンを自分で設定することが苦手な国です。しかし、外からもたらされた価値観に対しては、恐るべきスピードで追従/同化するという能力を持っています。先生達の進める「持続可能な国」という価値観がG8の主流の考え方になったら、いち早くその価値観を具現化することでしょう。
新しく創ることに賛同してくださって有難うございます。
ぜひ「理念とビジョン」を読んでいただき、理解者になっていただき、さらには活動への参加者になっていただけるとうれしいです。
>東の回廊さん
「理念とビジョン」をぜひ読み込んで、コメントをください。
「持続可能な国家」という理念は、G8はともかく、すでにEUのものになっています。よかったら、福島清彦『持続可能な経済発展――EUからの発想』(税務経理協会)を読んでみてください。日本が、いかに遅れているかがわかると思います。
「理念とビジョン」についてのコメントをさせて戴くお約束でしたが、書くのが非常に難しく、どのように書こうかと頭を悩ませております。
私は、「理念」という言葉を聞くと「企業理念」のようなものをイメージします。「企業理念」は、例えば「社会への貢献」とか、そういう抽象的できれいな言葉で語られます。("企業理念"で検索して戴けると、それらしい具体例が見つかると思います。) 関係者以外から見ると、「そんなのあたりまえじゃん」と映るかもしれません。しかし、関係者はその「社会への貢献」とは具体的にどういう行動をして、どういった貢献を齎すのかということを十分承知していますし、実際に社会貢献としての具体的な行動を実施しています。つまり、「理念」と「行動」が一致しているのです。だからこそ、「理念」が力を持つのです。「理念」だけでは、抽象度が高すぎて力になりません。それに相応しい「行動」が伴って、初めて効力を発揮するのです。
先生達の書かれた「理念」や「ビジョン」は、どちらかというと、「こういう社会になったらいいな」という願望であって、実際の行為とリンクしていません。例えば、「信頼できる透明な政府の樹立」とか、それに至るための「国民的合意」とか。どのようなことをすると その「国民的合意」が図れるのか、具体的な道筋が見えません。これでは効力を発揮しないと思います。
この「理念」の効力を発揮させるためには、それぞれの施策を実行可能なレベルにまで落とす必要があります。
例えば、(1)環境負荷をかけず、(2)経済的に健全に発展し、(3)安全・安心が担保できる、この3つを全て成立させるような施策を、いきなり国家レベルのような大上段の話にもっていくのではなく、自分達の手の届く範囲の小規模集団で"実行可能で具体的な形のビジネスモデル"として描くことができれば、スポンサーが付くでしょうし、1つでも成功例ができれば、それを核としてそのビジネスの拡張戦略が立てることができます。その戦略に則ってビジネスを拡大していけば、世の中に「持続可能なワークフェアコミュニティ」が増えていくわけですから、自ずと「持続可能な福祉社会」が実現します。
つまり、「理念」と「行動」を一致させるとは、こういうことです。
「理念」で"国民的な合意"を図ることはできません。なぜならば、日本の国民の大多数は"行為の裏付けのない単独の理念"に対しては興味を抱いていないからです。(こちらについては、後ほどトラックバックを送ります。)
「理念」に効力を与えるためには、「具体的な行動」によって範を示すことが必要です。
まずは、小さいモデルで成功事例を作ることがスタートだと思います。
以上です。
●先生達の書かれた「理念」や「ビジョン」は「こういう社会になったらいいな」という願望で具体的な道筋が見えません。これでは効力を発揮しないと思います。
●「理念」の効力を発揮させるためには、それぞれの施策を実行可能なレベルにまで落とす必要があります。
●(1)環境負荷をかけず、(2)経済的に健全に発展し、(3)安全・安心が担保できる、この3つを全て成立させるような施策を、いきなり国家レベルのような大上段の話にもっていくのではなく、自分達の手の届く範囲の小規模集団で"実行可能で具体的な形のビジネスモデル"として描くことができれば、やがて世の中に「持続可能なワークフェアコミュニティ」が増えていくわけですから、自ずと「持続可能な福祉社会」が実現します。
<所感>
・提唱されている理念、ビジョンは20年~30年程度かけなければ達成できない姿ですから、具体的道筋が見えないのが当然です。しかし、単なる願望ではなく、ソ連型社会主義とアメリカ共和党的新自由主義・市場原理主義の明白な破産を見据え、ではどの方向に進むべきかという大きな方向付けの役割はあると思います。
・しかし企業の活動を学んだ立場から類推すれば、大きな方向付けを確立した後、その方向に向けて10年程度でどういう形で実現できるかという大まかなデッサン(長期計画)を画く仕事が必要と思われます。次に、そうした10年程度かけて実現を目指すための3か年程度の人的物的資源の調達・配分戦略(中期計画)が築かれ、その上でこれから1年どうするかという具体的道筋を作成し提唱できるのではないかと思います。しかしこうしたオーソドックスなやり方で具体的道筋を明らかにするためには、専門的な知識を持つ人々との本格的な協同作業が必要であり、今のところ具体的道筋の提唱が行われていないのは、やむを得ないと思います。理念・ビジョンを理解し、共鳴された知識人がこの会に参加して、協同作業が活発に行われることを期待したいところですが、前途は遼遠です。
・そうすると、おっしゃるように、それに相応しい「行動」が伴わないので、効力を発揮することが難しいという壁にぶつかります。
・さりとて、東の回廊さんの「小さな成功事例が累積すれば、自ずと福祉社会が実現する」というご見解も無理があると思われます。「自ずと」という具合にはいかないと思います。なぜならば、スウェーデンやEUの経験をみる限り、政権党が「(1)環境負荷をかけず、(2)経済的に健全に発展し、(3)安全・安心が担保できる、この3つを全て成立させるような施策を提唱し実践しております。
政治の機能が現実利害の調整にとどまっている国々では、上述した3つをすべて成立させた事例が皆無です。
・以上2つの壁をどのように突破したらいいのか、じっくりと考えたいと思っています。