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林業の崩壊 : 上勝町視察旅行の記録(13)

2008年12月27日 | 上勝町
引き続き場所は県立・ふれあい館、笠松町長による私たち視察メンバーへのご説明が続きます。

そのように上勝町をはじめ日本全体の林業が成り立たなくなった原因は、一言でいうと「市場原理主義」の横行にあると町長はおっしゃいます。
このことに詳しくなかった私たちにとっても、説明をお聞きし、確かにそのことは明白であると思われました。

なぜ林業が崩壊したか――それは貿易のいっそうの自由化により、アメリカ、カナダはじめフィリピン等東南アジア諸国など世界中から、外国産木材が現地で精密に加工されたうえで格安の価格で入ってきてしまい、木材の市場価格が大幅に下落してしまっていることに尽きる、とのことです。

それに対し国産の木材は人件費をはじめ経費が相対的に非常に高くついてしまうため、外国産木材にはほとんど太刀打ちできず、国内では20%しか利用されていません。




このように「林業はすでに産業として成立していない」のだそうです。

そしてそのような危機に、残念ながらわが国の政策はずっと無策といっていいほどのなげかわしい状況であったようです。

というよりも市場原理主義の線に沿って進められてきたこれまでの政府の政策そのものがこの状態を招いているのだとのこと。

つまり林業が国土保全のために果たしている山林の維持という公益的機能について、ほとんど考慮されないままずっと進められてきた、むき出しの貿易自由化の促進とグローバルな価格自由競争の放置、これこそが山林をここまで荒廃させた当の原因であると、町長は義憤を込めておっしゃいます。


林業がいかに衰退ないし崩壊してしまっているか、それによりいかに国土・森林が荒廃してしまっているかは、恥ずかしながらこのご説明を聞くまで私たち視察メンバーの多くがあまり意識していなかったことです。

たとえば、かつて最盛期には約600人を数えた上勝町の林業従事者は、現在ではわずか20名弱に減少してしまいました。
徳島県全県でも600人にまで減少してしまっているとのことです。
2005年の国勢調査では全国の林業従事者は47,000人、うち約30%が65歳以上の高齢者で、高齢化は急速に進んでいるそうです。

日本の広大な森林面積に対し林業従事者が今やわずかに47,000人ということですから、いかに日本の山林に人手が入らなくなってしまっているかが、この数字だけでもわかります。

日本は国内の需要を満たして余りある木材が毎年備蓄されていながら、木材の自給率はわずか2割という状況にあるのだそうです。
世界第3位の森林面積割合を誇るわが日本が、皮肉にもいまや世界最大の木材輸入国になってしまっているのです。

(日本の国土の森林面積割合は67%、1位・2位はこれまた皮肉にもスウェーデンとフィンランドだそうです)


私たち日本人は市場の価格競争でたしかに自由に安いモノを消費し享受できるようになりました。

しかしその半面で、その市場原理主義こそが国土保全の重要な機能を担う林業を崩壊させ森林を荒廃させてしまったこと、
そんな日本に木材を輸出する東南アジアでは急速な森林の減少が深刻な環境危機を現に招いていること、
さらに世界全体ではわずか一年で日本国土の1/3の面積の森林が減少していることなど……
そのご説明から町長の心からの慨嘆が私たちにも伝わってきます。

そのように、日本の森林の荒廃とは、単に一地方や国内の問題というにとどまらず、経済のグローバル化へと狂奔してきた世界の状況と、不可分につながった深刻な問題であるのだと感じます。