ちいチャン物語

きまぐれブログ。
絵のない絵本のような、小さい物語です。

ちいチャン物語(19)『おじいちゃんのそろばん』

2019年08月15日 19時04分43秒 | 日記
 ちいチャンの家には、書斎と呼ばれる部屋がありました。
障子(しょうじ)と襖(ふすま)と押入れに囲まれていて、下は畳です。
その部屋に、ちょっと大きな机が置いてあります。
その机の両側には、引き出しが何段がついていて、机の真ん中には、大きな引き出しが付いていました。
大きな引き出しを開けるとすぐに、そろばんが目につきます。
そろばんは、黒っぽい茶色をしていて、少し重いです。
そろばんの玉は、木の線を境にして、上にひとつ、下に5つで、6個付いていました。
おばあちゃんは、
「下の玉ひとつずつが1円で、上の玉が5円と数えるんだよ。」
と、教えてくれました。
そして、
「下の玉5つと上の玉ひとつが合わさると、10円になるから、左側の下の玉をひと
つ上に上げて、右側の玉は全部、もとに戻すんだよ。左の玉は、ひとつが10円だか
らね。」
と、言いました。
(5円玉ひとつと1円玉5つで、10円。)
なんだか面白くて、1円、2円、3円、と玉をひとつずつ上に上げて、5つ上げ終わ
ったら、5円玉を下して1円玉を全部下します。
そして、10円になったら左の玉を上げて...10円!
そろばんは、ちいチャンのオモチャになってしまいました。
そろばんは、振るとカシャカシャと音がして、楽器のようです。
タンッ!と机の上に置いて、人差し指でシャッー!と5円玉を上げるのがいい気持ち
です。
しばらくして、ちいちゃんの家に、新しいそろばんがやってきました。
新しいそろばんは、5円玉はひとつでしたが゛、1円玉は4つしか付いていませんで
した。
(5円玉ひとつで5円、1円玉4つで4円、たしたら9円にしかならない。10円玉
を上げられない。10円に1円たりないなぁ。)
と、ちいチャンは思いました。
(やっぱり、おじいちゃんのそろばんがいい!)
ちいチャンが手にするのは、やっぱりいつも、おじいちゃんのそろばんでした。
コメント
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