ちいチャン物語

きまぐれブログ。
絵のない絵本のような、小さい物語です。

ちいチャン物語(17)『怖いトイレ』

2023年08月31日 19時18分36秒 | 日記
ちいチャンの家のトイレは、家の外にあって、外のお風呂と屋根でつながって
います。
トイレは、女性用が二つと男性用がひとつで、男性用のトイレは、タイルで出
来た壁に白い便器が付いていました。
女性用のトイレは、男性用トイレの隣に一つずつの個室になっていて、一段高
くなっています。
そして、中には陶器で出来た便器が付いています。
便器は、床をくり抜いた穴にはめ込んだ形になっていて、底面がありません。
ちいチャンの家のトイレは汲み取り式です。
便器から下をのぞくと、深さは2.5メートルぐらいあります。
便器は、しゃがんで手でしがみ付く所以外は空洞なので、人が一人すっぽりと
入ってしまいそうです。
ちいチャンは、トイレに行くたびに、
(ドボ~ン!と下に落ちたらどうしよう?)
と、ヒヤヒヤします。
便器のまわりの床は板張りで、キシッキシッと音がして、板が抜けそうな気も
します。
(板が腐れて、踏み外したらどうしよう?)
と、ドキドキします。
いつも、いつも、ヒヤヒヤします。
いつも、いつも、ドキドキします。
便器は取り外す事も出来て、時々、おばあちゃんは便器をトイレから外して
、トイレ用のタワシでゴシゴシと洗います。
便器は陶器なので、外すのはとても重そうです。
でも、便器を外されたトイレは、もっと怖くなります。
なぜって、つかまる所が何も無い、ただの穴がそこにあるからです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちいチャン物語(16)『メダカ採り』

2023年08月30日 19時53分49秒 | 日記
ちいチャンの家の近くに、海に流れ込む川があります。
川の幅は、3~5メートルぐらいで、深さは、膝から腰ぐらいです。
流れはゆるやかで、川底の石が見えるほど透きとおっています。
その川にはメダカがたくさんいて、足を踏み入れるとパアッ!と散って逃げます。
ちいチャンは、バケツとザルを持って、メダカ採りをします。
この川のメダカは、のんびりやさんで、ちいチャンがザルで川の水をすくうだけで
、簡単にザルの中に入ってしまいます。
でも、ザルに入るのは数匹で、やっぱりたくさん採りたいと、ちいチャンは思いま
す。
そこで、ちいチャンは、ザルを手に持って水に沈め、メダカがザルの上を通るのを
ジッと待ちます。
メダカの集団が、ザルの上を通ったら、ザバッ!とザルを持ち上げると、うまく行
けば、たくさんのメダカが採れます。
そして、川の水を汲んでおいたバケツの中に離します。
バケツにメダカを離す時は、手で入れずに、ザルごとバケツの水に沈め、ザルから
離れて泳ぐのを見届けます。
メダカは、バケツの中で元気に泳ぎます。
男の子たちは、小さいメダカだけではつまらないようで、もっと大きな魚を採るの
にチャレンジをします。
それは「かじか」と言って5~10㎝ぐらいの魚です。
「かじか」は、川の石の下に潜んでいたりする様で、男の子たちはよく石をひっく
り返して探していました。
「かじか」は、メダカほどのんびりはしていなくて、石をどけられると、すごい速
さで逃げます。
「かじか」を採るのにはコツがあって、まず、「かじか」の逃げ込んだ石を見つけ
、その石の前に、しずか~にザルを差し込み、えいっ!と石をどけます。
隠れ場所を失った「かじか」が、慌てて飛び出してザルの中に入るのを見届けて、
今だ!とばかりに、ザルを引き上げます。
でも、「かじか」の泳ぐ方向を間違えると、ザルの中には石の下の砂やゴミが入る
だけでした。
ちいチャンも、何度か「かじか」採りにチャレンジしてみましたが、一度も採る事
ができませんでした。
ちいチャンは、採ったメダカは帰りには、川に離してあげました。
この川は、ちいチャンの大自然の水槽なのでしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちいチャン物語(15)『木の冷蔵庫』

2023年08月26日 20時24分58秒 | 日記
ちいチャンの家には、冷蔵庫がありますが、全体が木で出来ているのです。
中を開けると、内側は金属でおおわれていて、四角い大きな氷が入っています。
ちいチャンの町には、「氷屋さん」というお店があって、それは、魚屋さんが
やっていたりもするのですが、電話で氷を注文をすると、大きな氷を持ってやっ
て来て、お客さんの家で、注文の大きさに切ってくれます。
おばあちゃんは、氷の重さを、「一貫目」とか「二貫目」とか言っていましたが、
それはたぶん1㎏とか2㎏の事なのだと、ちいチャンは思いました。
氷屋さんは、大きなのこぎりを持って来て、シャリ!シャリ!シャリ!っと、氷
を注文の大きさに切ってくれます。
氷を切ると、氷のクズが雪のようにこぼれ落ちます。
(キレイ!)
ちいチャンは、思いました。
でも氷のクズは、すぐに溶けて水になってしまいます。
おばあちゃんは、四角い固まりに切ってもらった氷を、木の冷蔵庫に入れます。
そして、氷の上にはお魚を乗せ、パタン!と扉を閉めました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちいチャン物語『土間の薪』(14)

2023年08月23日 20時08分07秒 | 日記
ちいチャンの家の台所の土間には、ちいチャンの背丈よりも高く、薪(まき)が
積んであります。
これは、お風呂を焚(た)く時の為の薪です。
ちいチャンの家のお風呂は、家の外にあって、お風呂の外にはお風呂を沸かす焚
き口がありました。
地面より少し低くなっていて、下に向かって階段が2つ付いています。
おばあちゃんは、夕方になると毎日そのたき口にしゃがんで、お風呂を沸かしま
す。
たき口の扉は鉄で出来ていて、側には、熱くなった扉を開ける為の鉄の棒が置い
てありました。
おばあちゃんは、たき口の扉を開けて、新聞紙をクシャクシャっと丸めて入れ、
お弁当箱みたいに大きいマッチ箱から、マッチを取り出して、シュッ!と擦(す)
ります。
マッチは、シュウウウと音を出して、小さく燃えます。
その火を新聞紙に移し、火が付いた所で薪を入れます。
ちいチャンは、火の燃える様子が面白くて、おばあちゃんがお風呂を沸かすのを
いつも見ていました。
「ちいチャンも、やりたい!」
ちいチャンは、おばあちゃんに言いました。
すると、おばあちゃんは、
「小さい子が火をいじると、おねしょをするよ。」
と、言いました。
ちいチャンは、もう、おねしょはしない年になっていたので、
(おねしょをしたら恥ずかしい。)
と、思いました。
だから、やっぱり見ているだけにする事にしました。
お風呂を沸かしたたき口の下は、翌朝になると灰がたくさん溜まっています。
おばあちゃんは、灰をスコップのような物で取り出すと、水をかけます。
火は消えていますが、用心に用心です。
そして、その灰は、植木の肥料になるようでした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちいチャン物語『馬のフン』(13)

2023年08月21日 20時37分06秒 | 日記
ちいチャンが小さい頃、道路を馬が歩いていました。
馬には、手綱を持って付き添って歩いている人がいます。
馬は、本当にパッカパッカと音をたてて歩きます。
カポンカポンという音にも聞こえます。
馬の後を後ろから歩いていると、突然の出来事に見舞われる時があります。
馬は、シッポをひょい!と上に持ち上げると、ボトボトボトとフンをするのです。
話に夢中になって歩いていると、出来立てのフンをグニャっと踏んでしまう危険が
あります。
出来立てのフンは、ホカホカと湯気が出ています。
子供たちの間では、
゙馬のフンを踏むと背が伸びる゛
とされていて、背の低いちいチャンは、馬のフンを踏む事にチャレンジしようと
思っていました。
でも、ホカホカのフンはフニャフニャで、大量で、靴が汚れてしまいそうです。
ちいチャンは女の子だから、
(フンだらけの靴はイヤだなあ...。)
と、思いました。
馬のフンは、日にちが立つと、干からびたワラの固まりみたいになって、ちいチ
ャンは、
(乾いたフンなら踏める!)
と、思いました。
そこで、乾いたフンの上を歩いてみました。
乾いたフンは、枯草の上を歩いているみたいで、靴も汚れませんでした。
(背、大きくなるぞ!)
ちいチャンは、ちょっぴり嬉しくなりました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちいチャン物語(12)「やっぱり女の子」

2023年08月19日 19時13分07秒 | 日記
おばあちゃんの鏡台に、黒い口紅のような物がありました。
ちいチャンは、おばあちゃんがお化粧をしている時、
いつも、側で見ています。
その黒い口紅のような物は、髪に塗る物らしいのです。
おばあちゃんは、耳の近くの髪の毛の生え際や、前髪の付け根に
塗っています。
見ていると、髪の白くなっている部分に塗っています。
ある日、
ちいチャンは、その黒い口紅のようなものを、眉毛につけてみました。
うぶげのような眉毛は、黒いはっきりした眉毛になりました。
鏡に顔を近づけたり、離したり。
ちょっと大人になった気分です。
でも、
おばあちゃんに見つからないように、眉毛はふき取って、
黒い口紅のようなものは、そっと、もとの場所に戻しておきました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちいチャン物語(12)『海に浮かぶ飛び込み台』

2023年08月17日 20時03分18秒 | 日記
ちいチャンの町には、海水浴場があります。
海水浴場は、海岸の真ん中へんにあって、泳げる範囲を浮きで囲ってあり、少し沖合
いには、木で作られた「飛び込み台」がありました。
飛び込み台は、いかだにコタツを乗せたような形をしていて、はしごのような階段が
ついていました。
飛び込み台のてっぺんは、座ったり、寝そべったりできるように、板張りになってい
ます。
飛び込み台は、少し沖合いにあるので、そこへたどり着く途中に、休憩をする為の丸
太が浮かんでいます。
それは、両端をロープでくくり、重しで流されないように安定されています。
プカッ、プカッと浮いています。
子供たちの泳ぎには、段階があるようです。
あまり泳げない子供たちは、波打ち際で走ったり、水をかけあったり、泳ぎの真似を
してみたり。
少し泳げる子供たちは、休憩の丸太を目指します。素泳ぎだったり、浮き袋を片手に
持って泳いだり。
浮き袋を持つのは、丸太にたどり着く前に疲れてしまったら、つかまって休むためで
す。
泳ぎに自信のある子供たちや大人は、一直線に飛び込み台を目指します。
早い!早い!白い波しぶきをあげて、見る間に飛び込み台にたどり着きます。
飛び込み台まで泳げた人は、たいてい階段を上り、海めがけて飛び込みます。
ずう~んともぐって、ぷはっ!と海面に顔を出します。
時には、浮き袋で泳いでたどり着いた子供が、浮き袋のまま飛び込み台からジャンプ
して、自分の身体だけがすっぽりと浮き袋から抜けて、沈んでしまったりする子供が
います。
「おい!浮かんでこないぞ!」
飛び込み台の上で、誰かが言います。
飛び込み台の上は、勇者がたくさんいるので、何人かで飛び込んで、沈んだ子供を引
き上げます。
ちょっと恐いこんな出来事も、ちいチャンが小さい頃は、笑い話ですむ出来事のよう
でした。
ちいチャンも、波打ち際の泳ぎから、丸太まで、そして、飛び込み台まで、と泳げるようになって行くのでした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちいチャン物語(11)『おばあちゃんのミシン』

2023年08月15日 20時24分08秒 | 日記
ちいチャンの家には、ミシンがあります。
ミシンは机のようになっていて、イスに腰かけると足を乗せる所が、四角になっています。
その四角い足のせ台を前後に踏むと、ミシンが動くのです。
足のせ台を踏む前に、ミシンの右側にある丸いドーナッツみたいなものを、手前にクルッ
と回さなければいけません。
ミシンには、自転車のタイヤのようなものが付いていて、そこにベルトが掛けてあります。
ベルトは、丸いドーナッツみたいなものにつながっていて、おばあちゃんがミシンを踏む
とグルグル回ります。
時々、そのベルトは外れたりするので、おばあちゃんは、掛け直すのが大変です。
そのベルトは、びろ~んとのびてる時があって、その時はベルトの交換です。
ある日、おばあちゃんは、大きな巻物のような布を部屋の奥から出して来ました。
布の端を持って、巻物をころがし、何枚かの大きな布に切り分けました。
それから、ミシンでカタカタと縫い始めました。
(何を作るのかなぁ。)
ちいチャンは、おばあちゃんのミシンの側で、おばあちゃんが何かを作っているのを見て
いました。
おばあちゃんのミシンは、朝から始まり、昼が過ぎ、夕方までかかりました。
何枚かの大きな布、それは、縁側のカーテンでした。
おばあちゃんは、踏み台に上がると、1枚1枚取り付け始めました。
新しいカーテンです。
縁側は、ずうっーと長いので、カーテンが何枚も必要です。
それから長さも、長く必要です。
おばあちゃんは、両開きにはしないで、柱から柱までを1枚、柱から柱までを1枚、と、
作りました。
これは、カーテンを開けたり閉めたりするのに、とても便利でした。
閉める時、カーテンを持って、ずんずんずんと縁側を歩きます。すると、ふたつめのカー
テンにたどり着き、またそのカーテンを持って、ずんずんずんと歩きます。
朝、カーテンを開ける時は、一番奥から開けて行きます。
閉めた時と、反対方向へ歩きながらカーテンを開けて行きます。すると、ふたつめのカー
テンがそこにあるので、カーテンの端を持って、また開けて行きます。
新しいカーテンが嬉しくて、ちいチャンは、カーテンの裏へまわると、モコモコモコとカ
ニさん歩きをしました。
カーテンは、新しい布の匂いがしました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちいチャン物語(10)『夢中になってしまう場所』

2023年08月12日 20時41分22秒 | 日記
ちいチャンの家の近くに、床屋さんがあります。
おじいちゃんは1ヶ月に1度、床屋さんに行きます。
ちいチャンは、おじいちゃんと一緒に床屋さんに行って、待っているのが好きです。
なぜって、床屋さんには、たくさんの本があるからです。
男の子用の漫画の本、女の子用の漫画の本。
漫画が大好きなちいチャンは、おじいちゃんと床屋さんのおじさんが、話をしているのも聞
こえないほど、夢中になって読んでいます。
おじいちゃんが床屋を終わって帰る時、
「ちいチャン、帰るよ!」
おじいちゃんが声をかけても、ちいチャンには聞こえません。
おじいちゃんは、床屋さんのおじさんに、小声で聞きます。
「(ちいチャンを)置いて行ってもいいかい?」
床屋さんのおじさんは、
「いいですよ。」
微笑みながら答えます。
ちいちゃんは、お店の中に人がだ~れもいなくなっても、気が付きません。
気が付いたのは、太陽が西の空に沈みかけた頃でした。
「おじさ~ん!帰るから~!」
と、ちいチャンは大きな声で言いました。
「気をつけてなー!」
床屋さんのおじさんが言いました。
ガラガラガラッ、床屋さんの入口の戸を開けて、ちいチャンは走り出します。
夕焼けが、ちいチャンの顔を赤く染めます。
(明日、漫画のつづきを読ませてもらおうかなぁ。)
まだまだ読み足りない、ちいチャンでした。
翌日、
「漫画みせてくーださーい!」
床屋さんの入り口には、ちいチャンの姿がありました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちいチャン物語(9)『岩場の生き物』

2023年08月11日 20時08分38秒 | 日記
ちいチャンの町には、桟橋があります。
桟橋の左側は砂浜で、右側は岩場になっていました。
ちいチャンは、お友達と一緒だったり、ひとりでだったりと、よくその岩場に行きます。
岩場には、大きな岩や小さな岩があり、少しだけ歩ける砂浜もあります。
岩場には、たくさんの生き物がいます。
岩の間にできたくぼみには、海水が少し入っていて、イソギンチャクや小さな魚やヤドカリ
がいました。海藻もあります。
ちいチャンは、イソギンチャクを指でつついてみると、シュッ!と水を吐きながらしぼみま
す。
イソギンチャクは、開いている時は、花のような形をしていて、指でつつくと、きゅっ!と
丸くなってしぼむのです。
そして、また静か~に開き始めます。
イソギンチャクの上を小さな魚が泳いでいました。
ちいチャンが指を入れると、魚は、クルッ!と向きを変えます。
ちいチャンは、それが面白くて何度も何度も、水の中に指を入れ、魚の動きを見ています。
それから、岩場には小さなカニがいて、岩の隙間から、そろ~と目を出して、ちょろちょろ
っと出て来ます。
1㎝ぐらいの小さなそのカニは、ちいチャンが上から手をかぶせると、すぐに捕まって、手
の中でカサカサと動くので、ほんの少しくすぐったいです。
だから、時々このカニで、お友達と我慢くらべをしたりします。
手の平にカニをのせて、カニが腕をよじ登るのを、どこまで我慢ができるのか、というもの
で、くすぐったさに負けて、カニを落としてしまった方が負けです。
我慢しすぎると、カニが腕から肩、肩から背中まで、ぐるっと回って行ってしまうので、
「取って!取って!」
と大騒ぎ。
それから、大きな岩にはフナムシがいます。
すごい速さで歩きます。走ります。
サササササッ!サササササッ!たくさんの足で、スピード全開。
ちいチャンは、フナムシは虫のようなので、あまり好きではありませんでした。
フナムシが、ちいチャンの手のそばを横ぎったり、座っているそばを通り過ぎると、少しゾ
ワッ!とします。
(フナムシは、なんだかチョットさわりたくないなぁ。)
と、ちいチャンは思いました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちいチャン物語(8)『海を飛ぶ白い鳥』

2023年08月10日 19時58分59秒 | 日記
とっても天気のいい日です。
ちいチャンとおばあちゃんは、砂浜をお散歩しています。
空は、まぶしいくらいに真っ青で、ところどころに白い雲。
雲は、動くのを忘れているかのように、じっとしています。
空には、ミュウ!ミュウ!と鳴く白い鳥がたくさん飛んでいます。
「ウミネコがたくさんいるね。」
おばあちゃんが言いました。
「ウミネコ?」
ちいチャンが聞き返します。
「ほら、いっぱい空を飛んでいるだろ。」
おばあちゃんが答えます。
「おばあちゃん、あれは鳥だよ。ネコじゃないよ。」
すると、おばあちゃんは少し笑いながら、教えてくれます。
「ミュウミュウって鳴く声が、猫の鳴き声に似てるから、ウミネコって言うんだよ。」
そう言うと、おばあちゃんは、防波堤の階段に腰をおろし海をながめます。
空と海の交わるところは、まっすぐの一本線になっていて、折り紙のように折り返したら、
空と海が重なるようです。
空の青と海の青は、すこ~し色が違います。
ちいチャンは、おばあちゃんの隣に腰かけます。
「おばあちゃん!猫は、ミュウ!ミュウ!じゃなくて、ニャ~ンって泣くよ。」
空を飛ぶ、たくさんの白い鳥をながめながら、ちいチャンは、少し不思議に思うのでした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちいチャン物語(7)『自転車』

2023年08月09日 20時26分15秒 | 日記
ある日、ちいチャンの町に自転車やさんが出来ました。
それは、物置みたいな建物で、中には自転車がたくさん並んでいました。
その建物の中で、おじさんはネジをいじったり、ドライバーを回したりしています。
道行く人には、笑顔で、
「こんにちは!」
と、挨拶をします。
ちいチャンの町の子供たちは、自転車を持っていません。
自転車が珍しく、おじさんが何か機械をいじっているのを見るのも珍しく、自転車やさんの前には、いつも
大勢の子供たちが集まっていました。
自転車やさんのおじさんは、とても気さくな人で、子供たちと気軽に話をします。
その内、子供のひとりが自転車を買ってもらいました。
補助車を付けて、海辺の道路で練習をしています。
練習をしている子のまわりには、いつもたくさんの子供たちがいました。
気が付くと、子供たちみんなが自転車持ちになっていました。
道路は、補助車を付けて練習をする子供たちでいっぱいです。
ちいチャンも、みんなよりは少し遅れて自転車を買ってもらいました。
補助車が取れて、ピュンピュン走る友達がかっこよく見えました。
ちいチャンは、早く補助車を取りたくて、朝から日が暮れるまで、毎日練習をしています。
毎日、毎日、練習をしています。
そうしたらお尻が痛くなって、自転車に座れなくなってしまいました。
ちいチャンのおしりは、真っ赤になって腫れていました。
ちいチャンは、お風呂の熱いお湯がしみるので、湯船に入れません。
おばあちゃんは、たらいにお湯を張り、白い粉のような物をいれてかき混ぜ、
「はい、ここに入りなさいょ。」
と、言いました。
たらいの白いお湯は、つるんつるんとしていて、入ってもしみません。
(魔法の粉だぁ。)
翌日、おばあちゃんは、自転車用にひもの付いた座布団を作ってくれました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちいチャン物語(6)『お墓の掃除』

2023年08月08日 19時27分29秒 | 日記
8月、お盆が近くなるとちいチャンは、おばあちゃんと一緒にお墓の掃除に行きます。
朝5時に起きて、まず掃除道具の用意です。
バケツ、新しいタオル、ほうき、草刈カマ、ヤカン、新聞紙、タワシ、新しい湯飲み茶わんを2コとお花。
ちいチャンとおばあちゃんは、掃除の荷物を分けて持ちます。
お墓は、山のてっぺんにあります。
ちいチャンとおばあちゃんは、掃除の荷物を持って山の坂道を歩かなければいけません。
おばあちゃんは、おばあちゃんなので、坂道を歩くのが少し大変そうです。
時々、立ち止まって地面に荷物を置き、小さくため息をつきます。
お墓に着いたら、おばあちゃんはやかんの水を墓石にかけて、タワシでごしごし洗います。
それから、新しいタオルで拭きます。
古い湯飲み茶わんを新しい湯飲み茶わんに取り替えて、2つ並べて置きます。
そして、お墓のまわりをほうきできれいに掃きます。
それから、石で出来た花瓶には、水を入れて花を供えます。
ちいチャンは、お墓のまわりの草を草刈カマで、とります。
墓石には、鳥のふんがついていたりするので、きれいにするのに時間がかかります。
お墓のまわりの雑草は、背丈が高く根がしっかりしています。引っ張ると、抜けた拍子に尻もちをつく事がありま
す。カマで取るのにも全力投球です。
ちいチャンとおばあちゃんは汗がびっしょり。
古い湯飲み茶わんを新聞紙でくるみ、家に持ち帰ります。
「カラスが散らかすから、お菓子はお供えしないで帰ろうね。」
おばあちゃんが言いました。
そして、おばあちゃんはお墓に向かって手を合わせ、目を閉じます。
ちいちゃんも、おばあちゃんのマネをして、お墓に向かって手を合わせました。
(お墓のおじいちゃん、おばあちゃん、「ちいチャン」です。ゆっくり寝てください。)
ちいチャンは、心の中でそんなことを、つぶやきました。
空には、ギラギラの太陽が照らし始めています。
おばあちゃんの足取りは、行く時よりももっとゆっくりになりました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちいチャン物語(5)『海辺のベット』

2023年08月07日 20時03分01秒 | 日記
ちいチャンの海辺の町には、道路にそって防波堤があります。
防波堤には、10メートルおき位に階段があって、そこから砂浜に降りられます。
階段は、5段ぐらいでしょうか。
防波堤を降りると、半分ほど砂に埋もれた大きな石がたくさんあります。
そして、そこから海まで白い砂浜が続いています。
昼間は、波は少し離れたところにあって、砂浜が広いのです。
その防波堤の下の大きな石の中に、ちいチャンが気に入っている石があります。
それは、長方形の長い石で、表面がつるつるとしています。
ちいチャンがゴロンと寝ころぶのに、ちょうどいい大きさをしていました。
ちいチャンは、その石の上に仰向けに寝てみました。
目を閉じると、ザザザザザザ~ン、と波の音が聞こえます。
目を開けると、目に見える全部が青い空!
(うふっ、ベットに寝てるみたい。)
ちいチャンは、
(ベットが欲しいな~。)
と思っていたので、とっても幸せな気分になりました。
ぽっかぽっかのお日様と静かな波の音。
ちいチャンは、うとうととうたた寝をしてしまいます。
ちいチャンの海辺の特等席です。
そんなちいチャンの楽しみが、数日続いたある日の事です。
いつものように、防波堤を降りると、ベットの石がなくなっていました。
ちいチャンは、毎日海をながめているので、砂浜や石の場所が違ったりするのは知ってい
ました。
けれど、ちいチャンが寝られる程の大きな石は、ずっとそこにある、と信じていました。
(波が持って行っちゃったのか。)
防波堤の階段に腰かけて、ちいチャンは海を見つめます。
(重そうな石だったのに。)
あきらめきれずに、ちいチャンは、ずうっとずうっと、海を見つめていました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちいチャン物語(4)『ペスのお皿』

2023年08月05日 20時36分34秒 | 日記
ちいチャンの家には、「ペス」という名前の犬がいました。
番犬のようなのですが、家の人にも吠えるのです。
ペスの吠え方は、ワオーン!ワン!ワン!ワン!ワン!と、こんな感じです。
お客様が来た時も、ちいチャンが外から帰って来た時も、とにかく敷地内侵入者!とペスが
決めたら吠えるのです。
「ペス!」
ちいチャンが声をかけると泣きやんで、しっぽを振ってジャンプジャンプ。
ちいチャンの家は古い家で、お庭がちょっと広いのです。
ペスは、お庭のずっと奥にいます。
ペスにご飯をあげるのは、ちいチャンの仕事です。
朝と夜の二回、ちいチャンはペスのお皿にご飯を入れると、しゃがんでペスがご飯を食べるのを見ています。
あっという間に、ペスのお皿はからっぽです。
ちいチャンの家では、ドッグフードではなく、ご飯にお味噌汁をかけて、その上にお魚の骨
やおかずの残りを乗せて、ペスのご飯にしていました。
ペスのお皿を洗うのも、ちいチャンの仕事でしたが、ペスがご飯を残した時は、洗うのがイ
ヤになる時があります。
時々、ちいチャンはズルをして、ペスのお皿を洗わずに、そのままご飯を入れる時がありま
す。
そんな時のペスは、少し悲しそうな顔をして、どこから口をつけようか...と、お皿のま
わりをグルグルまわり、観念したかのようにご飯を食べます。
新しいご飯の下には、古いご飯が残っているから...。
だからペスは、やっぱりまたご飯を残します。
そんな日の翌日は、外の水道のところにペスのお皿がおいてあり、水が入れてあります。
残ったご飯は、からからに乾いて取れないからです。
朝起きて、外の水道にペスのお皿を見つけると、ちいチャンは、
(ペスのお皿は、ちゃんと洗ってあげよう!)
と、思うのでした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする