朝の明けきらない暗い時間に、漁師さん達は沖へ向かって船を走らせます。
そうして捕った魚を桟橋で、町の人達に売ってくれます。
おばあちゃんは、漁師さんの船が帰って来る時間を見計らって、ボールとザルを持ち、
エプロンのポケットには財布を入れて、いそいそと桟橋に出かけます。
ちいチャンが起きる頃には、おばあちゃんは台所で魚と格闘をしています。
漁師さんが捕って来たばかりの魚は元気がよくて、まな板の上で、ピチピチと跳ねて
、さばくのが大変です。
時々、おばあちゃは指をケガします。
魚は、お刺身になったり、アラ汁になったり、煮魚になったり。
ちいチャンの家では、朝の新鮮な内に刺身にして、朝食に刺身が出ます。
ちいチャンは、
(お刺身おいしいけど、卵焼きとふりかけの朝ご飯がいいなぁ。)
と、思います。
夕食は、魚づくしです。
刺身、焼き魚、アラ汁、見渡すと魚以外のものはタクアンだけだったりする事があり
ます。
そして、おばあちゃんの作るカレーは、魚のカレーです。
目の前の海で漁師さんが捕った、とても贅沢な食事だったという事を知るのは、ちい
チャンが大きくなってからの事でした。