ちいチャン物語

きまぐれブログ。
絵のない絵本のような、小さい物語です。

ちいチャン物語(49)「不思議な出来事」

2022年03月30日 18時52分02秒 | 日記
ちいチャンの町で、不思議な出来事が起こりました。
子供達が遊んでいると、突然、足に切り傷が出来る、というものです。
日にちをずらして、何人かが怪我をしたので、町ではちょっとした話題になり
ました。
大人たちの言う事には、“カマイタチ”というものの仕業の様でした。
ちいチャンは、“カマイタチ”のカマを抜かして、
(イタチ?)
と、思いました。
(イタチが、子供の足を切ったの?)
どうしてかなぁ、どうしてかなぁ、と思っていると、大きいお兄さんが、こん
な話をしてくれました。
「空気中に、真空の場所が出来て、それが足に触れると、皮膚が切れるんだよ。」と。
その現象を、“カマイタチ”というのだそうです。
切れた瞬間は、痛くはないらしいのですが、切られた子供の足の白い包帯は、痛そうでした。
ちいチャンは、家に帰る途中、枯葉が風でクルクルクルクルと渦を巻いているのを見つけました。
(もしかしたら、この渦の真ん中が真空なのかもしれない。)
と思って、クルクル渦巻く枯葉を、遠巻きにして家に帰りました。
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ちいチャン物語(48)「空白の瞬間」

2022年03月29日 19時24分01秒 | 日記
ちいチヤンの家から少し離れた近所の家に、赤ん坊が生まれました。
おばあちゃんは、ちょくちょく赤ん坊の顔を見にいきます。
その日、
ちいチャンは、おばあちゃんと一緒に赤ん坊の家に行きました。
おばあちゃんは、赤ん坊を抱いて、玄関の階段を下り、庭に出ます。
ちいチャンも、おばあちゃんに付いて、庭に出ました。
少しして、おばあちゃんが、
「ホラッ!ちいチャンも抱っこしてごらん。」
と、言って赤ん坊を、ちいチャンに渡します。
ちいチャンは、赤ん坊を抱くのは初めてでした。
赤ん坊は、思ったよりも重くて、でも、頑張って抱いていました。
「おばあちゃん、重くなって来た...。」
と、ちいチャンが言うと、おばあちゃんは、
「じゃ、お母さんの所へ、連れて行ってあげなさい。」
と、言います。
ちいチャンは、おばあちゃんに、赤ん坊を渡したかったけれど、
(お母さんの方が、いいのかな。)
と思い、玄関の階段に足をかけました。
玄関の階段は、ちいチャンの膝より高く、赤ん坊を抱いての階段は、上るの
が大変でした。
「よいしょ!」
なんとか一段目を上り、二段目に足をかけた時、ちいチャンは、赤ん坊の重み
でバランスを崩し、赤ん坊を抱いたまま、階段から転げ落ちてしまいました。
家の中からは、赤ん坊のお母さんが、庭からはおばあちゃんが、慌てて飛ん
で来ます。
ちいチャンは、階段から落ちた後の事は覚えていません。
ちいチャンが、赤ん坊をしっかり抱いていたので、赤ん坊は無事のようでし
たが、ちいチャンはどうなったのか、ちいチャンは覚えていません。
数日後、ちいチャンの肘や膝には、広い範囲で、黒いかさぶたが出来ていました。
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ちいチャン物語(47)『喧嘩ばかりのシロとコロ』

2022年03月28日 19時48分30秒 | 日記
ちいチャンが小さい頃、犬は割と自由に道路を歩いていました。
たいていは飼い犬なので、人を襲ったりする事はありません。
でもちいチャンは、見たことのない犬と出会ったりすると、やっぱり恐くて、そお~と道の反対側に渡り、見ないふりをしました。
時には、よだれを垂らして舌を出している犬もいたりして、子供建は、
「狂犬病だ!」
と言って、近づかないようにしていました。
近所の犬は、お互いが出会っても、ほとんどはケンカをしません。
でも、シロとコロは違っていました。
しょっちゅう道で出会うという訳ではありませんが、会えば必ずケンカをします。
それはもう、凄まじいものです。
シロの毛は白で、コロの毛は茶色でした。
ちいチャンは、シロはケンカに弱いと思います。
ケンカの後はいつも、シロの白い毛が、血で赤く染まるからです。
コロは、毛が茶色なので、怪我をして血が出ていてもわかりません。
ケンカを仕掛けるのは、いつもコロです。
ちいチャンは、
(シロは逃げればいいのに。)
と、思います。
でも、シロは決して逃げもせず、向かって来るコロに挑みます。
広い範囲に渡り、転げまわり、咬みつき、うなり、相手を離しません。
コロの飼い主は勇敢に、ケンカに割って入りコロを引き離します。
シロは、離されたコロに、再び向かっては行きません。
白い毛を赤く染めて、飼い主の元へ帰ります。
シロは、普段はおとなしい犬です。
ちいチャンが、シロの家に用事を頼まれて行った時などは、シロはシロの家の中で、じっとしています。
吠えたりもしません。
ケンカで怪我をしたシロに、飼い主は“赤チン”を塗ってあげます。
シロの、白い毛の赤い範囲が、もっと広くなります。
それを見る度に、ちいチャンは、
(シロ...、コロを見つけたら逃げるんだよ。逃げなさいよ。)
と、心の中でつぶやきます。
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ちいチャン物語(46)「月のウサギ」

2022年03月26日 19時47分34秒 | 日記
ちいチャンは、月のウサギを信じています。
本に、
「月で、ウサギが餅をついている。」
と、書いてあるのを読んだ日に、夜空にまあ~るいお月様が出ていました。
(本当かなぁ。)
ちいチャンは、月を見上げて、じいーと見てみました。
すると、月が大きく見えて来ました。
そして、絵本のようなウサギさんが、手に杵(きね)を持って左側に立って
いて、絵本のようなうすが右側に見えました。
(あっ!ウサギとうすだ!)
そう思ったちいチャンは、
「月でウサギが餅をついている。」
という話は本当だ、と思いました。
その日から月を見ると、いつも同じ場所に、ウサギとうすが見えました。
月の出ている夜は、お話の世界に入れる、夢見るちいチャンなのでした。
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ちいちゃん物語(45)「柱時計とおじいちゃん」

2022年03月25日 19時18分39秒 | 日記
玄関を入ってすぐの部屋の壁に、柱時計がありました。
おじいちゃんは、時々、この柱時計のネジを巻きます。
家のどこからかネジ巻きのネジを持って来て、踏み台に上がり、ガラスの扉を開けて、ジーコジーコとゆっくりとネジを巻きます。
そして、
「今、何分だ?」
と、おばあちゃんに聞きます。
おばあちゃんが、小さな時計を見て時間を言うと、おじいちゃんは、時計の針に手を当てて、時間を合わせます。
時には、時計の針をぐるっと回し、ボーン!ボーン!ボーン!と音を出させる時もあります。
そして、振り子を軽く動かし、ガラスの扉を閉めます。
柱時計のネジ巻きは、おじいちゃんしか知らないらしく、おじいちゃんだけの仕事でした。
柱時計は、30分には1回ボーン!と鳴ります。
それから、時間になるとその回数だけ、ボーン!ボーン!と鳴ります。
振り子は、右にコッチン!左に、コッチン!と音をさせています。
コッチン!コッチン!コッチン!コッチン!
振り子の音は、おじいちゃんの眠気を誘います。
おじいちゃんは、ひじ掛けみたいな枕に頭を乗せると、いびきをかき始めました。
柱時計とおじいちゃんの、のどかな昼下がりの光景です。
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ちいチャン物語(44)「少し恥ずかしい」

2022年03月23日 19時29分25秒 | 日記
おばあちゃんは、ブラジャーの事を、“ちちバンド”と言います。
(昔の人だから、仕方がないのかなぁ。)
と、ちいチャンは思いますが、少し恥ずかしいです。
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ちいチャン物語(43)「お化粧の境界線」

2022年03月22日 18時38分29秒 | 日記
ちいチャンは、近所のオバちゃんに会いました。
オバちゃんは、いつもは真っ黒に日焼けした顔をしています。
今日は、白くお化粧をしています。
唇には、赤い口紅をしています。
「あら!ちいチャン、こんにちは!」
そう言うとオバちゃんは、いそいそと通り過ぎて行きました。
ちいチャンは、お化粧をしている女の人を見ると、いつも思います。
(どうして顔だけお化粧なのかなぁ。)
ここから顔、ここから首、みたいに別れているのが、どうしても不思議です。
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ちいチャン物語(42)「障子の開け方」

2022年03月21日 18時56分01秒 | 日記
おじいちゃんに、お客様が見えています。
ちいチャンは、おばあちゃんに頼まれて、お客様にお茶を持って行きます。
お盆に、茶托とお茶の入った湯飲み茶碗、そして、お茶受けのお菓子と漬物
が乗っています。
お盆を持ったら、ちょっと重いです。
おじいちゃんのいる部屋へ行こうとしたら、障子が閉まっています。
ちいチャンは、両手でお盆を持ったまま、障子を開けられないので、右足で
ヒョイと障子を開けました。
そうしたら、お客様がこちらを向いて座っていて、少し驚いた風でした。
でも、お客様はお客様なので、作り笑いをしながら、
「こんにちは。」
と言いました。
おじいちゃんは、お客様の方を向いていたので、ちいチャンがどうやって障
子を開けたのかはわかりません。
ちいチャンは、お客様にお茶を出して、
「こんにちは。」
と、両手をついておじぎをしました。
おじいちゃんは、ニコニコしています。
ちいチャンが、おばあちゃんの所へ戻ると、
「ちいチャン!足で障子を開ける人がいますか!」
と、怒られてしまいました。
「両手がふさがってたんだもの。」
と、ちいチャンが言うと、おばあちゃんは、
「両手がふさがっていたら、お盆を下に置いて、座って障子を開けるもので
すよ。」
と、言いました。
(あー、そうか!)
女性の楚々とした仕草を、学んだちいチャンでした。
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ちいチャン物語(41)「ちいチャンちの白黒テレビ」

2022年03月20日 19時18分31秒 | 日記
ちいチャンの家のテレビは白黒で、画面はプラスチックのカバーでおおわれています。
テレビを見ない時は、垂れ幕のように、テレビに布が掛けてあります。
画面の右下には、チャンネルを選ぶつまみがあって、それを右や左に回して、チャンネルの数字に合わせます。
テレビは時々、電波の具合が悪くなるらしく、ニュースを見ている途中で、何も映らないグレーの画面になる時があります。
そうすると、
「しばらくお待ちください」
という文字が、画面に映し出され、画面がもとに戻ると、アナウンサーの人が、
「ただ今、画面が中断致しました。お詫び申し上げます。」
と言って、深々と頭を下げます。
そうすると、おじいちゃんやおばあちゃんは、
「どういたしまして。」
と、テレビに向かって深々と、おじぎをします。
画面は時々、コマ送りの様に同じ画面が、上に上がって行っては、下から出て来て、また上に上がって行っては、下から出て来て、を繰り返す事があります。
「映りが悪いな。」
おじいちゃんが言います。
そして、画面は時々、映っている人の顔が、斜めにビロ~ンと伸びる時があります。
きれいな女優さんや、かっこいい歌手の人も、宇宙人の様な顔になってしまいます。
そんな画面の時には、画面も揺れたりするので、
「映りが悪いな。」
おじいちゃんが言います。
だから、画面の多少のざらつきは、映りがいい方です。
画面のコマ送りが続いたり、宇宙人顔が続いたりすると、おばあちゃんはテレビの横を、手の平で、バンッ!と叩きます。
すると、なぜだか、画面は、ちゃんとした画面に戻るのでした。
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ちいチャン物語(40)「トンビが油揚げを見つけたの?」

2022年03月19日 19時00分59秒 | 日記
空は、ずうーっとずうーっと遠く高く、
波は、ささやくように静かです。
山からは、聞き覚えのある鳥の鳴き声が、景色に溶け込んでいます。
空高く頭上でトンビが、ピーヒョロロピーヒョロロと鳴きながら、くるくる
くるくる回っています。
「油揚げを、見つけたな。」
おばあちゃんが言いました。
ちいチャンの頭の中には、油揚げがポッと浮かびましたが、頭の中の油揚げ
は、近所の屋根を渡り、砂浜や海を飛んで、山に消えて行きました。
(トンビが。油揚げを見つけたの?)
なんだかよくわからない、ちいチャンでした。
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ちいチャン物語(39)「喉につまった糸引き飴」

2022年03月18日 20時04分27秒 | 日記
ちいチャンの町には、川沿いに駄菓子屋さんがありました。
バラで売っているキャラメルやお菓子、くじ付きのガム、水あめ、銀紙に包まれたチョコレート、いぼいぼのコンペイトウ、などなど。
そして、糸引き飴があります。
形は、身長の足りない「とんがり帽子」みたいな形をしています。
糸引き飴は、赤や黄色や緑やオレンジ色をしていて、まわりにはザラザラとした白い砂糖が付いています。
その飴ひとつひとつに、1本の白い糸が付いていて、まとめて束ねてあります。
飴は、大きさの大きいのが当たりで、小さいのはハズレです。
ちいチャンは、お店のおばちゃんにお金を払うと、糸を1本引きます。
ちょっとずつ、ちょっとずつ、クイクイと引っ張ります。
すると、1番大きな飴が、ちいチャンの引く手の方に寄って来ました。
ちいチャン、大当たりです!
「おめでとう!大きい飴が当たったよ!」
そう言うと、おばちゃんは、糸の付いた大きい飴を、ちいチャンに渡してくれました。
大きな赤い飴でした。
ちいチャンは嬉しくて、口に加えてペロンとなめて、糸を引っ張ってポロンと口から出して、赤い飴をながめます。
上を向いて、飴をながめ、吸い込むように口に入れました。
すると、なめ始めたばかりの飴の糸が外れて、飴が勢いよく口の中に入って来ました。
ちいチャンは、ちょっと強めに飴を吸い込んだので、飴は喉の奥深くまで入ってしまいました。
咳をして出そうとしましたが、喉にすっぽりはまってしまって、出てきません。
喉が痛くて苦しいです。
もう一度、咳をしてみます。
飴は、出てきません。
痛くて苦しいので、なめたばかりでもったいないけど、ちいチャンは思いきって、ゴクン!と飲んでみました。
飴は、喉の少し奥に移動をしました。
喉を、石の固まりでふさがれているように、苦しいです。
(痛い!痛い!痛い!)
ちいチャンは、喉を押さえながら家に帰り、急いでお水を飲みました。
喉は、イガイガして苦しかったけれど、飴だから、だんだんと溶けていって、そのうちに、苦しくなくなりました。
ちいチャンは、
(初めて大きい飴が当たったのに、もったいなかったなぁ。)
(飴が小さくなるまで、なめてたかったなぁ。)
と、ホッ!としながら、がっかりしました。
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ちいチャン物語(38)「怖いかもしれない話」

2022年03月17日 19時24分25秒 | 日記
ある夜の事でした。
ちいチャンの家から少し離れた、近所の寝たきりのおじいさんが、危篤になり
ました。
ちいチャンの、おじいちゃんとおばあちゃんに、会いたがっていたというので、おじいちゃんとおばあちゃんは、急いで出かけて行きました。
ちいチャンは、ひとりでお留守番をしています。
し~んとしている家の中で、テレビもつけず、何かをする気にもならずに、妙
に落ち着きません。
ちいチャンは、奥の部屋から毛布を出して来て、頭からかぶり、顔だけ出して、丸まりました。
何時間たったでしょう。
ウトウトとしかけた頃、おじいちゃんとおばあちゃんが、小走りで帰って来ました。
「ちいチャン!」
おばあちゃんが、声をかけます。
なんだか息が切れてる様子です。
慌てて帰って来た、そんな感じもします。
「ん....お・か・えり。」
ちいチャンは、毛布のままムクッと起き上がりました。
おばあちゃんは、近所のおじいさんは亡くなったよ、と言いました。
ずっと後になって、おばあちゃんは、この日の事を話してくれました。
危篤になったおじいさんは、亡くなる直前に意識を取り戻し、はっきりした口
調で、こう言ったそうです。
「今、ちいチャンのとこに行って来たよ。」
と。
おじいちゃんとおばあちゃんは、
(ちいチャンは大丈夫か!)
と、思ったそうです。
それで、おじいさんを見取った後で、おじいちゃんとおばあちゃんは、小走り
で、慌てて家に戻って来たのだという事でした。
毛布にくるまって、動かないちいチャンを見て、
(連れて行かれたか...。)
とも思ったそうです。
この話を聞いたのは、ずっと後になってからの事でしたので、ちいチャンは、
(霊感がないから、おじいさんが来たのは、見えなかったナァ。)
と、普通にそう思いました。
でも、なんとなく、なんとなく、なんとなく、とも思います。
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ちいチャン物語(37)「ちいチャンの川超え」

2022年03月16日 19時23分36秒 | 日記
海に流れ込む川は、海岸を2つに分けるようにして、真ん中を流れています。
流れる川と、おしよせる波とがぶつかりあう場所は、毎日、川幅が違います。
ちいチャンは、家の近くの防波堤の、階段から砂浜に降り、川をはさんだ向こう側の砂浜まで、砂浜を探索するのが日課です。
砂浜は、波が描く足跡が波打ち際まで続いています。
海藻や流木が、流れ着いて落ちています。
ツルツルの貝殻やピンクの小さな貝殻、波で削られたガラスの石が落ちていま
す。
ちいチャンには宝箱のような場所です。
ちいチャンは、落ちている棒を手に持って、砂浜に流れ着いた物たちを、ツン
ツンとつつきながら歩きます。
落ちている貝殻を引っくり返して中を見てみたり、海藻を棒の先でヒョイと持ち上げて、海めがけて投げ入れたり。
そうして川まで来た時に、いつもはジャんプをして渡る川が、その日は少し雰
囲気が違います。
いつもより荒い波で、川幅が広くなっていました。
(今日はジャンプできないな....。)
そこで、ちいチャンは持っていた棒で、棒高跳びのように、ジャンプして渡ろうと思いました。
棒高跳びは、棒を持って走って来てジャンプをしますが、ちいチャンはそんな
事は考えずに、エイッ!と棒を川底に刺して、ジャンプをしました。
棒は、まっすぐに川底に突き刺さり、うねってはくれません。
ちいチャンの身体は、弧を描く様には川を飛び越えられず、ちいチャンは、そ
のまま川にドブン!と落ちてしまいました。
川の中でしりもちをついたまま、ちいチャンは、
(あ~あ、しっぱいだぁ。)
立ち上がると、服はびっしょりで、ずっしりでした。
スカートを、雑巾の様に絞りながら、ちいチャンは家に帰ります。
髪には、白い砂が模様のように付いていました。
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ちいチャン物語(36)「ちいチャンの声が大きいわけ」

2022年03月15日 18時17分35秒 | 日記
ひろ~い田んぼの真ん中に、ポツンと1軒家が建っています。 
その家は、お友達のスーちゃんの家です。
スーちゃんの家は、田んぼの真ん中なので、道路からずっと離れています。 
ちいチャンは、スーちゃんと遊ぶ時に、道路からスーチャンの家に向かって、
大きな声でスーちゃんを呼び ます。 
両手を口の横にあてて、
「スーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
大きな声で呼びます。
そして、大きく深呼吸をして、もう一度、
「スーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
すると、スーちゃんが玄関から出て来て、手を振ります。
(聞こえたよー!)
の合図です。
ちいチャンは、呼ぶのをやめてスーちゃんの家を見ています。
道路から、豆粒みたいに見えるスーちゃんが、田んぼの1本道をトコトコと、
歩いて来ます。
スーちゃんが玄関から出て来ない時は、ちいチャンは、何度も何度も大きな声
で、スーちゃんの名前を呼びます。
「スーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
田んぼ一面に、ちいチャンの声が響き渡ります。
時々、ちいチャンは、おばあちゃんに、
「ちいチャンは、声が大きいね。」
と、言われます。
ちいチャンは、おばあちゃんに電話がかかって来た時など、受話器を持ったまま、
「おばあちゃーーーーーーーん!!電話だよーーーーーー!!」
と、おばあちゃんを呼びます。
おばあちゃんは何処にいても、ちいチャンの声が聞こえます。
スーちゃんを呼ぶ声が、ちいチャンの発声練習になっていたようです。
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ちいチャン物語(35)『バカの3杯汁』

2022年03月14日 19時25分46秒 | 日記
お祝い事や、ご先祖様の命日になると、おばあちゃんは「くずかけ汁」を
作ります。
里芋、人参、糸こんにゃく、タケノコ、油揚げ、椎茸、豆麩、豆腐などが
入った醤油味のあんかけ汁です。
たいていは、このくずかけ汁の時には、お赤飯や炊き込みご飯が付きます。
そして、仏壇には、小さなお膳が供えられます。
ちいチャンは、このくずかけ汁が大好きです。
ちいちゃんは、毎朝、台所のトントントンというまな板の音で目を覚ましま
す。
台所から、くずかけ汁の匂いがすると、
(今日は、くずかけ汁だ!)
と、布団の中で嬉しくなります。
元気に飛び起きて、台所をのぞきに行きます。
おばあちゃんは、いつもより大きな鍋で、くずかけ汁を作っています。
そして、
「今日は、ご先祖様の当たり日だからね。」
と、言いました。
朝ご飯を食べながら、ちいチャンは、くずかけ汁をおかわりします。
そして、また、
「おかわり!」
と、お椀を出すと、おばあちゃんが、
「ちいチャン、汁を3杯食べるのは、“バカの3杯汁”って昔から言うんだ
よ。」
と、言いました。
ちいチャンは、しょんぼりとお椀をもとに戻すと、
「いいから、いいから、食べたい時は食べなさい。」
と、おばあちゃんは笑いながら、3杯目のくずかけ汁をお椀によそってくれ
ました。
でも、ちいチャンは、少し恥ずかしかったので、その後は3杯目のおかわり
はしない事にしよう、と心の中で決めました。
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