ちいチャン物語

きまぐれブログ。
絵のない絵本のような、小さい物語です。

ちいチャン物語(40)『トンビが油揚げを見つけたの?』

2023年11月25日 21時09分01秒 | 日記
空は、ずうーっとずうーっと遠く高く、
波は、ささやくように静かです。
山からは、聞き覚えのある鳥の鳴き声が、景色に溶け込んでいます。
空高く頭上でトンビが、ピーヒョロロピーヒョロロと鳴きながら、くるくる
くるくる回っています。
「油揚げを見つけたな。」
おばあちゃんが言いました。
ちいチャンの頭の中には、油揚げがポッと浮かびましたが、頭の中の油揚げ
は、近所の屋根を渡り、砂浜や海を飛んで、山に消えて行きました。
(トンビが油揚げを見つけたの?)
なんだかよくわからない、ちいチャンでした。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちいチャン物語(39)『喉につまった糸引き飴』

2023年11月20日 20時04分25秒 | 日記
ちいチャンの町には、川沿いに駄菓子屋さんがありました。
バラで売っているキャラメルやお菓子、くじ付きのガム、水あめ、銀紙に包まれた
チョコレート、いぼいぼのコンペイトウ、などなど。
そして、糸引き飴があります。
形は身長の足りない「とんがり帽子」みたいな形をしています。
糸引き飴は、赤や黄色や緑やオレンジ色をしていて、まわりにはザラザラとした白
い砂糖が付いています。
その飴ひとつひとつに、1本の白い糸が付いていて、まとめて束ねてあります。
飴は、大きさの大きいのが当たりで、小さいのはハズレです。
ちいチャンは、お店のおばちゃんにお金を払うと、糸を1本引きます。
ちょっとずつ、ちょっとずつ、クイクイと引っ張ります。
すると、1番大きな飴が、ちいチャンの引く手の方に寄って来ました。
ちいチャン、大当たりです!
「おめでとう!大きい飴が当たったよ!」
そう言うと、おばちゃんは、糸の付いた大きい飴を、ちいチャンに渡してくれまし
た。
大きな赤い飴でした。
ちいチャンは嬉しくて、口に加えてペロンとなめて、糸を引っ張ってポロンと口か
ら出して、赤い飴をながめます。
上を向いて、飴をながめ、吸い込むように口に入れました。
すると、なめ始めたばかりの飴の糸が外れて、飴が勢いよく口の中に入って来まし
た。
ちいチャンは、ちょっと強めに飴を吸い込んだので、飴は喉の奥深くまで入ってし
まいました。
咳をして出そうとしましたが、喉にすっぽりはまってしまって、出てきません。
喉が痛くて苦しいです。
もう一度、咳をしてみます。
飴は、出てきません。
痛くて苦しいので、なめたばかりでもったいないけど、ちいチャンは思いきって、ゴ
クン!と飲んでみました。
飴は、喉の少し奥に移動をしました。
喉を、石の固まりでふさがれているように苦しいです。
(痛い!痛い!痛い!)
ちいチャンは、喉を押さえながら家に帰り、急いでお水を飲みました。
喉は、イガイガして苦しかったけれど、飴だから、だんだんと溶けていって、そのう
ちに苦しくなくなりました。
ちいチャンは、
(初めて大きい飴が当たったのに、もったいなかったなぁ。)
(飴が小さくなるまで、なめてたかったなぁ。)
と、ホッ!としながら、がっかりしました。
 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちいチャン物語(38)『怖いかもしれない話』

2023年11月19日 19時40分51秒 | 日記
ある夜の事でした。
ちいチャンの家から少し離れた、近所の寝たきりのおじいさんが、危篤になり
ました。
ちいチャンのおじいちゃんとおばあちゃんに会いたがっていたというので、お
じいちゃんとおばあちゃんは、急いで出かけて行きました。
ちいチャンは、ひとりでお留守番をしています。
し~んとしている家の中で、テレビもつけず、何かをする気にもならずに、妙
に落ち着きません。
ちいチャンは、奥の部屋から毛布を出して来て、頭からかぶり、顔だけ出して、
丸まりました。
何時間たったでしょう。
ウトウトとしかけた頃、おじいちゃんとおばあちゃんが小走りで帰って来まし
た。
「ちいチャン!」
おばあちゃんが声をかけます。
なんだか息が切れてる様子です。
慌てて帰って来た、そんな感じもします。
「ん....お・か・えり。」
ちいチャンは、毛布のままムクッと起き上がりました。
おばあちゃんは、近所のおじいさんは亡くなったよ、と言いました。
ずっと後になって、おばあちゃんは、この日の事を話してくれました。
危篤になったおじいさんは、亡くなる直前に意識を取り戻し、はっきりした口
調で、こう言ったそうです。
「今、ちいチャンのとこに行って来たよ。」
と。
おじいちゃんとおばあちゃんは、
(ちいチャンは大丈夫か!)
と、思ったそうです。
それで、おじいさんを見取った後で、おじいちゃんとおばあちゃんは、小走り
で、慌てて家に戻って来たのだという事でした。
毛布にくるまって、動かないちいチャンを見て、
(連れて行かれたか...。)
とも思ったそうです。
この話を聞いたのは、ずっと後になってからの事でしたので、ちいチャンは、
(霊感がないから、おじいさんが来たのは見えなかったナァ。)
と、普通にそう思いました。
でも、なんとなく、なんとなく、なんとなく、とも思います。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする