ちいチャン物語

きまぐれブログ。
絵のない絵本のような、小さい物語です。

ちいチャン物語(55)『ご飯を入れたラーメンの汁』

2024年02月26日 20時28分07秒 | 日記
ちいチャンのお友達のシーちゃんの家は、近所というには少し遠く、隣町との
中間ぐらいの場所にあります。
隣町は、山をひとつ越えた所にあります。
シーちゃんの家は、ちょうど山のてっぺんあたりになります。
今なら、ペンションでも建ちそうな山の中で、家の前には小川が流れています。
ちいチャンは、てくてくてくてくと歩いて、シーちゃんの家に遊びに行きます。
ちいチャンの町の子供達は、ひと山歩くぐらいは平気です。
ちいチャンは山道を登り、途中から山の中に入る細い道へ曲がります。
シーちゃんの家は木々に囲まれ、木々の間からこぼれ落ちる光が、とてもキレ
イです。
空気は澄み渡り、小川の水は透き通り、目の前を木から木へと飛び移る鳥達。
ちいチャンは、シーちゃんの家に遊びに行くのは、とても楽しみです。
そんなある日の事でした。
お昼に、シーちゃんのお母さんが、インスタントラーメンを作って、出してくれ
ました。
ちいチャンは、インスタントラーメンを食べるのは、この日が初めてでした。
シーちゃんと一緒に食べるインスタントラーメンは、とても美味しいでした。
そろそろ食べ終わる、という頃、シーちゃんが、
「ちいチャン、残りの汁にご飯入れる?」
と、聞きます。
「ご飯を入れるの?」
と、ちいチャンが聞くと、シーちゃんは、台所から朝の残りのご飯を持って来て、
自分のラーメンの汁の中に入れました。
「こうやって食べると、おいしいんだよ。」
シーちゃんが言いました。
「少し入れてみる!」
ちいチャンは、シーちゃんにそう言って、ご飯を少し入れてもらいました。
そうして、二人で、ズズッ!ズズッ!と、すすります。
「うん!おいしいね!」
二人は、ラーメンの汁まで全部食べてしまいました。
この日、ちいチャンは、新しい経験をふたつしました。
初インスタントラーメン、初ご飯入りラーメンの汁、です。

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ちいチャン物語(54)『連絡船“鈴吉丸”』

2024年02月24日 19時28分24秒 | 日記
ちいチャンの町の桟橋に、朝と夕方、連絡船“鈴吉丸”が来ます。
街に用事のある人や、高校へ行く人、荷物を受け取ったり送ったりする人が、
この“鈴吉丸”を利用します。
宅配業者のなかったこの頃、遠く離れた家族に、魚やカニを送ったり、また遠
く離れた家族から、ちいチャンの町の家族へ、荷物を送ったりするのに、この
“鈴吉丸”は便利でした。
朝に送った魚やカニが、その日の午前中には受け取り主の手に渡るのですから、
まさに!産地直送です。
荷物には、荷札を付けます。
荷札には、送り主と受け取り主の住所と名前を書き、荷札に付いている針金を
荷物を結んでいる紐にくくりつけます。
送り主は受け取り主に、前もって電話で連絡をしておきます。
船の着く頃に、桟橋で船の着くのを待って、荷物を受け取ります。
“鈴吉丸”は、ずっと沖から汽笛を鳴らし、もうすぐ桟橋に着くよ、と知らせ
ます。
ボーーーーー!!!ボーーーーー!!!
そして、小さく見える船が、だんだんと近づき大きくなります。
“鈴吉丸”が汽笛を鳴らすと、外で遊んでいた子供達は、
「鈴吉が来た!」
と、言って、桟橋に走ります。
だんだんと大きくなる“鈴吉丸”に手を振りながら、走ります。
“鈴吉丸”が着いた桟橋は、船に乗る人降りる人、荷物を受け取る人送る人、
漁の準備をする漁師さん、届いたばかりの荷物の山、で活気づきます。
そんなにぎやかさが、子供達は好きです。
“鈴吉丸”は、桟橋を離れる時、また、汽笛を鳴らします。
ボーーーーー!!!ボーーーー!!!
大きい姿がだんだんと小さくなり、やがて波間に隠れます。
ちいチャンは、“鈴吉丸”が、小さくなって見えなくなるのを見ると、少し
さびしい気持ちになります。
朝も夕も、“鈴吉丸”を見送る時は、見えなくなるまで見ています。
朝も夕も、“鈴吉丸”が見えなくなると、少しさびしい気持ちになります。
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ちいチャン物語(53)『巻貝の声』

2024年02月19日 23時56分14秒 | 日記
砂浜に、握りこぶしぐらいの大きさの、巻貝が落ちていました。
大きいお兄さんが、
「卷貝を耳にあててごらん。」
と、言いました。
ちいチャンは、砂浜の巻貝を拾って、耳にあててみました。
巻貝の中からは、風のような、うねりのような音が聞こえます。
「海の音が聞こえるかい?」
大きいお兄さんが聞きます。
「うん!聞こえる!」
ちいチャンは答えます。
(そうか、これは海の音だ、海の音が聞こえるんだ。)
目をとじて、巻貝を耳にあてると、海の光景が目に浮かんで来ます。
ちいチャンは、巻貝を家に持って帰り、水道の水できれいに洗いました。
巻貝は、耳からの距離を少し離したり、近づけたりするだけで音の高さが違
って聞こえました。
乾いた巻貝からは、その中に砂浜があるかのように、サラサラと砂がこぼれ
落ちました。
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ちいチャン物語(52)『建前(上棟式(じょうとうしき))』

2024年02月13日 20時06分46秒 | 日記
「今日は、建前があるよ。」
と、おばあちゃんが言いました。
新しい家を建てる時、柱の骨組みが完成すると、“建前”と言って、その家の主人や長男
が、骨組みのてっぺんから、紅白のモチや和紙にくるんだ小銭をまきます。
ちいチャンの町は小さいので、どこかの家で家を建て始めると、町中の人が“建前”の日
を楽しみにします。
“建前”は、特別に声をかけて招待する、とかというものでもなく、お祭りの時の様に、
自然に集まった人達に、モチや小銭が振る舞われます。
“建前”の日、男衆は骨組みの出来た家のてっぺんに登り、掛け声をかけながら紅白のモ
チをまきます。
賑やかさは、まるでお祭りの様です。
家の下に集まった大人や子供は、キャーキャー、ワーワー言いながら、モチがまかれた方
向へ走り、手でキャッチしたり、落ちたモチを拾ったりします。
次に、和紙にくるまれた小銭がまかれ、家の下に集まった大人や子供は、キャーキャー、
ワーワー言いながら、小銭がまかれた方向へ走ります。
中には、
「こっち!こっち!」
と、男衆に手を振って、催促をするオバちゃんもいます。
ちいチャンは小さくて、ちいチャンが伸ばす手の上には、大きなおとなの手が重なり合い
、まかれるモチも小銭も、ちいチャンはキャッチすることが出来ませんでした。
しかたがないので、落ちたモチと小銭を拾おうとしますが、動作のすばやい男の子達に取
られてしまいます。
おばあちゃんは、おばあちゃんなのに、なぜだか動きが若いです。
エプロンのポケットに、紅白のモチも小銭も入っていました。
“建前”が゛終わると、手に手にモチや小銭を持って、町の人は家に帰ります。
おばあちゃんは、エプロンのポケットに手を入れると、ちいチャンの手に、和紙でくるま
れた小銭をひとつ握らせてくれました。
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ちいチャン物語(51)『海ほおずき』

2024年02月07日 18時55分16秒 | 日記
砂浜を歩いていると、波打ち際に“海ほおずき”が束になって落ちている時
があります。
遊ぶのには、ひとつあればいいのですが、何十個も付いています。
“海ほおずき”は、透き通ったビニールみたいに見えます。
ひとつひとつは小さくて、1㎝ちょっとぐらいの大きさです。
ちいチャンは、これを海藻だと思っています。
“海ほおずき”は、植物のほおずきと同じ様に、口にくわえてブゥー!ブゥ
ー!と鳴らして遊びます。
ちいチャンは、ほおずきを鳴らすことができました。
だから、“海ほおずき”も鳴らすことができました。
ちいチャンは、砂浜で拾った“海ほおずき”を、海水できれいに洗い、ひと
つちぎって口に含ませました。
そうして、下唇に“海ほおずき”を乗せて、上の前歯で上から押します。
植物のほおずきは、空気を入れる丸い穴の所が、すぐに破けてしまいますが、
“海ほおずき”は丈夫です。
もし破れても、束になってくっついているので、変わりは沢山あるのです。
ちいチャンは、“海ほおずき”を鳴らしながら、海岸沿いを歩きます。
“海ほおずき”は、なかなか破れません。
ちいチャンは、少しアゴが疲れてしまいました。
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