ちいチャンは大きくなって、街で生活を始めたある日、
(魚が食べたいなぁ。)
と、思いました。
それで、ちいチャンは、魚を買おうと魚屋さんに行きました。
魚屋さんの店の前には、
ザルに盛られた魚が、所狭しと並べられていました。
店の前からは、大きな声で、
「よってらっしゃい!買ってらっしゃい!」
と、元気なオジサンの声が聞こえます。
元気なオジサン周りには、人だかりが出来ていて、
ちいチャンも、そお~っと後から覗いてみました。
オジサンの声に誘われて、気持ちが楽しくなりました。
でも、店先の魚を見て、
ちいチャンはビックリしてしまいました。
魚屋さんに売っている魚は、
みんな死んでいるのです。
ピチピチピチピチ跳ねていません。
おばあちゃんは、
いつも桟橋で、生きのいい生きたままの魚を買って来て料理をします。
おばあちゃんの買って来る魚は、まな板の上でピチピチピチピチ跳ねています。
魚屋さんに売っている魚は、ピクリとも動きません。
(死んだ魚を買うのはイヤだなぁ。)
と、ちいチャンは思いました。
仕方なくちいチャンは、とぼとぼと店を後にしました。
ちいチャンは、
ふぅ~、とため息をつきながら、
(おばあちゃんの魚が食べたいなぁ。)
と、故郷が恋しくなりました。