ちいチャンは、
お仕事に行く時は、電車とバスを使います。
ある日、帰りが少し遅くなり、
夜の電車に乗りました。
夜なので、座席は座る余裕がありました。
ちいチャンは、ぱふんと座席に座りました。
ふと目を上げると、
ドアの入り口の前に、外を見つめる様に、
長い髪の、キレイなお姉さんが立っていました。
お姉さんは、
空いている座席には座らないで、
ドアに寄りかかる様に立っていました。
ちいチャンは、
ドアのガラスに映るお姉さんが、キレイだったので、
ジッと見ていました。
すると、どこからか、
大きな蛾が飛んで来て、
お姉さんの肩に止まりました。
お姉さんは、白いブラウスを着ています。
ちいチャンは、
お姉さんのブラウスに、蛾の粉が付かないかと、
ハラハラドキドキです。
でも、
お姉さんがキレイなので、
ちいチャンは、お姉さんに声をかける事が出来ません。
周りにいる乗客の人も、
お姉さんの肩の蛾に、釘づけの様でした。
が、やっぱり、
お姉さんに、声をかける人はいませんでした。
ビックリしたお姉さんが、手で蛾を払うと、
ブラウスが汚れてしまう、そんな配慮もあったかもしれません。
いくつめかの駅に着き、ドアが開き、
お姉さんは、蛾を肩に付けたまま、ドアから外に出て行きました。
すると、蛾は、
お姉さんの肩を離れ、
お姉さんの後を通って、
ひらひらと飛んで行きました。
ドアが閉まって、電車が走り出した時、
ちいチャンは、ホッ!と胸をなでおろしました。
乗り合わせた他の人達も、同じ気持ちの様でした。