大和圭介と二ノ宮亜美。ともに和菓子屋でライバル同士の家に生まれる。そんな二人が圭介は競泳選手、亜美は高飛び込みの選手でスポーツ特待生として栄泉高校に入学、寮生活を始める。
「ひとごろし」
二人が出会ったとき、亜美が圭介に向かって言った。
「お前なんか大嫌いだ」
ほんの少しの行き違いから圭介は亜美に向かって言う。
お互い気になる存在でありながら、その距離はなかなか縮まらない。さらに亜美には幼なじみで気心の知れた兄のような仲西という大学生がいた。仲西は競泳100m自由形の日本記録保持者であり、圭介にとって憧れの存在でもあった。
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あだち充先生の作品のファンが「最高傑作」と言い、ちまたでは「隠れた名作」と言われているが、決してそれは大袈裟ではないと私は思う。私も「ラフ」の原作にはそれだけの魅力があると思う。
それは、主題が完全に恋愛であり、その舞台として描かれている競泳が決して疎かにされていないからだと思う。そういう意味では、映画版の「ラフ」でも、その魅力は存分に描かれていて、映像としての見応えは充分だと思う。
ただ、もう少し3人の関係、距離感の変化がハッキリしていると良かったというのが本音。原作では、圭介にとっての仲西は、競泳選手としても亜美の恋のライバルとしても届かない存在というところから始まっている。それに対して映画では、少なくとも並んでスタートするくらいの距離から始まっているので、憧れという意味合いが少し薄く感じられて、その距離を縮めていく過程がぼやけているように感じた。そのため、亜美との距離感も若干分かり難く感じられて残念だった。
全体の感想としては、つまらなくはないけど、少しガッカリしたというところ。ただ、それって原作を知っていたからなわけで、原作を知らない人が観るとどう感じるのかは全く見当がつかない。