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ドイツで「ゴールドマンに非難ゴウゴウ」 Goldfinger of Goldman

2010-04-23 | グローバル企業
2010年4月23日(木)

ゴールドマンがドイツに初めて投資銀行として乗り込んだのは1990年である。

本拠地を金融センターのフランクフルトに置き強力なネットワークを同国に築き上げ、大企業と政府・自治体との関係は、金融・証券業界の中で追随を許さないところまで業績を拡大してきた。銀行の規模では、ドイツ国内でドイツ銀行についで2位であるが、外国資本の銀行ではトップの地位にある。

The Wall Street Journalは、「こうした盛名を馳せてきた同社も、SECに詐欺の民事訴追を受けたことが引き金になって、いまや経済界では悪者として集中砲火を受けている」とドイツ発の記事で伝えている。

ゴールドマンがSECに訴追された「詐欺事件」の被害者の中に、IKBドイツ工業銀行が含まれているが、同銀行はリーマンショック前後の金融危機で倒産し、ドイツ政府は救済資金として1.3兆円を救出せざるを得なかったということが背景にある。ドイツ人の同行に対する国民感情へのその影響は大きい。

そして、おり悪くドイツで同銀行はベルリン市と紛争を起こしている最中でもあったので、同行のドイツ部隊は頭を抱え込んでいるという。

ベルリン市の持つ公営住宅会社のIPOを引き受ける投資顧問となっていた「ゴールドマンが、住宅の売却に絡んだ取引を有利にするためにベルリン市を、弁護士を使って恫喝した」と、市側が同社を厳しく非難し、市の幹部は、「ゴールドマンには、避けられるなら二度と仕事を頼まない」とまで公言している。

こうした事件も含めて、業界を押さえてきたゴールドマンの商法は強引なことはつとに有名であった。

保守的で「コンセンサスと譲歩」を重んじる国においては、何かと摩擦が絶えなかったところへ、SECによる訴追があったため、火に油を注いだ格好となった。同紙は「くすぶってきた不満が、声高のゴールドマンたたき」になった(Quiet grumbling is turning into a vocal battering)と表現している。

最近の重要な動きとしては、金融界に対する規制論者としても有名なメルケル首相の率いるドイツ政府は、ゴールドマンが関与する契約をすべて調査することを関係機関に命じた。公的金融機関であるBayernLB,は、SEC訴追を理由にして、ゴールドマンに出していた顧問契約を撤回するという事態も発生している。

さてゴールドマンのドイツの最高幹部はAlexander Dibelius氏であるが、同氏の率いる部隊への評判はすこぶる悪いとThe Wall Street Journalが報道している。同行は、投資顧問をやりながら、一方で顧問先と競合する入札に参加してくるのは日常茶飯事であるという。利益相反の批判に対しては、「負け組みにはそんな問題も起きないということだ」(Only those who don't win any business have no potential conflicts)と答えるのが同氏の口癖であったという。

こうした同氏にドイツのメディアが付けたあだ名は、「ゴールドフィンガー」である。

彼の指揮した仕事でもっとも名高いのは、従業員7万人規模の小売・旅行業のArcandor AGが、2009年に倒産に至る過程の取引である。同行がArcandorから買収したデパート店舗を高値でリースバックし、採算割れを起こさせたのが直接の原因であったという。ゴールドマンは、このケースでは投資顧問・投資家・不動産業者として関与していたというのであるから、利益の相反行為もはなはだしいと非難を受けている。

一方、ゴールドマン関係者は「政治的にスケープゴートにされて、無様なところをさらして(with egg on our face)しまった。今は、ゴールドマンを悪者(the villain)にしておけば安全地帯(no downside)にいられるわけだから不公平もはなはだしいといって、地団駄を踏んでいる」」との趣旨で記事は結ばれている。



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