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「オバマの戦争」となる危険 This is an offensive - this is war.

2009-05-10 | グローバル政治
2009年5月10日(日)

緊迫するパキスタン北西辺境州スワト(Swat)地区の状況を、Aljazeeraの特派員が現地ペシャワールから,「タリバンに対する攻勢を開始したパキスタン政府軍は、地域の全住民に退去を命じ、その退去のために外出禁止令を5時間だけ停止した」と報道している。スワト地区からは、出ることのみ許されており、入ることは一切許されない封鎖がおこなわれているとのことである。


このパキスタン軍のタリバンに対する宣戦布告というべき事態は先月のワシントンでパキスタンのザルダリ大統領とオバマ米大統領の合意に基づくものであり、オバマ大統領の「テロとの戦いの場を、イラクからアフガニスタンに移す」という政策の第一歩である

この強制移住は、タリバンが住民の中に紛れ込んで政府軍をかく乱することに対抗するために取られているもので、今回移住(displace)される住民の数は、50万人に上ると推定されている。そして、この突如の強制移住以前にすでに50万人が難民化
していたと推定されており、国内難民(IDP: Internally Displaced Refugees)と称される人々の数は、100万人に達した模様である。

その規模と膨張のスピードは、スーダンのダルフールのケースを上回るもので、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も、8日「北西辺境州では一時戦闘が激化した昨年8月以降、100万人以上が避難民になっている」と発表し、この推定を裏付けている。

パキスタン政府の難民支援も、国連の支援もまったく遅れており、国境なき医師団(the Doctors without Borders)などの民間支援団体の活動も、治安問題悪化から停止せざるを得ない状況に陥っている。今後、この膨大な国内難民への支援が滞ると、パキスタン国内は、内部から大混乱に陥る危険がある。

今回のパキスタン政府の強硬策の裏には、武装勢力側が、首都イスラマバードから約100キロのブネール地区に侵入し、軍事均衡が破れたことへの重大な懸念が生じたことと、その解決を求める上記ワシントン合意に基づく米国の圧力があったのである。

ザルダイ大統領は、"This is an offensive - this is war. If they kill our soldiers, then we do the same,"(これは、攻撃であり、戦争である。殺されたら殺し返す)とTVインタービューに答え、15,000人の兵力を、スワト地区に投入した。

「ブッシュの戦争」が完全に終わりきらないうちに、アフガン対策の第一歩としてのパキスタン「内戦」であるが、これが、「オバマの戦争」となって米国の苦悩のタネにならないという保証はない。タリバンと住民を外見から区別するすべはないのである。





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