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共和党大統領候補に、「堕胎是非の踏み絵」 Susan B. Anthony List

2011-06-20 | 米国・EU動向
2011/06/20

米国大統領選挙戦は、13日に行われた、現時点での共和党側の候補者を集めた演説会を以って火蓋が切って下された。

この全米TV中継された演説会には7人が参加したが、今これらの参加者には、大統領になった場合、堕胎禁止を政策実行せよと要求する「Susan B. Anthony List」と称されるいわば「踏み絵」への賛否表明が迫られている。

現在賛成を表明してそのリストに署名したのは、Michele Bachmann、Newt Gingrich、Ron Paul、Tim Pawlenty、Rick Santorum の5氏であるが、現時点での最有力候補のMitt Romneyと Herman Cainの両氏は署名の意思表示をしていないと米国ABC Newsが伝えている。

Susan B. Anthony Listは4項目からなるが、それらは ①連邦判事には、米国憲法の初心に立ち返る価値観の持ち主のみを任命すること、②閣僚や行政の要職には堕胎反対派(pro-life)のみを任命すること、③堕胎を実行する医療団体・病院への連邦補助金を禁止すること、④「苦痛を感じるまでに成長した胎児保護法」(a Pain-Capable Unborn Child Protection Act)の立法化を図ることである。

署名反対の二人も、共和党党員として当然のことながら、堕胎禁止(pro-life)を基本姿勢としているが、二人とも「第4項」の立法化は議会の仕事であり、あまりに広い義務を候補者に求めるもの(overly broad)だと異を唱えている。

特にMitt Romney氏については過去に堕胎賛成(pro-choice)に回ったことがあることを指摘されていることは、同氏の今後にどのような影響が出るかが注目される。そして最も注目される候補、Sarah Oalin女史はいつ立候補表明するかによって選挙戦の趨勢は大きく変わる。

今回の大統領選の争点は景気回復や、失業率の改善といった経済問題が前面に押し出されてくることが予想されるが、全米を支配する宗教上の右派勢力の影響力を無視しては勝利を収めることはできない。しかし初戦段階で堕胎禁止を強く打ち出してリベラル層の支持を失いたくないという思惑も働いている。

いまだに聖書記述を絶対なものとして、進化論を認めず、キリストの復活を信じる人々が米国の政治を動かしているということを注目する必要がある。こうした「聖書原理主義者」は過激な行動を取る。堕胎を実施する産科医院が爆破されたり、産科医師が殺害されるというのは、稀ではないのだ。