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南シナ海で周辺諸国と衝突する中国は、東南アジアの「悪しき隣人」か Big, Bad China

2011-06-13 | 世界から見た日本
2011年6月13日

中国の圧迫(maritime bullying)を受けているベトナムが、たまらずついに米国に助けを求めたことをFinancial Timesが報じている。

石油やガスなどの地下資源が豊富と目され、豊かな漁場でもある南シナ海(the resource-rich South China Sea)において最近、中国は、ベトナムとフィリピンとその領有権をめぐってあからさまな衝突をあえて執拗に行っている。これは昨年わが国海上保安庁の艦船に対して行った、「漁船」の特攻攻撃と同根の問題である。

ベトナムは、本日からベトナム沖合いで同国海軍の実戦訓練(live-fire drills)を行う予定で、双方ともに挑発行動はエスカレートしているが、この演習に先立って米国に仲介を求めたことで、中国政府は対ベトナムへの非難姿勢を強めることは疑いは無い。

中国はこの水域の問題は「あくまで二国間問題である」(the long-running row over the South China Sea must be resolved on a purely bilateral basis)との基本姿勢をとり続けているのだ。昨年の7月にクリントン国務長官がこの問題に踏み込んだ際の中国政府のヒステリックな反応はまだ記憶に新しい。

このように中国が強硬な対立をこの地域に持ち込んでいるが、その対象はベトナムとフィリピンに限らない。マレーシア、ブルネイ、台湾とも摩擦を起こしている。それは領有権の主張という生易しいものから、軍事衝突へと様相が深刻化しつつある(“China’s behavior has gone from assertive to aggressive,”)。

さて2010年12月18日の本欄でも紹介したが、中国の航空母艦が、来年から就役する。この航空母艦が、日本海から、南シナ海、インド洋を遊弋する事態は近いのだ。米国の第七艦隊とは、戦力に大きな差はあるが、補給力は格段に優位となる。

一方、中国は米国とインドをけん制するきわめて象徴的な外交を同時に展開していることに注意しなければならない。中国はパキスタンと共同開発した戦闘機「梟竜」(FC1)をパキスタンへ50機提供する。国際テロ組織アルカーイダの指導者ウサマ・ビンラーディン容疑者殺害で米国とパキスタンの関係が冷え込む中、インドへの対抗軸としてのパキスタン関係を利用して合従連衡政策をあからさまに取ったのだ。国交樹立60周年を記念し、ギラニ首相やムフタル国防相らが5月17日から中国を訪問、両国間で合意に達した。

Financial TimesのDavid Pilling記者はその署名記事の中で、中国に対して、“Big bad China”という表現を持って、近隣諸国の対中感情を表現している。中国がなぜ敢えてこの時期に「悪役」を演じようとしているかを深く考えておかないと、わが国は飛んでも無い役回りを引き受けることになる。