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オバマ大統領、「下がらぬ米国の失業率、即効薬なし」と No Quick Fix

2011-06-12 | 米国・EU動向
2011年6月12日

オバマ大統領は今週末のラジオ演説で、低迷する経済と下がらぬ失業率に関して、「この悪環境に陥ったのは一朝一夕のことではない。したがってそこからの脱却も時間のかかるのは当然」(But the truth is, we didn't get into this mess overnight, and we won't get out of it overnight. It's going to take time)と共和党からの責任追及に反論した。暗に原因は前政権のブッシュ大統領にあると言っているのだ。

オバマ大統領いわく、「この経済問題に即効性のある対策はない(there is no "quick fix to our economic problems,")。そのために今経済界と協力して雇用創出に努力しているところだ」。産業界との協力とは、50万人の職業訓練校生(community college students)に、業界が保証する就業機会を与えることを指している」。同大統領はその演説の最後に、「訓練校の卒業証書は就職に役に立ちますよ」と若者に呼び掛けたことは特に注目に値する(you'll know that your diploma will give you a leg up in the job market.)

最近の失業統計によると、失業率は9.0%から9.1%に上昇してしまったので、オバマ政権の失業対策に対する信認が急落しており、すでにその火蓋が切って落とされた大統領選挙の前哨戦に悪影響が出ないように、民主党としては対策を迫られている状況にある。

共和党は、雇用創出の手段は、連邦政府の借入金を圧縮すること、各国との自由貿易協定野締結を促進すること、国産エネルギー増産によるべきであるとしている。特に国の借金をこれ以上増大させないために、現在設定されている14.3兆ドルの連邦政府の借入上限の増枠は断固として阻止すると息巻いている。そして、中小企業減税や、規制緩和によって、産業の活性化を図るべしというのが、「小さい政府」を常に主張する共和党路線である。
これに対して大統領は、成長と雇用を確保するために、中産階級のライフスタイルの変更を力説した。この為の重要な対策として教育改革をあげ、大学進学率の引き上げと、先にあげたように職業訓練の拡充を目指すとしている。また雇用機会の創出に資する有効な施策として、再生可能エネルギーの開発と、利用拡大を」訴えている。

オバマ大統領は、今後も政権の政策実行による景気回復と失業率改善の可能性が低いと見ているようだ。そのため景気後退の中での大統領選を意識して、中長期対策に論争の中心を移す作戦に出てきた。

さらには「弱いドル」作戦によって産業界の支持を取り付けようとしている。翻って我が国は政治混乱によって、不自然な円高相場に対抗する政治的意思を失ってしまっている。「市場経済原理」を隠れ蓑にした国際金融資本、欧米多国籍企業、為替投機で巨利を得ている投機筋のなすがままになっているのが日本の現状である。