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米国投資家は、株式市場を見捨てた A Distrust Discount

2011-06-11 | グローバル経済
2011年6月11日

10日のFinancial Timesは、ここ数週間の株式市場下げが単なる相場の上下動の結果ではなく、いわば投資家の株式市場離れがその裏にあると報じている。

この傾向は、巨額の資金を運用する機関投資家のみならず、小口の資金を投資に回している一般投資家にも一律に見られる。

その底流にあるのは米国経済の先行き不安であり、欧州各国のカントリーリスクの再燃であり、それに連邦準備制度による流動性の注入、いわゆるQE2が今月末で終了することの心理的影響が圧倒的に大きい。

このためNasdaq市場は金曜日に年初来の安値を付けた。それに一般投資家は、例年この時期に持ち出される「5月になったら売って逃げるのだよ」(Sell in May and go away)という格言に従ったことも影響を大きくしたといえる。

一般投資家はここ7週間で、市場から58億ドルを引き揚げたことになり、先週1週間で一般投資家と機関投資家合わせて63億ドルを引き揚げた。この揚げ超は、昨年の8月以来のものである。この結果は、株式相場の連日の下げとなって表れている。

こうした状況について、「投資家にとっては2008年の市場崩壊の記憶もまだ消えておらず、今度はのっぴきならないことになる前に手じまいしようとしている。いわば市場はこうした投資家の市場に対する不信を織り込んでいるのだ(a distrust discount)」と解説されている。

株価オプション取引では、プットがコールを大幅に上回っていることがまさにそれを証明している。

さて、株式市場から離脱したカネはどこへ向かうのか?米国国債か、金か、ゼロ金利の円を買って高金利通貨に投資するか、石油か、原発停止の日本が大量買い付けする天然ガスか。説明のつかない円高に苦しむ日本の輸出産業をさらに苦しめることになる危険がそこにある。