ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

サンシャイン2057

2007年05月19日 | 映画レビュー
 2057年、われらが太陽は力を失い、発散する熱量が減少して地球は凍てつく星となっていた。起死回生を目指して人類はマンハッタン島と同じ大きさの核爆弾を太陽に打ち込んで小太陽を生み出す計画を立て、任務を負ったイカロス1号が既に飛び立っていた。だがイカロスは途中で行方不明となり、ついに地球最後の核弾頭を積んだイカロス2号が太陽に向かっていた。乗り組むクルーは日本人カネダ(真田広之)船長以下世界各国から選び抜かれた8名。彼らは人類再生の重大な任務を達成することができるのだろうか?!

 とまあ、なんか「アルマゲドン」ぽい話であります。生きて帰れないかもしれない使命を負って8人は宇宙に飛び立つ。この映画のミソは太陽だ。いかに太陽を光り輝く神のように描くか、そこにかなりの工夫がある。映像的には斬新で、太陽に焦がれる乗組員の気持ちもよく伝わる。だがこの映画がSFとしては失格だと思えるのは、そもそも核爆弾を打ち込むぐらいであの大きな太陽を生き返らせることができるのか、その説明がまったくないこと。宇宙船の広さや構造がよくわからないので、いったい何が問題で乗組員たちが必死に作業をしているのか何を恐れているのか観客には伝わってこないのだ。

 それに、真田広之がかなり流暢な英語を駆使して頑張っているというのに、ほとんど彼のいいところがなくてさっさと退場したのにはがっくり。日本人よ頑張れ!とか思うのはやっぱりわたしが愛国者だからでしょーか。

 閉ざされた宇宙の中、地球との交信も不可能という状態のなかで次々起こる危機また危機を8人はどのように乗り越えるのか? 見所はこの密室のなかの葛藤と人間劇にある。SFとしての醍醐味よりも、太陽を再生させるとかいう話よりも、物語の肝要は、危機に立ち向かう人間の行動とエゴイズムと自己犠牲の思想にあるのだ。

 途中からはホラーのような展開。4人しか残っていないはずの宇宙船の中に5人目が搭乗しているなんて、まるで『11人いる!』の世界じゃないの。この場面からはすごく怖かったのだけれど、幻想的な雰囲気をマジカルな映像で見せていこうとするあまり、説明不足の描写が目立った。ツッコミどころ満載。

 そして肝心のスリリングな場面が長続きせず、ちょっと拍子抜け。2時間弱ではじわじわと迫ってくる恐怖は描き足りないのだろう。過去のSF作品へのオマージュや引用ととれる場面が幾つか散見されたのは面白かった。こういうのを見つけるのも映画ファンの楽しみの一つだ。

 決して退屈はしない作品だし、美術センスや映像のセンス(撮影監督が「コード46」のアルウィン・カックラー)はいいと思ったし、「アルマゲドン」なんかに比べると遙かに上質な作品だったが、いまいち突き抜けた物が感じられないのは残念。

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SUNSHINE
108分、アメリカ、2007年
監督: ダニー・ボイル、製作: アンドリュー・マクドナルド、脚本: アレックス・ガーランド、音楽: ジョン・マーフィ
出演: キリアン・マーフィ、真田広之、ミシェル・ヨーねクリス・エヴァンスねローズ・バーン、トロイ・ギャリティ、ベネディクト・ウォン

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